魔法少女捕縛編 八、覚悟。
夜も更けてシズオカの煌びやかなネオン街から離れた街の一角に佇むアパート。どうやらそこが魔法少女達の住処らしい。
魔法少女達の部屋は二階の角部屋らしく、白のレースのカーテンが室内の灯りで見える。他の部屋は寝静まったのか明かりは付いてない。
「アリス。中の様子は分かるか?」人の十倍の聴力を持つアリスだ。深夜で静まった環境なら聞こえてもおかしくはない。
「はい。話し声が聞こえます」
「どんな事を話している?」給料日が近いという事だから、高跳び先を話し合っているのかもしれない。
「ではお伝えしますね。『今日はどうしたんだ? もうびちょびちょじゃないか』」……ん?
「『だって、あんっ。直に触っちゃ、んっ』」お、おい。まさかこれって……
「『腰が浮いてきているよ。感じているんだね』。『いや……掻き回さないでぇ』」ふぉぉっ! 掻き回すってどこをですかぁっ?!
「『ふふ。こんなに吹いちゃって、お漏らしする子にはお仕置きしないとならないな』。『はぁ……何をするつもりなのぉ?』。『決まっているだろう? これで――』」
「アリス。ちょっと待った」
「はい。何でしょう?」
「感情を込めて言ってくれ」無表情で抑揚を付けずに淡々と話すもんだから興奮度がイマイチだ。やはりこういうのは色気を出してもらわんと。それでもオレの愚息は反応をしているが。
「感情、ですか? 声を拾ってお伝えしているだけなので、一体どんな感情なのか皆目見当がつきませんが」オマエ。高性能のマジカロイドじゃないのかよ。
その後も二人の百合プレイは続き、東の空が明るくなってきた所でようやく静かになった。タフだなぁ魔法少女って。
☆ ☆ ☆
陽が高くなるにつれ、見る間に気温も上がっていく。砂浜は今日も熱々で、朝まで熱々し合っていた魔法少女は平然と仕事に就いている。清楚系魔法少女も朝から一緒だ。
単独行動を取らないかと朝まで彼女達を監視をしていたが、百合プレイを堪能した後は寝てしまったらしく動きはなかった。
「ふあ……」ねむい。
「監視は私がしておきますので、マスターはそのままお休みになっていて下さい」
「んー……そうだな。何かあったら起こしてくれ」
「分かりました」微笑むアリスに頷き、チラリと彼女達を一瞥してから目を閉じた。
水着の跡がクッキリと残る肌と肌の触れ合い。日に焼けた美人系魔法少女の指先が清楚系の魔法少女の体を蹂躙する。清楚系の反撃もあっただろう。アリスに匹敵するナイスなバディを小柄な体の控えめな胸を使って懸命に導いていく。
アリス伝いで聞いたプレイの様子が、彼女達を直に見た事によって妄想が捗る。水着だった事もあっただろう。体のラインがハッキリと見える事で捗っていた妄想が加速した。そして我が愚息が、雄叫びを上げて目覚める。
「あ、やば」鎮まれマイサム!
「マスター」耳元で囁くアリスの声で目を覚ます。目を開けると微笑み見下ろすアリスが居た。こんな起こされ方初めてだ。
「どうした? 何かあったか?」
「いえ、特に何もありません。もうすぐお昼ですので何かお召し上がりになるかと思いまして」
「もうそんな時間なのか」大きく伸びをして大きな欠伸を一つ。寝かせてもらったお陰で頭がスッキリとしていた。
「あれ? 魔法少女は?」監視台には別な女性が座っている。彼女にベッタリだった清楚系も居ない。
「彼女達でしたら小屋の中で休憩をしていますよ」
「ああ、なるほど。それじゃ、オレ達もメシにしようか」
「はい。マスター」ビーチチェアから立ち上がると、アリスが寄り添いオレの腕を取る。柔らかな感触に目覚めようとする愚息を寝かしつけながら、海の家へと向かう。
結局その日も魔法少女達は単独行動を取る事もなく住処へと戻った。ちなみに今日もまた、ボロアパートの一室で濃厚な百合プレイが展開されていた事を名器……じゃなくて明記しておこう。
魔法少女を捕まえる為、尾行を始めてから三日が経った。その間彼女達は単独行動を取る事もなく常に一緒。バイト中もバイト上がりのシャワーも。着替えもトイレもショッピングも。金魚のフンとしか思えない。
アエラスみたいなちょっと抜けた魔法少女だと良かったんだが、これでは二人いっぺんに相手をせざるを得ない。二人を相手にしてはアリスは勝てないだろう。
「一人をオレが引き受けるしかないな……」覚悟とかその他諸々。平和な日本で生まれ育ったオレには、死に物狂いで魔獣達と戦った魔法少女達に比べて戦闘における経験値が圧倒的に足りない。レベルカンストの相手にレベル一で挑む様なものだ。絶対に勝てない。
しかし、勝たなくて良いのなら。アリスが打ち勝つまで引き付けておくだけなら、やりようがあるかもしれない。その為には、魔法少女の力を把握しなくてはならない。
「アリス」
「はい。何ですか? マスター」
「街の郊外にド派手な音を立てても大丈夫な場所はあるか?」
「えっと、はい。御座います。今は使われていない旧採掘場跡です」なるほど。そこなら魔法少女達にもバレずに済みそうだ。と頷いた。
「このまま待っていても彼女達が単独行動をする可能性は今までの事から低い様に思う。そこで彼女達の監視は一旦打ち切る。そしてアリスには、オレを特訓して欲しい」
「特訓、ですか?」
「ああ。あの二人と同時に相手しては、万が一にも勝つ見込みはない。そこでオレが片方を受け持つ間に、アリスがもう一人を打ち倒す。その後、オレと共闘して残りを打ち倒す。これしかない」折角マジスマホの特殊機能が使えるんだ。有効活用しないとな。
「なるほど。それで特訓ですか」
「一日一回三十分。特訓出来る時間は一時間半しかないからな。少し激しめに頼む」
「分かりました」コクリと頷くアリス。同時にたわわな実りがふるんと揺れた。
「彼女達が収入を得るまで残り四日。決戦はその日だ」
「はいっ!」二人で談笑を続ける魔法少女を一瞥して、オレとアリスは焼けたビーチを後にした。
☆ ☆ ☆
あれ程まで晴れ続きだった夏の空は、今日これから起きる出来事をお日様から覆い隠すかの様に分厚い雲で包まれていた。その為か今日は少し肌寒く感じる。……いや、違うか。アリスが打ち勝つまで引き付けておけるかどうかという不安が体感温度を下げているんだ。
この三日。アリスと特訓をしていて思った事が一つある。それはアリスのスペックの高さだ。どんな攻撃を繰り出しても返されいなされふるるんと揺れる。到底勝てる気がしない。
「マスター、動き出しました」そのアリスが魔法少女が出掛けた事を告げ、益々緊張が高まる。
「り、了解」ふるふると震える右腕を左手で押さえ、その左手もまたふるふる震え出す。その手にアリスの柔らかい手が置かれた。
「そんなに緊張していては、気付かれてしまいますよ?」首を僅かに傾げ微笑むアリス。そのアリスが首を傾げたままで急接近し、唇と唇が触れ合った。
「ん……んぅ」アリスが小さく呻く。その声には熱がこもっていた。
「緊張は解けました?」オレの目を見つめるアリスの目にオレの顔が映っている。気付けば震えは止まっていた。
「あ、ああ。助かったよ……」
「では、誘き出しますのでマスターは所定の位置に」
「分かった。任せたぞ」
「はい。お任せ下さい」一瞬にして掻き消えたアリスが居た場所に背を向けたオレは、マジカルスマホを強く握りしめて予定地へと向かった。




