第二十三話 泊まり込み
翌朝。異世界に来て9日目。
田中は目を覚ますと、収納袋へ手を入れた。
【田中真司】
レベル:6
HP:804/804
MP:842/842
筋力:631
耐久:317
敏捷:388
器用:297
「満タンやな」
100を残し、742MPを換金する。
7,420円。
所持金は2,732,124円から2,739,544円になった。
【田中真司】
レベル:6
HP:804/804
MP:100/842
筋力:631
耐久:317
敏捷:388
器用:297
「よし」
1階へ下りる。ガルドはすでに起きていた。
「爺さん、今日から何日か帰らんからな」
「ワカッタ」
「一応もう一回言うとくけど、金使い切んなよ」
「ワカッタ」
「ほんまやろな」
ガルドが面倒そうな顔をする。
「その顔が信用ならんねん」
朝食はガルドが買っていた物を食べた。食後、田中は収納袋の中身を確認する。飲用と洗浄用のポリタンク、黒打捌き包丁、作業手袋、ヘッドライト、毛布、金テコ。カロリーメイトも8箱残っている。
「食いもん足らんようなったら向こうで買えばええしな」
問題は収納量だった。
「何日も狩るんやったら、3,200じゃ足らんな」
収納袋へ手を入れ、強化画面を開く。
【容量Lv7】
3,200L
【次回強化】
容量Lv8
6,400L
必要額:640,000円
「倍か」
強化する。
所持金は2,739,544円から2,099,544円になった。
【容量Lv8】
6,400L
「重さも上げとくか」
【重量軽減Lv7】
60%軽減
【次回強化】
重量軽減Lv8
70%軽減
必要額:640,000円
そのまま強化する。
所持金は2,099,544円から1,459,544円になった。
【重量軽減Lv8】
70%軽減
「128万飛んだやん」
田中はスマートフォンを見る。
8時10分。
「まあ、狩って取り返そ」
「イッテラッシャイ」
「ほな行ってくるわ」
田中は家を出た。
◇
北門から森へ入り、昨日までに覚えた道を進む。浅い区域を抜け、山側へ入った。
最初に見つけたのは大きな鹿型だった。
「またおった」
昨日の個体より角が太い。田中へ気づいた瞬間、逃げ出した。
「逃がすか」
斜面を駆ける鹿を追う。距離を詰め、横から金テコを振った。一撃。鹿型が地面へ転がる。
「幸先ええやん」
丸ごと収納袋へ入れた。
◇
そこから先では、昨日見たオークらしき人型が何度も現れた。
3体。
5体。
少し離れた場所で6体。
「ほんま多いな」
正面から棍棒を振り上げた1体へ踏み込み、脇腹へ一撃。そのまま横へ抜け、2体目の頭を殴る。後ろから来た個体も振り返って一撃。
「遅いねん」
最後の1体が逃げ出した。
「待て待て」
追いついて倒す。昼前までに14体。すべて収納袋へ入れた。
「昨日の袋やったら、もうだいぶキツかったな」
袋を担ぎ直す。朝よりは重い。
「軽くしといて正解や」
◇
正午を少し過ぎた頃、腹が鳴った。
「昼か」
スマートフォンを見る。
12時24分。
近くの岩へ腰を下ろし、収納袋からカロリーメイトを2箱取り出した。
「今日結構動いてるし、1箱じゃ足らんな」
8本を食べ、飲用の水を飲む。残り6箱。
「まだあるな」
食べ終えると、再び山奥へ向かった。
◇
木々が少しずつ疎らになり、岩が増えてくる。頭上で枝が大きく揺れた。
「何や?」
見上げる。黒っぽい毛に覆われた大きな猿のような魔物が枝の上にいた。
「猿?」
1体ではない。周囲の木にもいる。全部で6体。
《ギャッ!》
1体が鳴いた。何かが飛んでくる。
「うおっ」
横へ避ける。拳ほどの石が地面へ落ちた。
「石投げんのかい!」
別の木からも飛んでくる。田中は走った。
「降りてこいや!」
1体が枝から飛びかかってきた。
「そっちから来るん?」
金テコを振る。空中で直撃し、そのまま地面へ落ちた。2体目も一撃。残りは木の上を逃げ始める。
「面倒くさ!」
田中が追う。地上へ降りたところを仕留め、別の木へ飛ぼうとした個体も叩き落とす。最後の1体まで倒した。
「うっとうしいやつやな」
順番に収納していく。最後の1体を入れた時、手応えが変わった。
「……結構入ってきたな」
田中は収納袋へ手を入れたまま、強化画面を開く。
【容量Lv8】
6,400L
【次回強化】
容量Lv9
12,800L
必要額:1,280,000円
「128万か……」
所持金は1,459,544円。
「ほとんど無くなるな」
少し迷う。それでも手を止めなかった。
「まだ帰る気ないしな」
強化する。
所持金は1,459,544円から179,544円になった。
【容量Lv9】
12,800L
「一気に貧乏や」
田中は袋から手を抜いた。
「まあええ。帰ったら売ろ」
◇
さらに進む。
地面を掘り返したような跡があった。
「なんやこれ」
少し先から荒い鼻息が聞こえる。木の陰から巨大な猪が出てきた。
「キバイノシシ……ちゃうな」
以前狩っていたキバイノシシより明らかに大きい。肩も高く、牙は太く長い。
「上位版みたいなやつか?」
大型猪が地面を蹴った。
「来た」
一直線に突っ込んでくる。田中は横へ避け、すれ違いざまに金テコを横腹へ叩き込んだ。ドンッ。大型猪がよろめく。
「一発ちゃうんか」
すぐに向きを変える。
「丈夫やな」
再び突進。僅かにずれてかわし、首へ一撃。続けて頭へ振り下ろす。大型猪が倒れた。
「これはデカいな」
丸ごと収納した。
◇
夕方が近づく。昨日、大型人型を1体倒した場所よりさらに奥へ入っていた。
前方から重い足音がする。
ドン。
ドン。
「……嫌な音やな」
木の間から巨大な人型が現れた。
「またおった」
その後ろからもう1体。
「2匹か」
さらに右側から3体目。
「……3匹やん」
田中は金テコを握り直した。
「昨日言うてたん来たやんけ」
《グオオオオッ!》
1体目が走る。
「しゃあない!」
田中も前へ出た。棍棒をかわし、横腹へ全力で金テコを叩き込む。巨体が揺れる。だが倒れない。
横から2体目の腕が飛んできた。
「うわっ」
身体を捻って避ける。直後、3体目の棍棒。後ろへ跳ぶ。地面へ棍棒が叩きつけられた。
「1匹ん時と全然ちゃうな!」
1体へ続けて攻撃する暇がない。
「まず減らす!」
最初の個体へ走る。膝へ一撃。体勢が崩れる。
「そこ!」
頭へ振る。その瞬間、2体目が横からぶつかってきた。
「ぐっ!」
地面を転がる。
「痛った……!」
立ち上がる。すでに3体目が目の前にいた。
「近い!」
振り下ろされた棍棒を金テコで受ける。ガァンッ!
「重すぎるやろ!」
両腕が痺れる。押し返し、横へ抜ける。
2体が同時に来る。片方をかわし、もう片方の膝へ一撃。
「1匹ずつや!」
傷を負わせた個体へ向かう。頭へ一撃。まだ倒れない。
「倒れろや!」
もう一撃。大型人型が膝をつく。さらに振り下ろした。巨体が倒れる。
「あと2匹!」
横から棍棒が来た。
「うおっ!」
金テコで受ける。ガンッ!身体ごと押される。
「くそっ!」
力任せに押し返し、腹へ一撃。続けて膝。3体目が後ろから来る。田中は横へ逃げた。
「順番に来いや!」
2体が同時に踏み込む。片方を避け、もう片方の腕へ金テコを叩き込んだ。
《グアアアッ!》
「こっちからや!」
膝。頭。もう一度頭。2体目が倒れた。
「あと1匹!」
最後の1体が棍棒を両手で持ち上げる。真正面から振り下ろしてきた。田中は金テコを斜めに構えた。ガァンッ!
「ぐっ!」
腕が痺れる。金テコが押し込まれる。
「おらぁ!」
力任せに弾き返す。巨体が僅かに仰け反った。
「今や!」
横腹。膝。頭。さらに頭。大型人型が倒れた。
「……はぁ」
田中はしばらくその場から動かなかった。
「しんど……」
肩を押さえる。
「3匹はキツいわ」
金テコを持ち直した。
「……あ?」
中央より少し先が曲がっている。
「ひん曲がってるやんけ」
田中は金テコを見てから、収納袋へ目を落とした。
「あ。修理あるやん」
金テコを収納袋へ入れ、修理を選ぶ。
【モクバ D-11 金テコ】
適正価格:23,177円
破損率:10%
修理費:2,318円
「10%か」
「二千ちょいなら直すわ」
修理する。
所持金は179,544円から177,226円になった。
金テコを取り出す。
「おお」
曲がりは消えていた。何度か振ってみる。
「新品やん」
収納袋へ戻す。
「便利やな、これ」
◇
3体の死体も収納した。袋を持ち直す。
「重なってきたな」
70%軽減でも、朝よりはっきり重い。
「もう一個上げたいけど、金ないわ」
スマートフォンを見る。17時10分。
「もうこんな時間か」
収納袋へ手を入れ、ステータスを開いた。
【田中真司】
レベル:7
HP:746/827
MP:175/909
筋力:674
耐久:346
敏捷:421
器用:316
「また上がってるやん」
田中は数字を追う。
「結構上がったな」
肩を回す。
「HPも減ってるし、今日はもうええか」
◇
少し戻ったところで、大きな岩と太い木に挟まれた場所を見つけた。
「ここでええか」
周囲を確認し、毛布を取り出す。スマートフォンを見る。18時40分。もう一度ステータスを開いた。
【田中真司】
レベル:7
HP:746/827
MP:189/909
筋力:674
耐久:346
敏捷:421
器用:316
「結構戻ってんな」
100を残し、89MPを換金する。
890円。
所持金は177,226円から178,116円になった。
【田中真司】
レベル:7
HP:746/827
MP:100/909
筋力:674
耐久:346
敏捷:421
器用:316
「一気に金減ったな」
腹も減っている。カロリーメイトを2箱取り出し、水と一緒に食べる。残り4箱。
「明日足らんかったら買お」
ヘッドライトを取り出す。辺りはすでに暗い。森の奥から何かの鳴き声が聞こえた。
「……寝れるんかな」
修理した金テコも取り出し、すぐ手を伸ばせる場所へ置く。
「明日はもうちょい奥見よ」
田中は毛布へ身体を横たえた。
所持金は178,116円だった。
異世界に来て9日目が終わった。




