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魔力換金  作者: ぴよぴよ
17/25

第十七話 狩り

朝に一度チェックアウトした宿へ戻った頃、まだ日は高かった。田中は受付へ向かった。年配の女がこちらを見る。


「今日も2人な」


 ガルドが伝える。


《――》


《――》


「ギンカ、イチ」


「1万円か。ほなそれで」


 田中は銀貨1枚を支払った。


 所持金は706,916円から696,916円になった。


 木札を受け取り、部屋へ上がる。田中は寝台へ腰を下ろし、窓の外を見た。


「まだ昼か」


「?」


「時間あるな」


 少し考える。


「狩りでも行こか」


「カリ?」


「魔物」


「マモノ」


「そう」


 田中が立ち上がると、ガルドが自分を指差した。


「オレ?」


「爺さんも来るで」


「……オレ、ツウヤク」


「知ってる」


「モリ?」


「そう」


 ガルドが嫌そうな顔をする。


「ツウヤク。モリ、キイテナイ」


「文句だけよう出るな」


「?」


「戦わせへんから大丈夫や」


 田中は収納袋を肩へ掛けた。


「行くで」


    ◇


 町を出て森へ向かう。しばらく歩くと、見覚えのある岩場が見えてきた。


「あ、そうや」


 田中は道を外れた。


「爺さん、こっち」


「ドコ?」


「ちょっと確認」


 少し進むと、前に見つけた洞窟があった。


「あったあった」


「ドウクツ」


 田中は入口から中を見る。


「おーい」


 声が奥へ響く。返事はない。近くの石を拾い、中へ放り込んだ。石が地面を跳ねる音が響く。少し待つ。何も出てこない。


「大丈夫そうやな」


 田中は収納袋からヘッドライトを取り出し、頭につけた。スイッチを押す。白い光が洞窟の奥を照らした。


「よし」


「……」


 ガルドが足を止めている。


「何や?」


「ヒカリ」


「これ?」


「マドウグ?」


「魔道具? ちゃうで」


「チガウ?」


「そう」


 ガルドはヘッドライトをじっと見ていた。


「爺さん、行くで」


「……イク」


 田中は洞窟へ入った。ヘッドライトで壁や地面を照らしながら奥まで確認する。以前と大きく変わった様子はない。昼間に何もいないことを確認しただけで、夜も安全かどうかまでは分からない。


「特に何も無さそうやな」


 洞窟を出る。ヘッドライトを収納袋へ戻すまで、ガルドはずっと目で追っていた。


「そんな気になる?」


「……」


「まあええわ。行こ」


    ◇


 森へ入ってしばらくすると、ゴブリンを2体見つけた。


「爺さん、ここおって」


「マツ」


「そう」


 田中は作業手袋を着け、収納袋から金テコを取り出した。ゴブリンもこちらに気づく。棍棒を持った2体が走ってきた。


 先頭へ踏み込み、金テコを横から叩き込む。1体が倒れた。もう1体の棍棒をかわし、そのまま金テコを振り下ろした。


「終わり」


 金テコを収納袋へ戻す。黒打捌き包丁を取り出し、2体の右耳を切り取って収納袋へ入れた。


 ガルドが近づき、死体を見る。


「マセキ?」


「魔石?」


「ソウ」


「ゴブリンにあんの?」


「アル」


「へえ。どこ?」


「シラナイ」


「知らんのかい。取り方は?」


「シラナイ」


「存在しか知らんのか」


 田中はゴブリンの死体を見下ろした。


「こういうんって、心臓みたいなもんちゃうん?」


「?」


「まあええわ」


 包丁をガルドへ差し出す。


「爺さん、この辺開けてみ」


「オレ?」


「そう」


「オレ、ツウヤク」


「俺も解体屋ちゃうわ。やってみ」


 ガルドは嫌そうな顔で包丁を受け取った。


「シラナイ」


「俺も知らんって」


 胸元へ刃を入れ、少しずつ切り開いていく。しばらくしてガルドの手が止まった。


「……アッタ」


「お?」


 肉の奥に小さな硬い物が見える。ガルドが取り出した。血に濡れた石だった。


「これが魔石?」


「マセキ」


「ほんまにあったな」


 田中が受け取る。魔石も、ガルドの両手も血まみれだった。


「うわ。爺さん手ぇ真っ赤やん」


「……」


「ちょい待ち」


 田中は収納袋から水の入ったペットボトルを取り出した。ガルドが固まった。


「何や?」


「……」


 透明な容器を凝視している。


「ミズ?」


「水やで」


「ガラス?」


「ちゃうで」


 田中が軽く握る。容器がへこんだ。


「……!」


「ペットボトル」


「ペット……?」


「名前はええから手ぇ出して」


 ガルドはまだボトルを見ていた。


「爺さん、手」


 ようやく両手を差し出す。田中は魔石へ水を掛けて血を流し、そのままガルドの手も洗わせた。


「ヤワラカイ。トウメイ」


「そこまで分かるんやな」


 洗った魔石を収納袋へ入れる。


「ほなもう1匹」


「……マタ?」


「もう場所分かったやろ」


「オレ、ツウヤク」


「はいはい」


 2体目からも魔石を取り出した。田中は2個目の魔石とガルドの手を水で洗い、魔石を収納袋へ入れた。


 ガルドが包丁を突き返してくる。


「モウ、イヤ」


「まだ始まったとこやで」


「……」


 田中は包丁とペットボトルを収納袋へ戻し、再び金テコを取り出した。


    ◇


 その後、ツノウサギを2体、モリヘビを1体仕留めた。さらにキバイノシシを1体見つけ、突進をかわして金テコを2度叩き込み、倒した。田中はツノウサギ2体、モリヘビ1体、キバイノシシ1体を死体ごと収納袋へ入れた。


 さらに進むと、今度はゴブリン3体が現れた。田中は金テコで3体を倒す。金テコを収納袋へ戻し、黒打捌き包丁を取り出した。右耳3個を切り取り、収納袋へ入れる。


「爺さん」


「……」


 田中はそのまま包丁を差し出した。


「魔石」


「サンタイ?」


「3体」


「オレ、ツウヤク」


「もう諦めろ」


「イヤダ」


「はいはい」


 ガルドが3体から魔石を取り出した。田中は収納袋からペットボトルを取り出し、魔石3個とガルドの手を水で洗った。魔石3個、包丁、ペットボトルを収納袋へ戻す。再び金テコを取り出して先へ進んだ。


    ◇


 ツノウサギを1体、モリヘビを1体仕留める。さらにキバイノシシを1体倒した。3体とも死体ごと収納袋へ入れる。


 続いてゴブリン3体を見つけた。田中は金テコで倒し、金テコを収納袋へ戻す。黒打捌き包丁を取り出し、右耳3個を切り取って収納袋へ入れた。そのまま包丁をガルドへ渡す。


「また3体」


「……イヤダ」


「これ終わったらもうちょいや」


「モウチョイ、イヤ」


「文句増えてんな」


 ガルドが3体から魔石を取り出す。田中はペットボトルを取り出し、魔石3個とガルドの手を水で洗った。魔石3個、包丁、ペットボトルを収納袋へ戻した。再び金テコを取り出す。


 その後、ツノウサギ2体とモリヘビ1体を仕留め、すべて死体ごと収納袋へ入れた。


 ここまでで、


 ゴブリン8体。


 ツノウサギ5体。


 モリヘビ3体。


 キバイノシシ2体。


 ゴブリンの右耳8個。


 ゴブリンの魔石8個。


「もうちょいいけるな」


「カエル?」


「もうちょい」


「……」


「何やその顔」


    ◇


 森の中を進んでいると、前方の茂みが大きく揺れた。


「来たな」


 3体目のキバイノシシが姿を現した。田中は金テコを構える。


「爺さん、離れといて」


「ワカル」


 ガルドが木の方へ下がる。キバイノシシが頭を振った。田中は正面で待つ。だがキバイノシシは田中ではなく横へ顔を向けた。その先にガルドがいる。


「……おい」


 キバイノシシが地面を蹴った。


「爺さん、動くな!」


「?」


 キバイノシシが走り出した。一直線にガルドへ向かう。ガルドの顔が引きつった。


「……!」


「こっちや!」


 田中が横から走り込む。キバイノシシがガルドへ届く直前、金テコを頭へ叩き込んだ。巨体が大きくよろめき、そのまま横倒しになった。勢いのまま地面を滑る。ガルドの手前で止まった。


「爺さん、大丈夫か!」


 ガルドは固まっていた。


「怪我してへん?」


「……」


 腕を見る。脚を見る。ぶつかってはいない。


 キバイノシシが身体を起こした。


「まだか」


 今度は田中へ向きを変える。突進してきた。田中は横へかわし、頭から首へ金テコを叩き込んだ。キバイノシシが再び崩れる。動かなくなった。


 田中はキバイノシシを収納袋へ入れ、すぐガルドへ戻った。


「ほんまに怪我ない?」


「……カエル」


「痛いとこは?」


「カエル」


「爺さん?」


「カエル」


「分かった分かった。今日は終わり」


「カエル」


「それしか言わんやん」


「イヤダ」


「何が?」


「モリ、イヤダ」


「はいはい。帰ろ」


 田中は金テコを収納袋へ戻した。黒打捌き包丁も収納されていることを確認する。作業手袋を外して収納袋へ入れた。そのまま狩りを切り上げた。


 今日の戦果は、


 ゴブリン8体。


 ツノウサギ5体。


 モリヘビ3体。


 キバイノシシ3体。


 ゴブリンの右耳8個。


 ゴブリンの魔石8個。


 ツノウサギ5体、モリヘビ3体、キバイノシシ3体はすべて収納袋に入っている。


    ◇


 北門へ戻る頃には日が傾いていた。田中は冒険者証を見せ、収納袋の検査を済ませる。問題なく町へ入った。


「腹減ったな」


「メシ?」


「その前にギルドや」


「……」


「魔石取らせへんから」


「ホント?」


「ほんま」


    ◇


 冒険者ギルドへ入る。入口を通ったところで、何人かがこちらを見た。


「ん?」


 前日の乱闘にいた職員も田中を見ている。別の冒険者も何人か視線を向けてきた。


「何やねん」


「?」


「いや、ええわ」


 誰も田中を止めない。田中はそのまま買い取り場所へ向かった。


 収納袋から獲物を出していく。


 ツノウサギ5体。


 モリヘビ3体。


 ゴブリン右耳8個。


 キバイノシシ3体。


 最後にゴブリンの魔石8個。


 職員が魔石を見る。


《――》


「爺さん、何て?」


「マセキ、ウル?」


「これも売れるん?」


「ウレル」


 田中は魔石を見る。


「いや、魔石は全部持っとこ」


「ゼンブ?」


「何に使うもんかも知らんしな」


「?」


「まあええ。売らん」


 田中はツノウサギ、モリヘビ、キバイノシシを順番に指差した。


「爺さん。こいつらにも魔石あんのか聞いて」


 ガルドが職員へ尋ねる。


《――》


 職員が答えた。


《――》


「アル」


「全部?」


 ガルドが聞き返す。


《――》


「アル」


「ほなこいつらの魔石も全部返して」


 ガルドが伝える。


《――》


 職員が何か説明する。


「マセキ、トル。ネダン、サガル」


「魔石抜いた分、安なるんやな」


「ソウ」


「それでええ」


 田中はキバイノシシを指差した。


「あと肉もちょっと欲しい」


「ニク?」


「子供らに持ってく」


「?」


「まあそこはええ」


 田中は両腕で抱えるような仕草をした。


「肉、これぐらい。返して」


 ガルドが職員へ伝える。


《――》


 職員が頷いた。


    ◇


 査定と解体を待っている間も、何人かの視線を感じた。


「昨日のせいか?」


「?」


「何でもない」


 結局、乱闘について呼び止められることはなかった。


 しばらくして職員が戻ってくる。売らなかったゴブリンの魔石8個も返された。さらに解体された獲物から、


 ツノウサギの魔石5個。


 モリヘビの魔石3個。


 キバイノシシの魔石3個。


 合わせて11個が返される。魔石は合計19個。キバイノシシの肉も大きな包みにされて戻ってきた。


「結構あるな」


 田中の感覚では10キロほどありそうだった。


 田中は返された魔石19個とキバイノシシの肉を収納袋へ入れた。残りの素材を売却する。魔石と肉を返してもらった分、丸ごと売る場合より査定額は下がった。


 今回の買い取り額は1,210,800円。報酬を受け取る。


 所持金は696,916円から1,907,716円になった。


 収納袋に残った今回の戦利品は、


 ゴブリンの魔石8個。


 ツノウサギの魔石5個。


 モリヘビの魔石3個。


 キバイノシシの魔石3個。


 合計19個。それとキバイノシシの肉。


「よし」


 田中は収納袋を肩へ掛けた。


「爺さん、行くで」


「メシ?」


「その前に寄るとこある」


「……ドコ?」


「孤児院」


    ◇


 夕暮れの町を歩き、昼間の孤児院へ戻った。年配の女が田中とガルドを見る。


《――》


「何て?」


「マタ、キタ?」


「また来たって?」


「ソウ」


「これ渡しに来ただけや」


 田中は収納袋からキバイノシシの肉を取り出した。大きな包みを見て、女が目を丸くする。


「爺さん。子供らに食わせたってって言うて」


 ガルドが伝える。


《――》


 女が慌てて首を振った。


《――》


「何?」


「モラエナイ」


「ええって。持って帰っても俺ら2人じゃ食い切られへん」


「?」


「もう渡しといて」


 ガルドがもう一度伝える。


《――》


 女は肉を受け取ると、深く頭を下げた。


「またそれか」


「アリガトウ」


「はいはい」


 奥から何人かの子供が肉を覗いている。


「今日は肉食えるな」


「?」


「何でもない」


 田中は軽く手を上げた。


「ほな」


 収納袋に残った新しい戦利品は魔石19個だけになった。


    ◇


「今度こそ飯や」


「メシ!」


「爺さんも腹減ってたんやな」


「ヘッタ」


 田中とガルドは食堂へ入った。店員が近づいてくる。


「爺さん。肉、パン、スープ。2人分」


 ガルドが店員へ伝える。


《――》


 しばらくして、肉料理とパン、スープが2人分運ばれてきた。食べ終えると、ガルドが代金を確認した。


《――》


「ダイドウカ、ヨン」


「4,000円な」


 田中は大銅貨4枚を支払った。


 所持金は1,907,716円から1,903,716円になった。


「やっと腹いっぱいや」


「ウマイ」


「爺さん、そこは覚えるん早いな」


    ◇


 食事を終え、2人は宿へ戻った。すでに宿代は昼に払ってある。年配の女へ軽く手を上げ、そのまま部屋へ上がる。


「今日は疲れたな」


「ツカレタ」


「爺さん戦ってへんやろ」


「モリ、イヤダ」


「それはもう分かった」


 田中は寝台へ横になった。ガルドも反対側の寝台へ座る。


「おやすみ」


「オヤスミ」


 その日はそのまま眠った。


    ◇


 翌朝。田中が目を覚ますと、ガルドもすでに起きていた。


「爺さん、先下行っといて」


「シタ?」


「そう。下。待っといて」


「マツ」


 ガルドが部屋を出る。扉が閉まるのを確認してから、田中はステータスを開いた。


 田中真司

 Lv5

 HP 786/786

 MP 784/784

 筋力 597

 耐久 291

 敏捷 359

 器用 281

 固有スキル 魔力換金


「レベルはそのままか」


 MPは満タンだった。


「ほな恒例のやつやな」


 田中は収納袋へ手を入れる。


「100残し」


 魔力換金を使った。684MP。袋の中へ入れた掌から硬貨が出て、そのまま袋内へ落ちていく。


 6,840円。


 所持金は1,903,716円から1,910,556円になった。


 MP 100/784。


「よし」


 田中は収納袋から手を抜いた。


    ◇


 1階へ降りる。ガルドが受付近くで待っていた。田中は木札を年配の女へ返した。


「ほな今日も行こか」


「ドコ?」


「狩り」


「イヤ」


「行くで」


「イカナイ」


「狩り行くで」


「ムリ」


「行くで」


 ガルドは田中をじっと見た。


「イッテラッシャイ」


「お前来いへん気満々やんけ」


異世界生活 6日目

所持金 1,910,556円

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