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桜は千度刺す  作者: アフロヘッド


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7/8

第七話 急にライバルたちが大量に出てきた

「そこの君」

 キリリとした凛々しい声が校舎裏に響き渡る。


 僕が後ろを振り向くと、そこには腕章をつけた男子生徒がいた。

「か、金園生徒会長!」

 生徒会長の金園だ。いつも毅然とした態度で、学校を取り仕切っている。

「君か。ここ最近、椎名さんに連日で告白などという迷惑行為をしているという男は」

「そうそう、彼だよ」

彼の後ろからひょこっと出てきた男。

「神田……」

 僕と同学年の神田。とにかくコミュニケーションスキルがずば抜けている男だ。たとえ言語が通じない国に放り込まれても3日あれば、友達100人できるかな、が達成できると断言できるぐらいには、人との接し方が上手い。あと、無類の噂好きである。

「後藤くんもさぁ、ちょっとセーブした方がいいんじゃない? 椎名さん困ってるよ?」

「なんで神田たちがここに……?」

 僕がそう呟くと、ブーブーブーと振動音が僕の胸ポケットにあるスマホから響いた。スマホを取り出すとそこには、

『全くだ。この時代にそんな根性論でやっていけると思っているのか』

の文字。それを見ていると、急に画面が暗くなった。

 いや、画面が暗くなったというより、僕の周囲の影が急に濃くなった。上を見上げる。そこには四角い眼鏡をかけ、ノートパソコンを持った男の姿。

「プログラミング部の金田……」

プログラミング部の金田といえば、頭の良さでちょっとした有名人だ。噂では模試の全国順位が一桁台だとか。

 その金田が、なぜか僕の真上、校舎の3階から僕たちを見下ろしている。

すると今度は、金田がいた方向とは反対側から、三人の男たちが歩いてきた。

「あいつ、あいつです兄貴!」「 あいつが例のストーカーまがいの連日告白野郎です!」

と、左右にいた二人が、真ん中にいる体格のいい男に話しかけた。見るからに親分とその舎弟、といった関係性だ。

 真ん中の男は、プラカードにマジックで何かを書いて、俺に見せてきた。

『大人しく引け』

 ……いや喋れよ。お前といい金田といい、ガイコツさんといい、なんで俺の周辺こんな無口キャラばっかなんだよ。

「やれやれ、近藤まで来たのか……」

と、ため息をつく金園。

 近藤といえば、運動神経抜群、喧嘩最強と謳われる有名な男だ。

 なんでこの学校の有名人たちが一度に集まってきているんだ……? と、僕が頭の中に疑問符を浮かべていると、金田がまた口を開いた。

「後藤くん……だったかな? 全く、君は無神経にも程がある。3日連続の告白など。椎名さんの迷惑を考えたことがあるのか?  彼女にはもう二度も断られているのだろう? さっさと立ち去りたまえ」

 ぐっ……悔しいが正論である。僕は自分のことばかり考えて、椎名さんの迷惑を考えていなかった。それは事実だし、現に彼女は僕を必死に突き放そうとしている。

 ここはおとなしく一旦引くしか……。

 そう思い、立ち去ろうとした途端、椎名さんが口を開いた。

「何言ってんの、あんたら」

 椎名さん……? 先程までの遠慮が入った喋り方とは違い、ストレートに毒を吐く言い方だ。

「あんたたちが何言ってんのよ。後藤君のこと言える資格ないわよ」

 資格がない? 一体、どういうことだ? 

 僕が困惑している傍ら、彼女は続ける。

「告白回数で言えばあんたたちの方が多いでしょ!  毎回断ってるっていうのにさ。この自意識過剰どもめ」

 すごい毒舌だ。

 そして、椎名さんは新たに現れた四人を順に指差した。

「神田、あんたは5回。近藤、あんたは6回。金田、あんたは10回。そして金園……あんたは25回!  どれもこれもうざい!  いい加減やめろ!」

 マジかよ。よくそんなんで俺のこと責めれたな。

「「「「いや、無理だ!!」」」」

 四人の声が全員合わさった。椎名さんは特大の溜息をつく。椎名さんをこれほどまでに困らすとは……。

椎名さんは大きくため息をつく。額に手を当てて言った。

「ここまで粘り強いのは、いくらなんでもあなたたち四人だけよ……いや、もう一人増えそうね」

椎名さんは僕ら五人を一瞥した。

 あれ? これ、俺も迷惑枠に増やされてない? ……いや、そりゃそうか。このままの調子で1ヶ月いくつもりだったし。

「もういいわ。どうせ諦めないなら、一つ、条件をつける。ただし、この条件で告白して私が断ったら、もう潔く諦めなさい。それでいいわね?」

『無論だ』

近藤はプラカードでそう答えた。喋れ近藤。

「その条件というのは?」

金園が椎名さんに問いかける。

「ホント、勢いだけはいいわね」

 「このやりとりもう7回目ぐらいだと思うんだけど」とぼそっと椎名さんが呟く。椎名さんは咳払いして、後ろの桜の木を指さした。

「千刺桜があそこにあるわね。今は12月で、3月ぐらいには咲くから……3ヶ月後の3月7日。その時期なら期末テストも終わってるだろうし。地面に落ちる前の、ピンク色の千刺桜の花びらを拾って、私に持ってきなさい」

 そう言い残し彼女は足早に立ち去った。



 千刺桜の花びらをキャッチする?  突然なぜそんな条件を? 本気か? いや、なにか別の意味があるのか? 

「千刺桜か」

金園が呟く。

「なるほど。なかなか粋なことをするね」

 神田がそれに反応した。

 全員の携帯電話からバイブレーションが鳴る。文面には

「悪いが、遠慮するつもりはない。この金田が勝利する」

の文字。喋れよ。

『承知した』

 近藤は相変わらず沈黙したままだ。しかし、その表情は真剣そのものだった。

 全員がその条件の意味を理解したようだった。理解してないのは僕だけのようだ。

 呆然としている僕に対し、近藤の舎弟が話しかけてきた。

「いいか。今回はこれで見逃してやる」

「どうせ3月7日の告白合戦で近藤さんに負けるしな!」

「……」

「あ、あの……千刺桜の桜の花びらを持って来いって、どういう意味ですか?」

 煽る舎弟たちに比べ、何も喋らない近藤。彼らは煽り文句を言うだけ言って、共に帰って行った。僕の質問は無視か。

「正々堂々勝負だ、後藤。抜け駆けは禁止だぞ」

金園が背を向け、そのまま去る。

「すいません、千刺桜の桜の花びらのくだりってどういう意味ですか?」

応答なし。

「どうやら僕たち、ライバルみたいだね。じゃ、またね〜」

と、金園に続いて神田も立ち去った。

「あちょっと、千刺桜の桜の花びらを持って来いってどういう意味なのアレ?」

応答なし。

 ブーブー、とまた通知音。スマホを見ると、

『恥をかく前に、さっさと辞退した方がいいぞ』

と書かれたメールが送信されていた。3階を見ると、金田も、いつの間にか姿を消していた。

 ……千刺桜のくだり、あとで他の人に聞いてみよ。


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