第十二話 洞窟
北門を抜けた田中は、昨日見つけた洞窟を目指して森へ向かった。
「まずあそこ調べよ」
安全に使えるなら宿代を浮かせられる。
ただ、昨日確認したのは入口から見える範囲だけだ。何かが住んでいる可能性もある。
しばらく歩くと、木々の向こうに岩肌が見えてきた。
「あった」
洞窟の入口へ近づき、周囲を見る。
地面には何かの足跡らしいものもあるが、新しいのか古いのか田中には分からない。
収納袋からスコップを取り出す。
「おーい」
洞窟へ向かって声を出した。
返事はない。
石を拾って奥へ投げる。
カンッ、と音が響いた。
少し待っても何も出てこない。
「行くか」
洞窟へ入る。
入口付近は外の光が届くが、少し進むと急に暗くなった。
「暗っ」
スマートフォンのライトでも照らせるが、戦うことになれば片手が塞がる。
「頭につけるやつ買うか」
通販を開き、ヘッドライトを探す。
ジェントス、GTR-S31D。
1,738円。
「これでええわ」
購入する。
所持金261,400円から1,738円。
残り259,662円。
収納袋から取り出して頭へ装着し、点灯する。
「おお、ええやん」
顔を向けた先が照らされる。
両手でスコップを握ったまま進める。
洞窟は途中で少し曲がっていた。
その先を照らす。
「……骨?」
地面に動物らしき骨が散らばっている。
壁際には枯れ草のようなものも固まっていた。
「なんか住んでたんか?」
さらに進む。
奥へ行くほど狭くなり、やがて行き止まりになった。
「ここまでか」
思っていたより浅い。
入口以外に大型の生き物が出入りできそうな場所も見当たらない。
今は何もいない。
だが、夜になれば何かが戻ってくる可能性はある。
「泊まるんは、もうちょい見てからやな」
田中は洞窟を出た。
◇
森を歩き始めて間もなく、草むらからツノウサギが飛び出した。
「おっ」
スコップを振る。
一撃で倒れた。
収納袋へ入れる。
その後も2匹見つけ、どちらも仕留めた。
「今日はようおるな」
さらに進む。
前方の茂みが大きく揺れた。
低い鳴き声。
「今度はなんや」
出てきたのはキバイノシシだった。
昨日倒した成獣と同じくらいだが、少し小ぶりに見える。
それでも日本で見る猪とは比べものにならない。太い胴体に短く頑丈な脚。目の前に立つと、軽自動車でも相手にしているような圧迫感がある。
「またこいつか」
キバイノシシが突進してくる。
横へかわし、すれ違いざまにスコップを叩き込む。
キバイノシシが向きを変える。
もう一度突進。
「来い」
かわして頭へ一撃。
さらに叩き込む。
キバイノシシが倒れた。
「よし」
田中は死体を見る。
「今800Lあるし、これ入るんちゃうか?」
収納袋へ入れる。
死体が消えた。
「お、入った」
キバイノシシ1匹を丸ごと収納できた。
「上げといて正解やったな」
そのまま狩りを続ける。
1時間もしないうちに、また大きな物音がした。
「また?」
現れたのはキバイノシシ。
今度は昨日の成獣とほぼ同じくらいある。
「今日は多いな」
突進をかわす。
スコップを振り下ろす。
キバイノシシがよろめく。
もう一度。
さらに一撃。
動かなくなった。
「2匹目」
収納袋へ入れようとする。
入らない。
「……あかんか」
もう一度試す。
やはり無理だった。
袋にはすでに大型のキバイノシシ1匹とツノウサギ3匹、普段の荷物も入っている。
田中は容量を見る。
容量Lv5。
800L。
次はLv6。
1600L。
必要金額160,000円。
「……上げたらええやん」
今の所持金は259,662円。
強化しても10万円近く残る。
飯や宿代程度なら、必要になれば魔力換金でも作れる。
それより、容量不足で獲物を持って帰れない方が勿体ない。
「強化」
160,000円を支払う。
容量Lv6。
1600L。
残金99,662円。
「これでどうや」
2匹目のキバイノシシを収納する。
今度は入った。
「おお、2匹いけた」
田中はそのまま狩りを続けた。
◇
ツノウサギを2匹。
モリヘビを1匹。
ゴブリン4体。
ゴブリンは倒したあと、黒打捌き包丁で右耳を切り取った。
「今日はほんまよう出るな」
さらに進んだところで、また茂みが大きく揺れる。
「嘘やろ」
キバイノシシだった。
先ほどの2匹より少し小さい。
「3匹目やぞ」
キバイノシシが突進してくる。
田中はかわし、スコップを振り下ろした。
鈍い音。
キバイノシシがまだ動く。
「しぶといな」
首へ叩き込む。
さらに頭へ一撃。
キバイノシシが倒れた。
「よし」
スコップを持ち上げる。
「……またか」
柄が大きく曲がっている。
先端も歪んでいた。
「昨日直したばっかやぞ」
田中は修理機能を開き、スコップを対象にする。
表示が出る。
適正価格 2,400円
破損率 90%
修理費 2,160円
「また90%かい」
田中は修理する。
2,160円。
所持金99,662円から97,502円。
曲がっていた柄が元へ戻り、歪んでいた先端も直った。
何度か振って確認する。
「こいつでキバイノシシ何匹も殴るん、やっぱ無理あるな」
朝に見た80,000円の武器を思い出す。
「武器買わなあかんな」
倒したキバイノシシを収納袋へ入れようとする。
入らない。
「さすがに今は無理か」
袋にはすでに大型のキバイノシシ2匹と、ツノウサギやモリヘビ、道具類が入っている。
田中は木2本とロープを取り出した。棒引きを組み、キバイノシシを載せる。
「一回洞窟戻ろ」
棒引きを引いて洞窟へ戻った。
◇
洞窟へ着くと、棒引きからキバイノシシを降ろした。
さらに収納袋からキバイノシシを出す。
1匹。
2匹。
「これで3匹」
ツノウサギ5匹。
モリヘビ1匹。
ゴブリンの右耳4つ。
それらも洞窟の奥寄りへまとめて置いた。
狩りで使わない荷物も一部降ろす。
「持ち歩く意味ないしな」
袋に残すのは、スコップ、黒打捌き包丁、水など必要な物だけ。
1600Lの収納袋をほぼ空にした。
木2本とロープも洞窟へ置いておく。
「帰りにまた使お」
腹が鳴る。
「昼にするか」
開封済みの500mlボトルを取り出して水を飲む。
通販を開いた。
カロリーメイト、ブロック、チョコレート味4本入り。
237円。
「これでええわ」
購入。
所持金97,502円から237円。
残り97,265円。
食べながら洞窟の入口を見る。
今のところ何も来ない。
「ここ使えたら便利やな」
狩った獲物を一旦置ける。
雨も避けられる。
だが、数時間何も起きなかっただけで安全とは決められない。
「夜も大丈夫か見んとな」
食べ終わる。水を飲み、立ち上がった。
「ほな午後の部」
獲物を洞窟へ残し、軽くなった収納袋を持って森へ戻った。
◇
午後も獲物が続いた。
ツノウサギ3匹。
モリヘビ1匹。
ゴブリン5体。
「9匹目」
右耳を切り取る。
午前の分と合わせて9つ。
小型の獲物は収納袋へ入れていく。
キバイノシシ3匹を洞窟へ置いてきたため、容量には余裕がある。
さらに進む。
ガサガサッ。
「……またキバイノシシちゃうやろな」
キバイノシシだった。
「ほんまにまたかい」
4匹目。
今日の中でも大きい。
キバイノシシが突進する。
田中は横へかわした。
真正面の頭ばかりを狙わず、首へスコップを叩き込む。
キバイノシシが向きを変える。
もう一度突進。
かわして肩へ一撃。
よろめいたところへさらに叩き込む。
キバイノシシが倒れた。
「4匹」
スコップを見る。
「今度は大丈夫やな」
キバイノシシを収納袋へ入れる。
ほぼ空にしてきたため、問題なく入った。
そのまま少し進む。
また茂みが揺れた。
「……いやいや」
キバイノシシが姿を現した。
「5匹目?」
今度は少し小ぶりだ。
「今日どうなってんねん」
キバイノシシが向かってくる。
「入れ食いやんけ」
突進を避ける。
肩へ一撃。
向きを変えたところでもう一撃。
最後に頭へ叩き込む。
倒れた。
「5匹目」
収納する。
4匹目の大きなキバイノシシと一緒でも入った。
「袋空にしといて正解やったな」
田中は周囲を見る。
まだ探せば出てきそうな気がする。
だが日も傾き始めていた。
「もうええわ。帰ろ」
洞窟へ戻った。
◇
洞窟には午前中のキバイノシシ3匹。
収納袋には午後のキバイノシシ2匹と小型の獲物。
田中は袋の中身を一度すべて出し、5匹のキバイノシシを並べた。
「全部持って帰らなあかんな」
改めて並べると、とにかくでかい。
田中の知っている日本の猪とは明らかに体格が違う。
今日の中でも特に大きい2匹を外へ分ける。
残る3匹はそれより小さい。
「こいつら3匹なら……」
田中はしゃがんでキバイノシシを見る。胴の長さと太さを目で追った。
仕事柄、物の寸法を目測することには慣れている。
「こいつでも300Lくらいあるんちゃうか。こっちはもうちょい小さいか」
もちろん正確な数字ではない。
ただ、目の前のキバイノシシは日本で見る猪より遥かに大きい。
特に大きな2匹は、胴だけ見ても相当な太さがある。
「小さい方3匹で1000L前後……そんなもんか?」
目の前に3匹並べると、それでも妙な感じがする。
「……こんなん3匹入るんか?」
そこで以前、容量50Lの時に長いスコップを収納できたことを思い出した。
「ああ、箱ちゃうもんな」
長さは関係なかった。
収納袋が使うのは、収納した物そのものが占める容量だ。
キバイノシシを四角い箱へ入れた時にできる、背中の上や腹の下、脚の間の何もない空間まで使ったことにはならない。
「見た目の縦、横、高さ掛けるんとちゃうわ」
正確な容量は分からない。
実際に入るか試す方が早い。
「これから獲物見たら、何Lくらいか考えた方がええな」
小さい方から収納する。
1匹。
2匹。
3匹。
すべて入った。
「よし」
続いてツノウサギ8匹、モリヘビ2匹、ゴブリンの右耳9つ、水や道具を見る。
「まだ入るな」
小型の獲物や必要な荷物を順に収納していく。
1600Lの容量にはまだ余裕がある。
だが、大きなキバイノシシをさらに1匹入れようとすると入らなかった。
「4匹は無理か」
田中は大きなキバイノシシを外へ戻す。
「ほな3匹までやな」
容量には余裕が残っているため、ツノウサギ、モリヘビ、ゴブリンの耳、水、道具類はすべて収納できた。
外に残ったのは、大きなキバイノシシ2匹だけ。
「これなら分かりやすいわ」
田中は2匹を棒引きへ載せる。
問題は容量ではなく重量だった。
収納袋に入れた3匹を見る。
「こいつら、何キロあるんやろ」
日本の猪とは明らかに大きい。
小さい方でも、100kg程度では済まないように見える。
「300キロ……いや、もっとあるんか?」
正確な重量は分からない。
ただ、数百kg級でもおかしくない体格だ。
田中は重量軽減を見る。
重量軽減Lv6。
50%軽減。
「仮に1匹300キロでも、3匹で900キロ。半分で450キロか」
「……そら重いわ」
実際の重量が300kgなのか、それ以上なのかは分からない。
だが50%軽減されても、とんでもない重量なのは間違いない。
「重い方を袋に入れといて正解やな」
大きな2匹はさらに重そうだ。
それを棒引きで引かなければならない。
「これで全部やな」
洞窟の中を確認する。
残っている物はない。
「よし」
収納袋を担ぐ。
「重っ」
さらに棒引きを握る。
引く。
ズズッ。
「……これも重い」
袋の中には数百kg級のキバイノシシ3匹。
外では、それ以上に大きいキバイノシシ2匹を引く。
「そら重いわな」
数歩進んだところで田中は止まった。
「……そういや」
今日はかなりの数を倒した。
それなのに、レベルを一度も確認していない。
「レベルどうなった?」
ステータスを開く。
Lv5。
「……5?」
田中は目を止めた。
「俺、1やったよな?」
最後にレベルを確認した時はLv1だった。
その時点から、自分で金を払って能力強化もしている。
前回確認していた能力値を思い返す。
Lv1。
HP 750
最大MP 750
筋力 350
耐久 270
敏捷 325
器用 250
そして今。
Lv5。
HP 786
最大MP 784
筋力 383
耐久 291
敏捷 359
器用 281
「全部上がっとるやん」
HPは750から786。
最大MPは750から784。
筋力は350から383。
耐久は270から291。
敏捷は325から359。
器用は250から281。
「いつの間に4つも上がったんや」
Lv2、Lv3、Lv4になった瞬間は見ていない。
どの魔物を倒した時に上がったのかも分からない。
「今日だけでも結構倒したもんな」
田中はもう一度ステータスを見る。
MPには現在値と最大値がある。
今朝は750まで回復していたが、その直後に650MPを魔力換金して100まで減らしている。
それから町を歩き、森まで移動し、洞窟を調べ、何時間も狩りをしている間にもMPは回復している。
さらに途中でレベルまで上がっている。
今の最大MPは784。
だが、いつレベルが上がったのかも分からない以上、現在MPがどう動いたのかまでは田中にも分からない。
「最大は784になったんやな」
現在MPの正確な増減はひとまず置いておく。
今確認したかったのは、レベルと能力がどれだけ上がったかだ。
「筋力は350から383か」
33上がっている。
それでも今の荷物は重い。
収納袋には数百kg級のキバイノシシが3匹。
50%軽減されているとはいえ、それだけで相当な重量になる。
さらに棒引きには、それ以上に大きなキバイノシシ2匹が載っている。
「レベル上がったくらいじゃ足らんな」
田中は能力強化を開いた。
筋力。
現在383。
筋力は以前1回強化している。
次の強化費は20,000円。
「2万か」
所持金97,265円。
「これくらいならええわ」
強化する。
所持金77,265円。
田中はすぐ筋力を確認する。
筋力 383
↓
筋力 478
「おお」
腕へ力を入れる。
自分の身体なのに、さっきまでとは力の入り方が違う。
「383から478」
収納袋を担ぎ直す。
「おっ」
重いことは重い。
だが、さっきより明らかに楽だ。
棒引きを握る。
引く。
ズズッ。
「全然ちゃうやん」
そのまま歩く。
十数歩。
「……でも重いな」
楽にはなった。
それでも収納袋には数百kg級のキバイノシシ3匹。
後ろではさらに大きなキバイノシシ2匹を引いている。
このまま町まで戻らなければならない。
田中はまた止まった。
「もう1回いけるやろ」
能力強化を開く。
筋力。
次の強化費40,000円。
「4万か」
所持金77,265円。
払えば37,265円になる。
少し前なら迷っていた。
だが今日はキバイノシシを5匹も仕留めている。
昨日、成獣1匹が450,000円になったことも知っている。
「この獲物売るんやし、ええやろ」
「強化」
40,000円を支払う。
所持金37,265円。
筋力を確認する。
筋力 478
↓
筋力 597
「597」
田中は最初にステータスを見た時の数字を思い出した。
筋力280。
最初の有料強化。
280から350。
そこからレベルアップで383。
2回目の強化で478。
3回目で597。
「280から597か」
倍を超えている。
「そら違うわ」
収納袋を担ぐ。
「おお……」
まだ重い。
だが、さっきまでとは明らかに違う。
棒引きを握る。
引く。
ズズッ。
「これならいけるわ」
足が進む。
「能力強化、便利すぎるな」
金を払えば目に見えて身体能力が上がる。
しかもレベルアップでも勝手に伸びている。
「金稼いだら、まだ強なれるんか」
次の強化は今は見ない。
「とりあえず帰ろ」
田中は大きなキバイノシシ2匹を載せた棒引きを引いて森を出た。
◇
北門へ近づくにつれ、人の視線が集まった。
棒引きには大きなキバイノシシ2匹。
《――》
《――》
「見るわな」
田中は冒険者証を見せる。
収納袋も検査台へ置く。
衛兵が表示を確認した。
動きが止まる。
もう一度表示を見る。
《――》
「なんや?」
衛兵は田中を見る。
それから棒引きを見る。
さらに収納袋の表示へ目を戻した。
《――》
何を言っているのかは分からない。
だが驚いていることだけは分かる。
「行ってええんやな」
止められなかったので町へ入る。
そのままギルドへ向かった。
◇
ギルドへ着き、棒引きを外へ置く。
受付へ向かう。
昨日まで対応していた受付嬢がいた。
順番を待ち、自分の番になる。
田中は冒険者証を見せてから、自分の耳と口を指差した。
「翻訳、頼むわ」
当然、その言葉は通じない。
だが受付嬢はすぐに意味を察したようだった。
近くの職員へ声をかける。
《――》
しばらくして、別の職員が翻訳魔道具を持ってきた。
受付へ置き、作動させる。
周囲の言葉に意味が戻る。
「今日も持ってきたで」
「討伐した魔物ですか?」
「せや」
「どのくらいですか?」
「キバイノシシ5匹」
受付嬢の表情が止まった。
「……5匹?」
「5匹」
「すべて今日討伐したものですか?」
「今日やで」
受付嬢が棒引きを見る。
「外に2匹ある」
「残りは?」
「袋」
「3匹も?」
「小さい方3匹、何とか入ったわ」
受付嬢が収納袋を見る。
「ほかにもツノウサギとか蛇とか、ゴブリンの耳もあるで」
受付嬢が翻訳魔道具を手に取った。
「査定場所へ移動します」
「それも持ってくんやな」
「はい。これがなければ田中さんとは会話できませんから」
「そらそうか」
受付嬢と一緒に査定場所へ移動する。
田中は収納袋からキバイノシシを出した。
1匹。
2匹。
3匹。
周囲にいた職員がこちらを見る。
《――》
《――》
「外の2匹の方がでかいで」
職員が確認へ向かった。
小型の獲物も並べる。
ツノウサギ8匹。
モリヘビ2匹。
ゴブリンの右耳9つ。
「今日はほんま入れ食いやったわ」
「……かなりの量ですね」
「自分でもそう思う」
査定が始まった。
◇
しばらくして受付嬢が戻ってきた。
「査定が終わりました」
「なんぼ?」
「ツノウサギ8匹で銀貨2枚と大銅貨4枚です」
24,000円。
「モリヘビ2匹で大銅貨8枚です」
8,000円。
「ゴブリン9体分の討伐報酬が銅貨9枚です」
900円。
そしてキバイノシシ。
「キバイノシシは5匹すべて成獣として買い取ります」
「お」
「最も大きな個体が大銀貨4枚と銀貨5枚です」
450,000円。
「もう1匹も同額です」
450,000円。
「次が大銀貨4枚と銀貨3枚」
430,000円。
「次が大銀貨4枚と銀貨2枚」
420,000円。
「最後が大銀貨4枚です」
400,000円。
キバイノシシだけで2,150,000円。
ツノウサギ24,000円。
モリヘビ8,000円。
ゴブリン900円。
合計2,182,900円。
「……200万超えた?」
「合計は金貨2枚、大銀貨1枚、銀貨8枚、大銅貨2枚、銅貨9枚です」
「マジか」
金貨2枚。
初めて自分の報酬として金貨を見る。
「1日で218万……」
「何がですか?」
「いや、なんでもない」
昨日は560,200円。
今日は2,182,900円。
「冒険者、ボロ儲けやん」
「はい?」
「こっちの話」
田中の口元が緩む。
狩りをしたのはまだ2日。
昨日も大金。
今日は金貨2枚を超えた。
「これ、日本で働くより全然ええやん」
今朝は80,000円の武器を高いと思った。
重量軽減Lv7の320,000円にも迷った。
今日は容量へ160,000円。
筋力にも60,000円使った。
それでも一気に取り返した。
「楽勝やな」
完全に気が大きくなっていた。
報酬を受け取る。
査定前の所持金は37,265円。
そこへ2,182,900円。
所持金2,220,165円。
「222万……」
硬貨を収納袋へ入れる。
周囲の視線が集まっていた。
驚いて見る者。
大量の獲物を見ている者。
収納袋を見ている者。
そして、田中が受け取った金貨をじっと見ている者。
男が隣の男へ何か囁く。
《――》
《――》
別の卓からも何人かがこちらを見ていた。
「なんや?」
田中が見ると、数人が目を逸らした。
「変な奴らやな」
田中は気にせずギルドを出た。
◇
外で棒引きを解体する。
木2本とロープを収納袋へ戻す。
「武器買って、重量も上げよかな」
80,000円。
重量軽減Lv7は320,000円。
両方払っても十分残る。
「今日みたいなん続いたら金なんか余るやろ」
田中は歩き出した。
しばらくして振り返る。
「……ん?」
人混みの向こう。
さっきギルドでこちらを見ていた男がいる。
もう1人。
少し離れて歩いている。
田中は前を向いた。
角を曲がる。
しばらくしてもう一度振り返る。
同じ2人が曲がってきた。
「……またか」
歩く。
2人もついてくる。
「今度はなんやねん」
今日の報酬を思い出す。
金貨2枚。
それをギルドの中で受け取った。
収納袋へ入れるところまで見られている。
「……金か?」
田中はようやく気づいた。
「そら狙う奴もおるか」
だが、不安になるより先に笑いが出た。
昨日と今日の成功で完全に調子に乗っている。
しかも、ついさっき筋力をさらに2回強化したばかりだ。
「金欲しいんやったら、自分で狩ったらええのにな」
男たちはまだついてくる。
田中は収納袋の中のスコップを意識した。
「先に手ぇ出してくんなよ」
そのまま歩き続けた。
異世界生活 3日目
所持金 2,220,165円




