第20話:『親子vs婚約者チーム、全面激突!』
投稿最終日です。
完結まで9話お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
「……ここまでよ、央太」
エリアの中央、巨大な氷の広場で、僕たちの退路は完全に断たれた。
そこに立ち塞がっていたのは、アサシン嫁同盟の3人。
白赤の巫女装束をはためかせ、琥珀色の瞳を鋭く光らせて刀を構える緋村零華。
萌え袖の白衣の下から、無数の魔導レーザービットを浮遊させるクロエ・シュナイダー。
純白のパラソル熱帯のジャングルを抜けた先。
ダンジョン第5層に足を踏み入れた瞬間、世界の色彩は、強烈な「白と青」へと一変した。
そこは、全てが氷と霜に覆われた『氷結エリア』だった。
天井からは巨大な氷柱がシャンデリアのように垂れ下がり、足元の氷の床は、僕たちの姿を鏡のように杖を優雅に肩にかけ、完璧な金髪縦ロールを揺らす大河内雅。
3人のエリート美少女たちが、氷の壁を背にして、僕たちを完全に包囲していた。
「央太様……お覚悟にござる! 不潔なる健吾殿の手からあなたを奪還し、我が緋村の純潔なる愛で、あなたを包み込んで差し上げまする!」
零華が「名刀・白百合」を抜き放つ。氷結エリアの冷気と相まって、その刃は恐ろしいほどの殺気(と、男慣れしていない緊張による赤面)を放っていた。
「央太。データ解析完了。捕獲確率、現在のフォーメーションにおいて98.7%。大人しく、私のメンテナンスケージへ入ることを推奨」
クロエの背後で、魔導ビットが青い光を放ちながらハミングし始める。
「おーほっほっほ! 大河内の私設ギルド兵は第4層に置いてきましたが、私自身の『極大ヒール&バリア』は万全ですわ! さあ央太君、私の用意した、働く必要のないお城へお帰りなさい!」
雅がパラソル型の杖を掲げると、3人の足元に強固な聖属性の防御魔法陣が展開された。
完璧な陣形。
前衛の剣聖、中衛の魔導科学者、後衛の超一級ヒーラー兼バリア使い。
国家が僕のために用意した「お見合い」は、戦闘においても完璧なシナジーを生み出す『最強のチーム』だったのだ。
「おぉ、さすが志乃たちが選び抜いたお嬢ちゃんたちや。フォーメーションに隙がなさすぎるわ」
健吾はコテコテの関西弁を使いながらも、背中の大剣「バルムンク」をゆっくりと引き抜いた。
氷の光を反射する巨大な鉄塊。それを片手で肩に担ぐ健吾の姿は、いつものヘタレさを完全に消し去り、圧倒的な『Sランク冒険者』の威圧感を放っていた。
「央太、どうする? おかんたちに降伏して、このお嬢ちゃん3人に一生チヤホヤされて養われる天国に戻るか? それとも――」
「パパ、何言うてるねん」
僕は魔導杖を両手で強く握り締め、一歩前に出た。
僕のハニーブロンドの髪が、僕の体から溢れ出す魔力によって、眩しいほどの光を放つ。
澄み渡ったエメラルドグリーンの瞳。それは、実母・志乃と全く同じ、本気の戦いへと挑む『魔導士の眼光』だった。
「僕は、あなたたちをお母様たちから与えられた『義務の対象』にしたくない! カゴの中で守られて、誰かの用意した完璧なルートの上で愛されるなんて、僕は絶対に嫌だ!」
僕は凛とした、丁寧な標準語で、3人の少女たちに向かって叫んだ。
「僕は、僕自身の意志で、一人の『冒険者』としてあなたたちの前に立ちたい! 僕が強くなって、自分の足で立ち上がって、一人の男として、あなたたちの隣に立ちたいんです!」
その言葉を聞いた瞬間。
零華の琥珀色の瞳が丸くなり、クロエの無表情な顔が微かに揺れ、雅が「まぁ……」と息を呑んだ。
「おぉ、言うてくれるがな、息子よ! よし、お前がその覚悟を見せるんなら、俺がその背中、全力で支えたるわ!」
健吾が大剣を豪快に振り下ろし、氷の床がバリバリと音を立てて割れた。
「行くぞ、お嬢ちゃんたち! これが、俺たち波多野親子の『野生のダンス』や!」
「『魔力集束――極大魔弾展開』!」
僕の魔導杖から放たれた極太の魔力光と、健吾の豪快な斬撃の衝撃波が、氷結の広場を埋め尽くすようにして、3人のアサシン嫁同盟目掛けて炸裂した。
波多野親子の野生の戦いと、最強の嫁候補3人の、生死をかけた大バトルが、氷の世界でついに始まったのだった。




