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47歳営業マンが幼児から始める異世界中古武具店~刀で魔物を倒し、正直商売で客も商売敵も救います~  作者: 田島久護


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第二十三話 岩石トカゲの赤い瞳

 アレックスとエルシドさんがダンジョンへ同行した翌朝。


持ち帰った薬草は、母の薬に使う分と、素材のまま売る分に分けた。


問題は、使い道の決まっていない岩石トカゲの牙と赤い球である。


「牙は硬いが、熱を加えると細かく割れちまう」


 ガノさんが、試しに削り取った小さな欠片を見せてくれた。


「これ以上試すと、素材そのものを駄目にしそうだ」

「なら、分からないまま加工するのはやめよう」


 素材を一つ無駄にすれば、それだけアレックスへ返せる利益も減る。


「こっちの赤い球は、ガラスに近いようじゃな」


 祖父が光へ透かして確かめる。


「だが、わしらはガラス職人ではない。溶かせたとしても、きれいな形にはできんじゃろう」

「それなら、ガラスを扱える工房に相談した方がいいね」


「うちの仕事を、ほかの店へ渡すのか?」


 イノさんの問いに、俺は首を横へ振った。


「加工できないのに無理をすれば、素材を壊すだけだよ。ガラス職人には加工の報酬を払って、うちは商品を考えて、品質を確かめて売る。仕事を分けた方が、失敗も少ないと思う」

「なるほどな。ガラスの部品を使った金物なら、俺たちにも仕事は残る」


「そういうこと」


 何を作るかが決まれば、必要な金具や台座はガノさんたちに頼める。


けれど、肝心の商品が思いつかない。


「おはようございまーす!」


 開店前の店先から、よく通る声が聞こえた。


赤いベレー帽が入口からのぞく。


「セシリアさん?」

「おはよう、ヒサミツくん。ちゃんと覚えていたのね」


「その帽子と引換券は、なかなか忘れられないよ」

「どういう意味よ、それ」


 セシリアさんは頬を膨らませながら、赤い帽子を押さえた。


「今日はどうしたんですか?」

「ヤドムシの報酬が用意できたから、迎えに来たの。あの引換券を持って、ギルドへ来てもらえる?」


「分かりました、準備します。母がお茶を用意してくれたので、飲んで待っていてください」


 俺が答えると、セシリアさんの視線がテーブルの上で止まった。


「その赤い球、岩石トカゲの目じゃない」

「知ってるんですか?」


「迷宮調査員よ。素材も調べるわ」


 セシリアさんは一つを手に取り、光へ透かした。


「傷もほとんどない。魔法で倒したのね」

「僕じゃなくて、同行した人が魔法を使ったんです」


「昨日の報告にあった、領主付きの騎士と一緒に入った子?」

「それ以上は、本人の許可なく話せません」


「そこまで聞くつもりはないわよ」


 セシリアさんは赤い球をテーブルへ戻した。


「それで、これをどうするの?」

「それを相談していたところです。うちではガラスを加工できないから、職人さんに頼むつもりだけど、何を作れば売れるのか分からなくて」


「そのまま素材屋へ売れば、かなりの値段になると思うけど」

「一度売れば、それで終わりだから」


 俺はテーブルの上の赤い球を見た。


「商品として売れる使い道が見つかれば、冒険者は岩石トカゲの目を傷つけずに持ち帰ろうとする。素材屋の取引も増えるし、ガラス職人にも仕事を頼める。うちも商品を売れる」

「相変わらず、自分の店だけが儲かればいいとは考えないのね」


「一軒だけでは、長く続けられないから」


 セシリアさんは腕を組み、しばらく赤い球を見つめた。


「それなら、コップはどう?」

「コップ?」


「岩石トカゲの目から作った、赤いガラスのコップ。普通のガラスとは違うし、魔物の素材を集めている人なら欲しがると思う。私も完成したら一つ欲しいわ」


 赤い光を透かす、岩石トカゲのガラス杯。


実用品としてだけでなく、希少な魔物素材を使った収集品として売る。


前世でも、機能が同じ品でも、材料や由来の希少性によって何倍もの値段がつくことはあった。


「ガラス職人に試作を頼んでみます。金具や飾りが必要なら、ガノさんたちにも作ってもらう」

「素材の仕入れは、素材屋を通すの?」


「うん。継続して売るなら、その方が冒険者も素材屋も利益を得られるから」

「そこまで決まったなら、早く作ってね。最初の一個は私が予約するから」


「まだ作れるかも分からないのに?」

「だから予約よ」


 セシリアさんが笑う。


完成前の商品に、刀以来二度目の予約が入った。


喜びつつもすぐに準備を整え、セシリアさんのもとに戻る。


彼女は母が用意してくれたお茶を、ぐいっと一気に飲み干す。


「それじゃ、お茶もいただいたし、今度こそギルドへ行きましょう。引換券を忘れないでね」


 俺はダンジョンヤドムシの時にもらった派手な引換券を持ち、セシリアさんと一緒に冒険者ギルドへ向かった。

読んで下さって有難うございます。読んで面白いと感じた時には、ぜひ評価を頂ければ嬉しいです。

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