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桜は千度刺す  作者: アフロヘッド


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3/8

第三話 ポットで骸骨がドヤってきやがった

「君って、一体何なの? 何者? 

 いや、我ながら漠然とした質問だな……つまり、何というかこう、どこ製なのかなっていうか、一体どういうシステムで今立っているのかなっていうか……」

 骸骨はしばらく顎に手を当てる。

 そして、ゆっくりと文字を書き連ねていった。

『幽霊』

 幽霊……ってことは、死んだ人ってことだよな……ということは、元は生きてた人間なのか? 

『気づいたら、あの山の崖下で骸骨になってた』

 骸骨は校舎の外を指し示した。その指の先は、紅道山だった。

 紅道山。校舎に近い、比較的低めの小さな山だ。ただ、千刺桜を含めたいろんな桜だったりが咲いたりして、景色が綺麗ってんで観光地にもなってる。聳え立つ崖沿いに敷かれた道路を使えばある程度高いところまで行けるし、山頂付近まではロープウェイも通っているので、お手軽観光スポットってことで人気だ。

 この学校からも相当近い。校舎沿いの道路を、チャリで全力で飛ばせば麓まで30分といったところか。まあ、大量の信号をうまく抜けられればの話だが。

 ちなみに、脇道を通れば麓まではもっと早く行ける。まあ、そっちはそっちで一度閉じたら当分は開かない、開かずの踏切を抜ける必要があるけども。

 麓からロープウェイへはそこからぐるりと裏を回る必要があるが、それでもかなり近い。

 昔は僕もよく昆虫採集に行ったり、学校の校外学習や家族で登山に行ったりした。

 ぜひ皆さんも一度いらしてくださいね!! にっこり。

 ……と、話が逸れた。今はこの骸骨の素性を探っているところだった。

「気づいたらって……何でそうなったか、とか覚えてないの?」

骸骨はカチャリと頷いた。

『それどころか、名前も思い出せない』

「死んで何年経ったとかも?」

同じく、骸骨は頷いた。

「じゃ、なんで紅道山からここに来たの?」

『少し、ボンヤリした景色を覚えてた

 それが、この学校だった』

「この学校の生徒だったってこと?」

『多分?』

それすらも曖昧なのか。

 僕が次の質問をどうしようかと悩んでいると、骸骨はおもむろに、ボードに文字を書いた。そこには

『でも』

のニ文字。

「でも?」

『何か思い出せそうになった』

「おお、本当!?」

そして、そこまで書くと、骸骨は僕を指差した。

『だから、君に話しかけた』

 なるほど、そういうことだったのか。

 骸骨は自分のことを思い出そうとして、かつての母校を訪ねた。それで得られた手がかりが僕だと……何で? 

「僕、君と何も接点ないと思うけど……」

 どうしよう、全く心当たりがない。

 身近に殺人事件とかあったっけ?

 それとも、僕には封印された記憶でもあるのか? 僕が殺したのか? 殺人犯? 僕が? 

 ……もしくは、右目に邪眼龍でも封印されてるのか? 勇者の血筋だったっけ、僕? 失われた記憶と共に解き放たれるのか? 

 若干思考が迷路に迷い込み、頭を抱えている僕。その傍ら、骸骨はホワイトボードにササッと文字を書き、見せてきた。

『君、恋してるだろう?』

 その文字を見た僕は凍りついた。

「な、なななんですか急に!?」

驚いて声が詰まってしまった。

 唐突に恋バナ? なんなんだこの骸骨は。急に僕の顔見たらバラバラになったかと思えば、今度は恋バナ? 

 ズズイと骸骨は顔とホワイトボードを近づけてくる。

 そうなんだろ? うん? とでも言いたげに圧をかけてくる様は、まるで取り調べの刑事のそれだ。

「関係ないでしょ? そ、それに、別にちがうし」

 それを聞くとサラサラと文字を書いたホワイトボードをまた見せてきた。

『見てた』

「見てた!? 僕のことを!?」

骸骨はカチャリと頷いた。

「こ……怖いって!  いつのシーン見て僕が恋してるなんて思ったんですか? いや、それ以前に一体いつ? いつから見てたんですか?」

『ずっと』

 骸骨は、僕に見えるようにホワイトボードを床に置いて、ノリノリで絵を描き出した。

 最初に机。そこに座っている女の子。そしてその女の子をうつ伏せになりながらガン見している男の子の絵だ。

 骸骨は揶揄うようにゆっくりと男の子の絵に丸をつけて、ペンを僕に向けた。

「いやこんなガン見はしないって、勘違いだから! てか、教室のことなんて知ってんの? どこから見てたんだよ?」

骸骨は目の前のガラス窓を指チョンチョンと差す。

「窓から!? 怖いって!  てか気づかれるだろ」

骸骨はガチャガチャと自分の手足を動かして、いかにして窓ガラスに張り付いていたのかを説明しようとしていた。だが、地方の変わった伝統舞踊にしか見えない。

 は? と口を開けた僕を見ると、骸骨は肩をすくめる。ホワイトボードを取り出してキュキューっと何かを書いて見せてきた。そこには4文字、

『頑張った』

とだけ書いてあった。

「頑張ったのか…………そうか」

こう言う時こそ絵で説明しろよ、とツッコミたくなったがとりあえず捨て置くことにした。本筋はそこじゃない。

「で、それがなんだって言うんだ? 関係ないでしょ」

骸骨はホワイトボードへまた文字を書いてみせた。

『手伝おうか?』

恋を、ってことか? 

「いや、結構です」

僕は反射的にそう言った。そう言っても、骸骨は一向に諦めようとしない。

『そう言わずにさ』

と書いたホワイトボードを手に持って、また肩を掴んできた。異様に力が強い。

 僕はその手を振り払って2、3歩後ずさった。そして、少し声を荒げて言い放つ。

「まったく……なんでそんなおせっかい焼こうとするんだ? できれば僕の恋路はほっといてくれると嬉しいんだけど」

僕の言葉を聞くと、骸骨は腕を組んで首をかしげて見せた。

 しばらくすると、骸骨は悩んでいるかのように、頭をカリカリと掻きながら文字を書いた。

『気分』

「気分?」

無意識に、露骨に不機嫌な顔をしていたのだろう、骸骨はあせあせとホワイトボードの文字を消して、また見せてきた。

『三人寄れば文殊の知恵』

「いや、二人しかいないんですけど」

骸骨はササッと『3分の2』を付け出した。3分の2文殊の知恵だ。

「いや、3分の2文殊の知恵ってなんだよ聞いたことないよ。割れるのそれ?  というか意味的に割っちゃいけないだろ」

骸骨は僕のツッコミを華麗にスルーして、新たに書いた文字を見せてきた。

『学年一の美女を口説き落としたことがある』

そして、裏をひっくり返す。

『その口説きテクニック、欲しくはないかい?』



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