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エルブンウォー終戦!!そして宇宙はより平和で快適で幸福になった

「うわあああああ!!!」

 コアラのマサールは土の中で目を覚ました。

 辺りは薄暗く、所々でうめき声が聞こえている。広い倉庫のような空間だろうか?


「……ここは一体どこだ?ペッペッ」

 口の中の泥を吐き出す。何やら懐かしい味だ。

 メスエルフの尻穴に吸い込まれて…自分は死んでしまったのだろう。どうやらここは地獄か?それとも死者が裁きを待つという、煉獄だろうか。

 ガールフレンドのメリンは?…彼女もここに来ているのだろうか?



 バン!!バン!!突如として突き刺すような光が、マサールを照らす!!

「目が覚めたようだな、クズコアラめ!!さあこっちへ来い!!」


「うわあ!なんだ、あんたたち!?」

 レオタード型の制服を身につけた、たくましいメスエルフたち!!

 胸部のロゴには古エルフ語でこう書かれている。"Shark Killer Association"…一体どういう意味なのか、コアラにはわからない。


「おまえたちクズどもは再教育される。サメ汚染を"漂白"するのだ。わかったら神妙にせよ!!」


 意味がわからない!!しかし筋肉質なメスエルフソルジャーに歯向かうだけのガッツが、哀れな一般コアラにはなかった。

 なすがままに個室ビデオ部屋へと連行され、泥だらけのまま椅子に固定されるコアラ。



 個室ビデオ部屋?一体これから何を見せられると言うのか。再教育とは、漂白とは。

 目の前の58インチモニターに映し出されているのは…映画?

 海。

 海の映像だ。

 そして海で泳ぐ、金髪セクシーボインのメスエルフ。陽の光に焼けた、小麦色の肌。

 ……泳ぐメスエルフに影が横切る。鳥か?飛行機か?そして急降下でメスエルフに迫る飛翔体!


 サメだ!!

 フライング・ホホジロザメが大きな口を開け、上空から急降下しメスエルフに襲いかかる!!

 あ…危なアーーい!!!


 ガバー!!


 メスエルフは叫ぶ!!

「テキサス!!!」


 メスエルフの右ストレートにより、サメ爆殺!!


 そして新たに現れるサメ!!テキサス!!キックで爆殺!!

 サメ!!テキサス!!爆殺!!

 サメ!!テキサス!!爆殺!!



「…い、一体…何の映画だ。これは」

 ふとモニターの脇を見るコアラ。

 棚にはビデオが整然と並んでいる…それらは同一シリーズのようで、全ての背表紙に同じ語句が記載されている。

 "エルフvsサメ"。

 そう、これはエルフとサメの戦いの歴史。宇宙史より古くから繰り広げられてきた戦いの記録映画!!

 背表紙に書かれた番号61523、61524、61525…すなわちエルフvsサメシリーズの作品ナンバー!!

 それは一体どれほどの長さか。コアラの一生をかけても見切れるものだろうか。どれだけの間、このクソ映画を見続ければ……


 サメ……爆殺……サメ…爆殺……コアラの意識は再び遠のいて行った。



─────


「うわあああああ!!!!」

 叫び声とともに目を覚ましたコアラのマサール!!


「うわっ!何よ、もう!」

 …(いさ)めたのはメスエルフのメリン。コアラの幼馴染でありガールフレンド、文字通り友達の間柄だ。


「メリン!?…あれ?」


「…びっくりした。急に大声出して、悪夢でも見た?」


 マサールが辺りを見回すと…そこは森の中だった。生い茂る木々の間から青空が見える。鳥の声…そしてエルフたちの笑い声が聞こえてくる。

 マサールはメリンの腕にしがみついて、そのまま眠っていた。夢を見ていたのだ…。


「……変な夢だった。

まるで…長いだけのクソ映画を、エンドレスで見せられていたような」


「ふーん、変なの。ユーカリばっか食べてるから、そんな夢見るのよ」


「それより…せっかく来たんだから、起きて一緒に遊ぼうよ。

ほら、色んなサメ殴り施設があるよ」

 リーフレットを広げるメリン。わざわざ紙に印刷された、森林アミューズメント施設の案内マップだ。

 サメ殴りコースター、サメ殴りレストラン、サメ殴りホテル、サメ殴りアダルトグッズショップ。


「えっ?なんなの、サメ殴り施設って…っていうか、ここ、どこなの?」

 

「何言ってるの?ここはラブシャークパンチング・ランドでしょ。

もう、あなたの方から誘ったくせに…まだ寝ぼけてるの?」


「…そ、そうだったっけ?ごめん。

僕、本当に寝ぼけてるみたいだ。何だか色々なことを忘れているような…」


「…いいよ。

なんかあなたって寝てばっかりだけど……ふふ」


「どうしたの?」


「もし本当に困った時は、私を助けてくれるのかなって…そんな気がしただけ。なんとなく」


「僕みたいなコアラが、君を助けることなんてできるのかな」


「わかんない。気がしただけだから。

…でも、できる場合もあるんじゃない?」


「…そうかな。そうありたいとは…思うけど」


「もう!モゴモゴと歯切れ悪いよね、いっつも!

それよりほら、はやく行こう。サメを殴りに。はやく!!殴りに行こう!!」


「メリン…?」


 メリンが森の中を進むと、確かに木造のアミューズメント施設があった。どこからか珍妙なバイオリン演歌が聞こえてくる。

 そして目を輝かせて、サメ殴りに興じるメスエルフたち。もちろんそのサメは本物のサメではない。中に砂が詰められた、サメ型サンドバックだ。それを一心不乱に殴るメスエルフたち。

 サメを殴ると台座がくるくる回るティーカップに乗ったマサールは、激しく違和感を覚えた。

 一体なぜサメを殴っているのか。何がそんなに楽しいのか。そして本物のサメとは…?


「ハハハハ!!アーハハハハハ!!」


「メ、メリン…?」


 他のエルフたちも、メリンと同じように、恍惚とした顔でサメ殴りに興じている…目を丸く見開き、拳に血をにじませ、高らかに笑いながら。


「ヒッ」

 マサールはその光景に、短い悲鳴をあげた。


「ハハハハ!!アーハハハ!!ハハハ……」





 サメ殺し同好会の矜持をかけた襲撃。

 サメ的繁栄を誇ったラブシャークランドは、豊かな森林と動物たちが暮らすエルブン石器時代へとリセットされた。


 その廃墟を再利用するかたちで作られた、ラブシャーク"パンチング"・ランド。

 戦うための"牙"を忘れた軟弱エルフたちの、眠れる野生を呼び起こす遊技場。

 そこへ訪れた若者達は…いつか、立派なエルフの戦士へと成長していくのだ。

お読みいただきありがとうございます。

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