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桜は千度刺す  作者: アフロヘッド


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第十一話 桜と戯れてたら殴られた

 そこには四人の影があった。金園、神田、金田、近藤の四人だ。

 そして、スタスタと優雅に歩き、彼らの元へ向かう女性が一人。

 今回の告白大会の主役、椎名雪である。

「そろそろ時間だ。始めようか、椎名さん」

金園の言葉に、椎名雪は静かに答える。

「……そうね」

 並び立つ四人。しかし、そこに後藤の姿はなかった。







 現れた四人の影。

 椎名さんに告白しようとしていた四人か? 

 ……制服をそこそこに着崩している、見るからにガラの悪そうな奴らだ。何やらこっちを「なんか、もうボロボロだぞ?」と笑っている……一体誰だ? 

「誰ですか?」

うち一人がこちらにケラケラと笑いながら近づいてくる。

「お前が後藤?」

「……そうですけど」

僕がサッと身構えると、

「俺は土見健十郎。仲間からはドミケンって呼ばれてる。まあまあ、そう警戒すんなよ。俺らはただ、お前とちょっと話したいだけなんだからよ」

 土見と言った男は、落ち着くようにジェスチャーで促してきた。

「は、はぁ……」

僕は彼のいう通り、構えていた両腕を下げる。

 僕は口を開いた。「それで、いったい何の用ですか?」と発音しようとした瞬間。

「それで──────」

 いつの間にか、僕は地べたに張り付いていた。

 左に吹っ飛ばされていた。僕は左腕を咄嗟に地面について受け身を取っていた。

 何をされたのかわからなかった。土見の姿を見上げた。その時になってようやく、左フックで吹っ飛ばされたのだと気づいた。

「悪いけどよ、お前にはちょっと消えてもらうぜ」

そう言うと、土見は立ちあがろうとしていた僕の顔をボールを蹴るかのように、思いっきり蹴り上げる。

 僕は地面に思いっきり頭を打ちつけた。

 あ、頭が、ズキズキ痛い。頬もジクジクしてる。顎がズキズキ痛む。

 両腕を後ろに突いて起き上がりながら、僕は口を開いた。

「い、一体なんでこんなことを……」

土見は、半笑いで答える。

「なんで……? そんなん決まってんだろ」

土見が僕の胸ぐらを掴み上げる。

「近藤さんの邪魔だからだよ」

 近藤? あの告白対決の時にいた近藤か? あいつの指示なのか? あいつの指示で俺を潰すよう、言われたのか!? 

 そう尋ねようと口を開けた。

 視界が拳で埋まった。

 直後、後頭部がフェンスに打ち付けられていた。

「なんで僕が? って顔してんな」

い、痛い……僕は鼻を押さえながらぼやけた視界で土見を見る。

「なに、簡単なことさ。他の奴らは周りにも人気がある有名人。俺らが潰したってなったら噂が立つし、近藤さんや俺らのヘイトも相当なもんになる」

 鼻を押さえていた手ごと、僕はまた顔面を思いっきり体重のかかった足で踏みつけられた。

「でもお前なら問題ねぇ」

 土見は僕の顔面から足を離し、2、3歩後ずさる。

 一気に駆け寄る。助走の勢いを乗せて、僕の右脇腹を蹴る。

「人気も、知名度も、力も、大したことねぇからなっ!!」

 かはっ、と自然に唾が僕の口から漏れた。

「や、やめてください……」

しかし土見は僕の言葉を無視して、横に倒れた僕に近寄った。

「近藤さんは多分、俺らにこんなことは求めちゃあいねぇ……でも! 甘すぎる近藤さんに変わって、俺らが少しでも障害を排除する! 椎名っつー女と、近藤さんが付き合える可能性を少しでも上げられるようにな!!」

殴る蹴る。その言葉が相応しいほど、僕は暴力の嵐にあった。途中から「俺も混ぜて〜」といった軽いノリで三人が加わり、四人にめったうちにされた。

 僕の顔面を殴りながら、一人が喋ってきた。

「襲うタイミング見計らうためによ、お前のこと、俺らでずっと見てきたんだぜ」

 僕はその男の顔を見る。

 ここ最近、視線を感じていたのはそれだったのか。

「筋トレしたり、勉強したりよ……よく頑張ってたじゃねえか、お前なりにはな……でもっ」

そう言うと、僕の顔面を校舎の壁に叩きつける。

「その努力も、水の泡になったな!!」

「おおすっっげ、ギュータやっべぇ」

「エグーっ」

土見たちが後ろでハハハ、と笑っていた。

「さて、そろそろ遊び終わったし、寝ててもらうか」

そう言うと、土見は木製バットを取り出した。

「ま、お前の漢気に免じて、木にしといてやるよ」

まずい。あれを頭にでも食らったら本当に告白どころじゃなくなる。病院送りだ。

 でも、あちこちが痛すぎて、体を動かせない。

「おやすみっ!!」

 来るっ! 

 僕は打撃に怯んで目を閉じた。

 しかし、代わりに響いたのはパキャッという軽い音。

 まるで、骨が割れるような。

 ガイコツさん。目を開いた先には、彼がいた。

 頭蓋骨が割れている彼が。

 僕は咄嗟に叫ぶ。

「ガイコツさん!  出てきちゃダメだろ!」

「うわ、こいつが千刺桜の骸骨!?  マジに出てきた!」

一人がカメラでパシャパシャとガイコツさんの写真を撮る。

「な、ホントだったろ、リューちゃん?」

ギュータと呼ばれていた男が、写真を撮っている男に話しかける。

「スッゲェ〜〜、ギュータとフルルンが言ってた時は嘘に決まってんだろって思ってたのに」

「賭けはフルルンたちの勝ちデース。ドミケンとリューはミーたちにちゃんと払いなサーイ」

「わかってるよ、フルルン」

 談笑の中、ガイコツさんは不意を突こうと慣れない手つきで土見に殴り掛かった。

 しかしその拳を、土見はチラリと見ると軽く払いのけて、思いっきり顔面にパンチした。

 メキッ、と骨が潰れる音が響く。

「でも思ったよりヤワだな」

「ガイコツさん!」

ガイコツさんはフラフラと前に倒れ込んだ。

 ガシャン、と軽くて重い音が響く。

「もうちょい割っとくか」

「ほどほどにしといてよ、あとで映え用の写真撮るから」

「わかったわかった」

土見が足を振り上げる。

 瞬間、僕の体は動いていた。僕はガイコツさんを覆うように四つん這いになって土見の蹴りを背中で受け止めた。

「うっ!!」

土見は驚いたように声を出す。

「まだ動けたのか、お前」

 土見の足が浮いた時。

 僕はその姿勢のまま、土見の足目掛けて思いっきり不格好なタックルをぶつけた。

 「おおっ!?」と驚きながら土見は倒れ込む。

「へぇ……やるじゃん」

「感心してる場合か! ドミケン」

「へいへい」

ギュータに言われると、土見は僕の襟元を掴んで僕を引っぺがした。フワッと浮遊感を感じる。僕は、地面に思いっきり投げ打たれた。

「うげっ!!」

僕はガンガンと痛む頭を両手で抑えて蹲った。

「なに地面見てんだ……500円玉でも落ちてたか、この野郎!」

腹への蹴りでぶっ飛ばされる。

「うごっ!!」

僕が腹を抱えていると、ガッと髪の毛を引っ張られ、僕は地面に打ち付けられた。

「あぁっ……!」

また、思いっきり後頭部をぶつけた。頭がグアングワンと揺れる。

「ぐ、うぅ……」

僕は千刺桜の花びらがついた棒の方を見る。頭が割れるように痛い。

 さ、さく、さくら……は、はなび、ら────。

 割れる頭で必死に唱えた。

 千刺桜の花びらを、

「さくら……の花びらを、渡す、んだ。心を、残すな……」

中央噴水に行って、椎名さんに渡して、告白するんだ。だから、こんなところで倒れている場合じゃないのに。

「桜の花びら?  ええっ。お前、まさか椎名さんの言ってるあれ、マジに言葉通りだと思ってんのか?」

プッと笑いながら、リューちゃんと呼ばれていた男が喋った。

「……え?」

「あれは違うぞ。あれはな、『桜の花びら』じゃなくて『プレゼントを渡す』ってことだぞ。知らなかったのか? まさか」

「ど、どういうこと……?」

「教えてあげるなんて、リューちゃんやっさし〜」

「なんでも『あの千刺桜の花びらを手に入れなさい。……できないでしょ?  だったら、せめて私にふさわしい最高のプレゼントを持ってきなさい』って意味らしい。この学校じゃ何年も前から続く伝統なんだと」

「それにしても周りの友達に聞けばすぐわかっただろうにな。あ、聞く友達がいないか!」

ドッと笑いが起きる。

「これは俺たちが潰すまでもなかったっぽいな」

 そんな……これまでの苦労は、今の痛みは、それなら無駄だったっていうことなのか……? 

 僕の体から、フッと不自然に力が抜けた。











 ガララと生物室のドアを開ける。

 中にいた人は、私に視線を移す。

「やあ」

「こんにちは、早乙女先生」


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