↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力換金  作者: ぴよぴよ
18/25

第十八話 借金取り

「お前来いへん気満々やんけ」


「イヤ」


「昨日そんな怖かったん?」


「モリ、イヤ」


「しゃあないな。今日は爺さん置いてくか」


「オレ、ヤド」


「はいはい。宿で待っとけ」


 田中は受付へ向かった。


「爺さん、もう1日泊まるって言うて」


 ガルドが年配の女へ伝える。


《――》


《――》


「ギンカ、イチ」


「1万円な」


 田中は銀貨1枚を支払った。


 所持金は1,910,556円から1,900,556円になった。


 新しい木札を受け取る。


「先に飯食うか」


「メシ」


    ◇


 昨日の朝にも寄った屋台へ向かった。平たいパンに焼いた肉を挟んだものを2つ買う。


「ダイドウカ、ニ」


「2,000円な」


 田中が支払った。


 所持金は1,900,556円から1,898,556円になった。


 食べ終えて宿へ戻る。部屋へ入ると、田中はガルドを見る。


「爺さん、ここで待っといて」


「マツ」


「今日は森来んでええから」


「イカナイ」


「嬉しそうやな」


「イッテラッシャイ」


「まだ言うか」


 田中は収納袋を肩へ掛けた。


「ほな行ってくるわ」


    ◇


 北門を出て、1人で森へ向かった。今日は洞窟には寄らない。そのまま森へ入る。


 田中は作業手袋を着け、収納袋から金テコを取り出した。


「1人やったら気ぃ使わんでええな」


 ほどなくツノウサギを見つける。一撃で仕留め、死体を収納袋へ入れた。次にモリヘビ。頭へ金テコを叩き込み、そのまま収納する。さらにゴブリン2体。金テコで倒し、収納袋へ戻す。


 黒打捌き包丁を取り出し、2体の右耳を切り取って回収した。


「魔石もやな」


 昨日ガルドが何度も切り開いていた場所を思い出す。胸の辺りへ包丁を入れた。


「この辺やったはずやけど」


 少し探る。硬い物が指先に触れた。


「あった」


 魔石を取り出す。2体目はもっと早かった。


 田中はペットボトルを取り出し、2個の魔石を水で洗って収納袋へ入れた。包丁とペットボトルも収納袋へ戻し、再び金テコを取り出す。


    ◇


 昨日より速い。ガルドを安全な場所へ移動させる必要もなければ、魔石を取らせるたびに待つ必要もない。


 ツノウサギ。


 モリヘビ。


 ゴブリン。


 見つけた魔物を順番に倒していく。ゴブリンは倒すたびに金テコを収納し、黒打捌き包丁で右耳を回収した。続けて魔石を取り出し、ペットボトルの水で洗って収納袋へ入れる。使い終わった包丁とペットボトルもその都度収納袋へ戻した。


 ツノウサギとモリヘビは倒したその場で死体ごと収納していく。戦闘へ戻る時には再び金テコを取り出した。


 昼を過ぎた頃、茂みからキバイノシシが姿を現した。


「今日は爺さんおらんで」


 キバイノシシが突進する。田中は横へかわし、頭へ金テコを叩き込んだ。キバイノシシがよろめく。向きを変え、再び突進してきた。


「はい」


 もう一撃。巨体が地面へ崩れた。動かないことを確認し、死体を収納袋へ入れる。


 その後も狩りを続けた。キバイノシシをもう1体仕留め、それも収納袋へ入れる。日が傾き始めたところで切り上げた。


 今日の戦果は、


 ゴブリン6体。


 ツノウサギ5体。


 モリヘビ3体。


 キバイノシシ2体。


 ゴブリンの右耳6個。


 ゴブリンの魔石6個。


 ツノウサギ5体、モリヘビ3体、キバイノシシ2体もすべて収納袋に入っている。


「こんなもんか」


 田中は金テコを収納袋へ戻し、作業手袋を外して入れた。


    ◇


 北門で冒険者証を見せ、収納袋の検査を済ませる。そのまま冒険者ギルドへ向かった。


 買い取り場所で獲物を出していく。


 ツノウサギ5体。


 モリヘビ3体。


 キバイノシシ2体。


 ゴブリンの右耳6個。


 ゴブリンの魔石6個。


 今日はガルドがいない。職員と田中はしばらく顔を見合わせた。


「昨日と同じやつ」


「?」


「そら分からんわな」


 田中はゴブリンの魔石を指差す。次にツノウサギ、モリヘビ、キバイノシシを指差し、そこから何かを取り出す仕草をして自分を指差した。


「魔石。返して」


 職員が少し考える。


《――》


「分からん」


 田中はキバイノシシを指差す。腹の辺りを指し、それから肉を食べる真似をした。


「肉もちょっと」


「……?」


「昨日もやったやん」


 何度か身振りを繰り返した。やがて職員が何か思い出したような顔をする。魔物を指差してから、小さな物を取り出す仕草。次にキバイノシシの肉を指差す。


「そう、それ」


 田中が何度も頷いた。職員もようやく理解したらしい。


    ◇


 しばらく待った。売らなかったゴブリンの魔石6個が戻ってくる。さらに解体された獲物から、


 ツノウサギの魔石5個。


 モリヘビの魔石3個。


 キバイノシシの魔石2個。


 合わせて10個。今日手に入れた魔石は合計16個になった。昨日までの19個と合わせれば35個。


 キバイノシシの肉も大きな包みにされて戻ってきた。昨日と同じくらいの量だ。


 田中は返された魔石16個と肉を収納袋へ入れた。残りを売却する。


 今回の査定額は822,600円だった。


 報酬を受け取る。


 所持金は1,898,556円から2,721,156円になった。


「よし」


 田中はギルドを出た。


    ◇


 そのまま孤児院へ向かおうとして、足が止まった。


「あ」


 昨日はガルドがいた。肉を渡すだけなら身振りでも何とかなるかもしれない。だが向こうから何か言われても、田中には分からない。


「爺さん連れてくか」


 田中は方向を変え、宿へ向かった。


    ◇


 宿のある通りへ入ったところで、足が止まった。


「……何や?」


 入口の扉が壊れている。嫌な予感がした。田中は足を速める。中へ入った。


「……おい」


 店内は滅茶苦茶だった。


 椅子が倒れている。


 机もひっくり返されていた。


 割れた皿や器が床に散らばっている。


 壁際の棚まで倒されていた。


 年配の女が床に散らばった物を片づけている。


「何あったん?」


 女が顔を上げる。田中を見るなり、表情が険しくなった。


《――》


「……分からん」


「爺さん!」


 階段の方へ声を掛ける。少ししてガルドが下りてきた。


「爺さん、大丈夫か?」


「ダイジョウブ」


「これ何あったん?」


 ガルドが壊れた店内を見る。


「オトコ、キタ」


「男?」


「アナタ、サガス」


「俺を?」


「ソウ」


「何人?」


 ガルドは少し考え、指を4本立てた。


「4人か」


「アナタ、イナイ」


「そら狩り行ってたからな」


 ガルドが倒れた机を指差す。


「オトコ、コワス」


「俺がおらんかったから店壊したん?」


「ソウ」


 田中は黙って店内を見回した。


「……あいつらか」


 昨日、孤児院から尾行されていた。結局、宿まで知られていたらしい。


 年配の女が田中へ何か言った。


《――》


「爺さん、何て?」


 ガルドが聞き返す。


《――》


 女の声が強くなる。ガルドが田中を見る。


「アナタ、モウ、トマレナイ」


「俺?」


「ソウ」


「追い出すって?」


「……ソウ」


 田中は女を見る。女は壊れた店内を指差し、さらに何か言った。


《――》


 ガルドが聞く。


「アナタ、イル。マタ、クル」


「俺がおったらまた来るって?」


「ソウ」


 田中はしばらく黙った。今日の宿代も払っている。だが、目の前の惨状を見て文句を言う気にはならなかった。


「……そらそうなるわな」


 田中は木札を取り出し、受付へ置いた。


「悪かったな」


 女は答えない。怒っている。怖がってもいる。田中にはそれ以上何も言えなかった。


「爺さん、荷物ある?」


「ナイ」


「ほな出よ」


 ガルドが田中を見る。


「ヤド?」


「もう泊まられへん」


「……ドウクツ?」


「まだ決まってへんわ」


「ドウクツ、イヤ」


「俺も嫌や」


 田中とガルドは壊れた宿を出た。支払った宿代は戻らなかった。


 所持金は2,721,156円のまま。


    ◇


「とりあえず肉持って行こか」


「コジイン?」


「そう」


 田中とガルドは孤児院へ向かった。近づくにつれ、何か怒鳴る声が聞こえてきた。


「……またおるやんけ」


 孤児院の前に男が4人いた。昨日とは違う顔だ。年配の女が男たちの前に立っている。


《――》


《――》


 ガルドが足を止めた。


「カネ」


「また金?」


「ソウ」


 田中の眉が寄る。


「昨日払ったやろ」


 年配の女が何か訴える。


《――》


 男の1人が怒鳴った。次の瞬間、女の顔を殴った。女が地面へ倒れる。


「おい!」


 田中が走り出した。男たちが振り返る。


「何してんねん!」


 先頭の男が田中の前へ出てくる。


《――》


「爺さん、何て?」


「カエレ」


「嫌や」


 田中は倒れた女を見る。


「昨日の金どうなってん?」


 ガルドが男へ伝える。


《――》


 男が鼻で笑った。


《――》


「何て?」


「キノウ、カネ、シラナイ」


「は?」


「キロク、ナイ」


「記録がない?」


「ソウ」


 田中は男を見る。


「昨日、俺が75万払ったぞ」


「?」


「爺さん。昨日ここで払った金。言うて」


 ガルドが伝える。


《――》


 男が肩をすくめる。


《――》


「何やって?」


「モラッテナイ」


「……は?」


「カリ、ノコル」


「借金残ってる?」


「ソウ」


 倒れていた年配の女が起き上がろうとしながら何か叫ぶ。


《――》


 ガルドが聞き取る。


「キノウ、カネ、ハラッタ」


「そらそうや」


 女がさらに何か言う。


《――》


「オトコ、モッテイッタ」


「昨日の3人が持って帰ったって言うてんの?」


「ソウ」


 男たちは何か言い返す。


《――》


 ガルドの顔が曇った。


「何て?」


「シラナイ。キロク、ナイ。カネ、ハラエ」


 田中は黙った。昨日、750,000円を渡した。これで終わりだと一方的に言った。だが、本当に借金が消えたか確認していない。何かを書いてもらったわけでもない。受け取った男たちが組織へ渡したのかすら分からない。


「……俺、ただ75万渡しただけやんけ」


「?」


「やられたな」


 先頭の男が田中の胸を強く押した。


《――》


「何?」


「カエレ。カネ、カンケイナイ」


「俺が払った金やぞ」


 男がもう一度手を伸ばす。田中はその手首を掴んだ。


「爺さん」


「?」


「こいつらの事務所どこか聞いて」


 ガルドが男へ尋ねる。


《――》


 男が怒鳴り返す。


「イワナイ」


「ほな案内してもらおか」


「?」


 男が手を振りほどこうとした。横から別の男が殴りかかってくる。


「邪魔や」


 田中は拳をかわし、腹へ一発入れた。男が膝から崩れる。残った2人が同時に動く。1人の胸倉を掴み、横へ投げる。もう1人の拳をかわし、腹へ拳を入れた。3人が地面に倒れた。


 腕を掴まれている男の顔が引きつる。


「案内して」


 ガルドが伝える。


《――》


 男が首を横へ振り、何か言い返した。


《――》


 ガルドが田中を見る。


「イヤ。イカナイ」


「爺さんと同じこと言うな」


 田中は腕を離さない。その時、ガルドが収納袋を指差した。


「ニク」


「あ」


 完全に忘れていた。


「先これ渡そ」


 田中は男を掴んだまま孤児院の入口へ戻る。収納袋からキバイノシシの肉を取り出した。年配の女へ差し出す。


「子供らに」


 ガルドが伝えた。


《――》


 女は殴られた頬を押さえながら田中を見る。


《――》


「何て?」


「イマ、ソレ?」


 田中は一瞬黙った。


「……まあ、そうなるわな」


 ガルドが女へもう一度伝える。


「コドモ、ニク」


《――》


 女は困惑しながらも肉を受け取った。その間に、倒れていた3人が身体を起こし始める。田中がそちらを見る。


「まだやる?」


 意味は通じなくても、3人は首を横へ振った。1人が別の1人を肩で支える。もう1人もふらつきながら立ち上がった。3人は田中から距離を取り、そのまま逃げるように通りの向こうへ消えていく。


 田中は見えなくなるまで確認した。


「これでええか」


 捕まえている男を見る。


「ほな事務所」


    ◇


 男を先頭に歩かせる。ガルドがその横。田中は後ろからついて行く。


 しばらくして、男が1軒の建物の前で止まった。周囲の建物より大きい。入口には男が2人立っている。


「ここ?」


「ココ」


「よし」


 田中が腕を離した瞬間、案内してきた男が入口へ走る。


《――!》


 入口の2人が田中を見る。1人が前へ出た。


《――》


「爺さん、何て?」


「カエレ」


「今日はそればっかりやな」


 男が田中の胸を強く押した。田中はその腕を払い、腹へ拳を叩き込んだ。男が崩れる。


 もう1人が殴りかかってきた。拳をかわす。顎へ一発。2人目も倒れた。


「爺さん、離れんなよ」


「……ハナシ?」


「せや。話し合いや」


 田中は扉へ手を掛ける。開いた。中にいた男たちが一斉にこちらを見る。


「……多ない?」


 1階だけでも十数人。


 階段にも男がいる。


 2階の手すりから下を覗いている奴までいる。


 ざっと見ただけでも30人近い。


 扉の前で、ガルドが固まった。


「爺さん?」


 ガルドは両手で頭を抱えた。


「オレ、ツウヤク……」


「知ってるって」


「オレ、ツウヤク……」


「2回言うな」


 奥にいた男が立ち上がる。それを合図にするように、周囲の男たちも次々と動き始めた。


 田中は中へ一歩入った。


「ほな、偉い奴出してもらおか」


異世界生活 6日目

所持金 2,721,156円

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。