魔法少女捕縛編 九、プリ○ュア見参。
海水浴場から少し離れた場所にプライベートビーチみたいな場所がある。岸壁に囲まれたその場所は誰もが容易に入れる場所ではない為に、決戦をするにはもってこいだ。
その砂浜にアリスと二人の魔法少女が相対しているのをオレは崖の上から見下ろしていた。
「大人しく委員会に従って下さい!」
「イヤよ! 私達は静かに暮らしたいだけ。放っておいて!」アリスの言葉に清楚系魔法少女が吠える。
「そうだとも。自分勝手な事ばかり吐かす委員会に誰が従うか!」美人系魔法少女が清楚系に次いで吠えた。
「……なら、強制連行させてもらうしかありませんね」
「面白い」口角を吊り上げた美人系。その直後に清楚系と共に体が光り輝く。魔法少女の変身だ。
美人系魔法少女は淡い紫色をベースとした花を逆さまにしたような衣装。頭には同じく淡い紫色の髪飾りがシャンと音を立て、ボーイッシュな短髪はセミロングへと変化を遂げる。肩を大胆に露出させ、胸の谷間を覗かせる。
腕にはレースの手袋。キュッと締まった腰に革製のベルトか巻かれ、脚にはロングブーツを履く。
清楚系魔法少女は淡い水色をベースとしたシンプルな衣装。学校の制服を思わせるブレザーに淡い水色のリボンが付いた真っ白なワイシャツ。ただし、ブレザーとワイシャツは無茶苦茶切り詰められていてアンダーバストがチラ見えする。
レオタードの様なボトムは白。オーバーハングした崖の様にVラインが際どい。お尻からパレオらしき短い布がゆらめき、そこから四本の帯がぶら下がる。靴は履かずに素足だ。
魔法少女達が変身を終える頃、アリスの体もまた輝き出す。ミニミニ丈のウェディングドレスの様な様相なのだが、神聖さは欠片も無い。肩は露出全開で胸の半分まで渓谷が続き、あと数センチ下にずれるだけでその山の頂が見えそうだ。
ボトムのVラインもエグイ。Tフロントとの違いが分からないくらいだ。……なんというか。魔法少女。というよりは、委員会が関わると胸や股間周りが際どくなるのは気の所為か?
「変身した?!」
「あいつも魔法少女だとでもいうのか……」アリスが変身した事で二人の魔法少女が驚き戸惑う。けれど、美人系魔法少女の顔が引き締まった。
「だが、たった一人でオレ達に勝てると思うなよ?」美人系のセリフにオレはニヤリと笑んだ。それを待っていたぜ。
「それはどうかしら?」人気の無いプライベートビーチに朗々とした声を響かせた。二人の魔法少女は空を見上げ、そして私の存在に気付く。
「何者だ!?」美人系が誰何する。ニチアサ最大の見せ場だ。
とう。と小声を発して崖から飛び降りプライベートビーチに降り立つ。姿勢を正した後も腰に手を当てる事を忘れない。
「私はプリティーキュア」……分かってる。分かっているから何も言わないでくれ。
「来てくれたのですねマス……きゅ、キュア!」
「ええ。委員会の要請で助太刀に来たわアリス」バチコン。とアリスにウインクをして見せる。そして清楚系に指を差した。
「あなた。すごい格好ね?」
「う、五月蝿いっ。私だって好きでこんな格好をしている訳じゃないわ!」胸やら股間やらをしきりに気にしている清楚系魔法少女。まあ、ほぼアダルトビデオのコスと変わらんもんな。清楚系には厳しいだろう。
「あなたは……」美人系に視線を向ける。
「可愛いわね」言っても眉一つ動かさない美人系魔法少女。厳しい視線を私に注いでいる。
「魔法少女であるお前達が委員会の肩を持つのか?」
「ええ。私達が魔法少女であり続ける限り、世界の魔素は減っていき、やがて枯渇する。元素の一つを失ったこの世界が辿り着く未来は、砂塵が吹き荒れる何も無い荒野だけよ。私はこの世界を救いたい。だから、あなた達を狩るわ」
「ふっ。委員会に担がれたか……まあいい。私はこっちをやる。そっちは任せたぞ」
「ええ」清楚系魔法少女は頷いて波打ち際に移動する。オレはその後を追った。
「出来れば降参して欲しいんだけど?」
「それは無理。私達は世界なんてどうでもいいもの。ただ、静かに暮らしたいだけ」悲しい目で微笑む清楚系魔法少女。その目に力強い意志の力が宿る。
「だから! 邪魔しないで!」だらりと下げた腕を空に向かって振り上げる。彼女の前で何かが煌めき咄嗟に身を退け反らせた。
躱した事でその攻撃がどんなものかに気付く。それは正面からでは見る事の出来ない極薄の水で作られた刃だった。
「そんな水の刃なんかで私は倒せないわ」口ではそう言ったが、内心では心臓があり得ないほどに脈打っている。変身していなかったらと思うとゾッとした。
「へぇ、気付いたんだ。なら、これならどう?」清楚系魔法少女が空に向かって手の平を差し出すと、七つの水球が生まれて槍へと変化を遂げた。
「七つの渦巻く槍!」七つの槍が渦を巻きながらオレに迫る。オレは慌てる事なく魔法を行使する。
「風盾!」風を操れるアエラスの持ち技だ。風のドームを作り出してあらゆる攻撃を防ぐとされている。清楚系の攻撃をこれで防ぎ、カウンターで風の刃を放ってやろうと思っていた。しかし、清楚系の一言でその計画が潰え去る。
「|渦巻く槍よ真の姿となれ《ボルテクスピア・ブレイドフォーム》!」今まさに風のバリアに接触しようとしていた水の槍が、映像を巻き戻すかの様に清楚系に戻っていく。そして槍自体が輝き、その輝きの中から三又の戟が現れた。
「な、何よそれっ!?」
「神槍トリアイナ。防御不可の必殺の槍。これの前ではどんな防御手段を用いても紙と同じ」
「酷いチートだわっ!」清楚系の言う事が本当ならこんなバリアなど展開していても意味はない。そう判断してバリアを解いた。
「あら。守りを解いちゃって良いのかしら?」
「防御不可なんだから無意味でしょ? それに、魔力が勿体無いしね。その代わり……」小さな風がひゅるりと巻き起こり、オレの肩の上で止まる。その風が消えると胴長短足の動物が姿を見せた。
「な、何なのよそれは!?」ニチアサお馴染みの動物系マスコット。面長で鼻をヒクヒクとさせて愛嬌を振りまいているその外見はフェレットと大差ない。けれど、こいつの放つ風の刃は血を一滴も流す事なく相手を切り刻む。その名も。
「この子はヨウシュ。カマイタチのヨウシュよ」首をこちょこちょしてやると気持ち良さそうに目を細めた。
「なん、そんなうらや、違っ! そんなの何処で手に入れたの?!」何故か動揺している清楚系魔法少女。
「そんな存在を呼び寄せる魔法少女なんて聞いた事が無いわ!」
「それはそうよ。あなた達を捕獲する為にアップデートしたんだもの」
「アップデート?」
「そう。私達は第三世代の魔法少女。あなた達第二世代の魔法少女よりもはるかに強力になっているんだからね」バチンとウィンクをかましてやると清楚系に動揺が走る。まあ、第なんちゃら世代とかは黒猫の受け売りだがな。
アリスも美人系魔法少女と戦闘状態に入った。彼女の足を引っ張らない為にも時間内に降参させるか封印させなければならない。
「さて、私達も戦りましょうか」肩に乗るヨウシュをひと撫でして、清楚系魔法少女に向かって指を差した。
☆ ☆ ☆
清楚系が三又の戟を突き出し、ヨウシュが己の身と引き換えに戟を霧散させる。霧でブラインドされた陰から水の槍がいくつも飛び出して、風の盾でオレが防ぐ。防いだ水の槍が三又の戟へと変化を遂げて……それが何度も繰り返され、イタズラに時間を浪費させていた。
「第三世代。なんて言う割にはたいした事ないじゃない?」清楚系がオレに向かってほくそ笑む。出力的にはこちらが上だが、いかんせん経験値が足らない為に互角かそれ以下の戦いになっている。
「く……」心の中に焦りが生まれる。オレが魔法少女に変身していられる時間は一日一回三十分。残り時間はもうわずかだった。
アリスと美人系魔法少女との決着はまだついていない。両者とも肩で荒い息を繰り返し、纏った衣装があちこち破れて裸同然になっている事からその戦いが激しかった事が伺える。それでも先端の突起やら下着やらが見えないのだから不思議でならない。
「仕方がない。ヨウシュ。霊剣変化」きゅっ。と返事をしたカマイタチのヨウシュ。その姿がゆらりと歪み一本の剣に変わった。
こうなったら一か八かだ。オレは剣に姿を変えたヨウシュを構えて、清楚系魔法少女に斬り掛かった。




