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桜は千度刺す  作者: アフロヘッド


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第十四話 椎名の答え

 告白当日。

 告白対決五人のうちの一人、金園が全員に共有した場所は、校舎裏ではなく、校舎の中央にある噴水広場だった。

 私が噴水に着くと、既に四人が待っていた。

 四人……彼がいない。 一体どこに行ったんだろうか? ……いや、関係ないか。いてもいなくても、結果は断るだけだ。

 全く、なんで私はそんなことを気にしているんだろうか……本当に。

 周囲には、それを物見遊山に来たギャラリーたち。明日から噂にされること間違いなしだ。本当に困るなぁ。

 そうため息をつきながら、今回告白しに来た男たちを見る。

「やあ、椎名さん。来てくれて嬉しいよ」

口を開いたのは金園。金園は腕時計を見る。

「そろそろ時間だな」

「あれ、後藤くんはどうしたの?  待たなくていいの?」

と神田が金園に話しかける。金田がそれを聞いて、タタタと素早くPCにタイピングした。直後に全員にメールが届く。

『いいんじゃないか?  100歩譲って、時間まで待って来なければ別にいいだろう』

「ああ、彼の言う通りだ」

と金園がそのメールを見て喋った。

「この人だかりだ。怖気づいていてもおかしくはない」

 いや違う。彼はそんなことをする人ではない。私は内心でそう突っ込んだ。

『一体どうしたというのだ、後藤は?』

 近藤は黙ったまま眉を顰めている。いつまでプラカードトークするんだ、お前は。

 彼は今日は休んでいなかったはず……一体どうしたんだろう。いやなんで私がそんなことを考えているんだ……。

 指定した時間は午後3時。今は2時50分。しかし、一向に彼は現れない。

 ホントに、こんなに待たせるなんて……彼は本当に来ないんだろうか? 

 私は、自然と足踏みをしていた……あれ、なんで足踏みしているんだろう。私は自分が何かに苛立っていることに気づいた。

 一体何に? 

 刻一刻と時間は過ぎる。パタパタと足踏みをしている間に、短針は徐々に3の字ピッタリを指そうとしていた。



「さあ、時間だ……どうする?」

午後3時。金園が残りの三人に問いかけた。

『彼は来なかった。それだけだ』

と、金田が今度は合成音声で答えた。

「まあ……そうだね。残念だけど……。まあ、これだけの人たちの中、出てくるのも相当プレッシャーだしね……現に僕が今プレッシャー感じてるし」

神田もフォローを入れる。だが、彼もまた、後藤が怖気付いているという前提は疑わない。

 近藤も無口だが、険しい顔をしている。

『何かあったのだろうか……? 

 それとも、ただの格好のつかない男だったのか?』

とプラカードを見せてきた。

 「違うよ。君たちは彼のことを全くわかっていない」と思わずそう零しそうになった口を私は、閉じた。

 ……なんでそんなことを言いたかったんだろう? 

 私がそう思っていると、四人が懐から物を取り出した。

「さて、椎名さんに言われた通り、あなたに似合う最高のプレゼントを持ってきたよ」

 そう、この学校で本物の桜の花びらを持ってくる人はいない。彼らは『私に似合う最高のプレゼントを持ってくる』というように、一般的に私の言葉を解釈して持ってきた。彼らは正しい。

「今度こそ、この私、を選んで欲しい」

 金園が持ってきたものは、キラキラと輝くネックレス。高級ブランドのものだ。きっともの選びから資金の準備、実店舗に赴いてのパッケージまで、全てに手を尽くしたのだろう。彼の誠実さと本気度合いが伝わってくる。

「オレの、本気受け取って欲しい!!」

 神田が持ってきたのは、行こうと思っていた恋愛映画の前売りチケットと、最近ハマっている作品のキャラクターのぬいぐるみ。きっと持ち前の情報網とコミュ力を活かして、私の知り合いから私の好みをちゃんと把握してきたのだろう。映画好きなこと、ぬいぐるみが好きなこと……ありとあらゆる情報を、私に気づかれないようにチェックしたのだろう。そして、彼が制服の下に着ているパーカーのフードには別の映画のチケットがチラリと見える。

 きっとありとあらゆる状況を想定して用意していたのだろう。

『……好きだ』

 金田が持ってきたのは、目一杯の花束。

「……好きだ」

 そして近藤も同じく、花束。

 金田、近藤……被るのは無口キャラだけにしろ。

 というか近藤、お前セリフに関しては抗えただろ。

 しかもどっちも多分、学校の近くの『池田花屋』で買ってきてる。ラッピングに書いてある。生き別れの双子かよ。

 ……だが、二人とも全力であるのは十二分に伝わった。

 みんな思い思いに、私のために全力を尽くしてきてくれたのだろう。それを今、示してくれている。

 そして、この人たちは昔私が付き合ってた人たちとは違う。きっと私を真摯に愛してくれるだろう。きっと、いい恋愛ができる。

 そう、わかっている。私はしっかりと理解している。

 でも。

 でも、それでも私は自然と言葉を零していた。

「私の答えは、既に決まっています」

 右足が、自然と前に出ていた。



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