エルフは語る、世界の向こうのキャベツ畑!!ドキドキ・エルブン秘宝館
サメ次元について分かっていることのひとつは、時空間全体がサメであるということだ。空間全体がサメの牙となって、そこに存在しているだけでエルフを傷つける。
これを防ぐためには、マイナスイオンとエルブン仮想粒子を練り上げた、ミスリルの鎧が必須である。つまりサメの宇宙におけるエルブン宇宙服というわけだ。今回ばかりはふんどし一丁で突入するわけにはいかない。
エルフとしては若年のノリヒロ。
その体内森林は広さに乏しく、ミスリル生成は難航している。今回は根性ばかりでどうにもできる問題ではなかった。
「今まで散々待ったんじゃ。
あと千年万年、どってことないわい。気長にやれ」
ノリヒロの師であるふんどし幼女の古エルフは言った。どこか気の晴れた、朗らかな調子だ。
薄暗く、広い部屋の中。
金髪巨乳メスエルフ・ポンティはガラクタの山の中から、ひとつの銃のようなものを取り出した。
「なにこれ。光線銃…?」
エルブン・ポータブルトークンが光線銃の解説データを空中に表示する。
無限妊娠光線銃!!
敵にエンドレスで産みの苦しみを味合わせる非人道兵器!!
「へー。これイイんじゃない?持って行きなさいよ」
チャキッ!ガシャコン!!
「やめろ!銃口をこっちに向けるな!!」
元日本人のオスエルフ・ノリヒロは叫んだ。
エルフという種は"備え"という観点に乏しい。その強さと独自の美意識のためか、過剰な備えを疎む節さえある。エルフの根源はセックス・アンド・デストロイ、刹那の思想。貯蓄や保険のような発想は相入れないのだ。
しかし、サメ次元は未知の世界。
食料や生存ツールは当然ながら、いざという時にはノリヒロが師の助けとならなければならない。そして足を引っ張るようなことがあってはならない。そのための備えは、いくらし過ぎても過ぎるということは無いだろう。
そこでノリヒロが訪れた場所が、ここ、エルブン秘宝館!
エルブン城の離れに位置する、先人エルフたちの宝が眠る宝物庫。封印されし危険なエルブン・グッズが山積みになった、ガラクタ置き場である。
ポンティは紐の先にピンクの球体が付いた装置を取り出した。
「これは…超高周波振動バイブレーター?どんな股間でも粉砕するって」
「粉砕してどうする。
武器の類はいらん、師匠の拳より強い兵器はおそらく存在しないだろう」
「もし向こうへ行って、おひいさまの拳が通じなかったらどうするの?」
「その時は……防御や、逃げの手段が要るな。師匠の命だけは何に替えても守らねばならん。
これは…鎧か?ミスリル…ではないか…」
エルブン・ベルセルクアーマー!!
装着者に強制連続絶頂をもたらす代償として、強力な力を授ける呪いの鎧!!
「なんて恐ろしい鎧なの…これ私が貰って帰るわ」
エルブン・ローラースケート!!エルブン・キックボード!!エルブン・バイシクル!!
いずれも奇妙なスピードと快感のリンク機構に先鋭化している。つまり、速度を出せば出すほど強い快楽が得られる仕組み!そして快楽を得るほどスピードが増す!!
その他のガラクタ的猥褻エルブングッズ。本当にロクなものがない。
鎧とまでは言わずとも、何らかのミスリル製品があれば…というノリヒロの当ても、完全に外れた。
「これはベーゴマか?
こういう玩具は日本でも流行っていたな」
ノリヒロが手に取ったものは、金属の小さな円盤と、それを回転させるための手のひら大のからくり装置。
エルブン・スピナー!!
超高速でベーゴマを射出する玩具。エルブン・スピナーバトルの流行は、銀河の存亡をかけた戦いへと発展!!結果エルフの全てのオス(Y染色体)個体がエルブン・スピナー・ウォーによって消滅した!!
「昔はちゃんと、エルフにもオスがいたのね。
でも…本当に、こんなオモチャのために死んだっていうの?まるっきり馬鹿じゃない、オスども」
トークンにより表示されたエルブン・スピナー年表を見ながら、ノリヒロは言った。
「…なんとなくわかる気がする。
おそらくスピナーバトルとやらが、オス同士の悪ノリが過ぎて…個人レベルから大会開催、国家戦争、宇宙戦争という風に段階を踏んで…ものすごく、考えが及ばぬほどインフレしたのだろう」
ノリヒロは想像した。ポンティの言う通り、オスというのはまるで馬鹿だ。
百種以上の鳴き声を奏でる鳥。ロボットダンスがものすごく上手なクモ。奇抜なデザインにその身を作り変える。尻を光らせもする。これらは単にメスの気を引くためだろうか?
いや、そうとは言い切れまい。人間に限らず、ついついやり過ぎてしまうのがオスというもののサガ。
そしてオス特有の馬鹿さ加減と、エルフという種の強さが組み合わさり、乗算的宇宙規模のカタストロフを招いたのだろう。この宇宙が無事なのは、オスエルフの馬鹿どもがうまい具合に自滅してくれたからだ。
「それもまた、強さゆえの弱さというわけだ…」
「何それっぽいこと言ってるのよ。妊娠したいの?」
チャキッ!ガシャコン!!キュイイイイーン…
「やめろ。チャージするな」
エルブン秘宝館の書庫には、禁書とされた書物が保管されている。
そのほとんどは(例によって)役に立ちそうにもないポルノ本ばかりであったが、中には手書きの詩集など、エルフの意外な側面をかいま見せるものもあった。
ノリヒロは本棚から一冊の本を取り出す。"モンキーにもわかる森林48手"。はじまりのエルフが用いたとされる、聖なる森林48手の解説書だ。
"はじまりのエルフ"の48の子どもたち。
彼らは父にして母であるはじまりのエルフの他に、それぞれの"片割れの親"と"体位"の性質を受け継いでいるという。
48手中の48番目、最後の手"寄り添い"。使うのは手のみで、相手を愛撫する体位。
はじまりのエルフは過去の思い出とのまぐわいにより、最後の子…自分によく似たエルフの娘を生み出したという。
パタン。
ノリヒロは本を閉じ呼吸を整える。図書室のノリヒロの元へ、近づく気配があった。
ポンティではない。彼女は今、エルブン・ベルセルクアーマーを試着し行動不能である。
「こんにちわ、ノリヒロさん。その節はどうも」
「……ご無沙汰しております、ミルフよ。一体何の用だ」
ミルフ!!三つ目の妙齢エルフ。
かつてノリヒロが敵として2度も殺した、万年を生きるアーク級のエルフだ。
「そう邪険にしないでくれる?傷ついちゃうわ」
「そうか。…すまん」
かつて戦った、サメ婚団体のアーク級エルフたち。その幾人かはサメ汚染を漂白されたのち、サメ殺し同好会の特別顧問として招かれていた。
ミルフもそのひとりである。しかしサメ汚染を抜きにした気質の危険性ゆえ、彼女のエルブン尻子玉は剥奪されている。
「今日はね、あなたにプレゼントを持ってきたの。
あなたには色々とお世話になったから。きっと、今のあなたに必要なものよ」
ミルフが取り出したものは…エルブン尻子玉。
森林エネルギーの核だ。その輝きからして、かなり位の高いエルフのもの。アーク級か、それとも…。
「何だこれは?一体誰の…」
「それを使えば、あなたにも鎧を作れるでしょう。あっちの世界に適した鎧を」
ノリヒロにとって外部の森林エネルギー源は、ミスリル鎧生成の大きな助けとなるだろう。しかしエルブン尻子玉は、エルフにとって第二の命とも言えるもの。
「たしかに…今の私にとって必要なものだ。しかし、本当に受け取っても良いのか」
「これは私のものではありません。ずっと昔に亡くなった、私の先生のもの」
「…その先生とは、仲が良かったのか」
「ええ。本当に仲がよかった。
最期は、いわゆる腹上死したのだけれど…実質私が殺してしまったようなものね」
「そうか…」
「先生は言っていた。
もし大いなるサメ殺しを達成したなら、エルフは故郷のキャベツ畑に帰れるって。
エルフたちが永遠に踊って暮らす、まぼろしの国に帰ることができるんだって。
…馬鹿みたいじゃない?
どうして宇宙の外側にキャベツ畑なんかがあるの?きっと誰かが言った嘘を、本気で信じてしまったのね」
「信じることに根拠など無い。
お前の先生がキャベツ畑があると言ったのなら、それはあるのだろう。尻子玉の礼として…お前たちの代わりに、私がしっかりと確認して来てやる」
「…あなたは相変わらずね、ノリヒロさん。
サメ殴り、がんばって」
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