表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
65/82

第二十四話 『帝の王』

「…何者かがこの館に近づいています。」


その言葉を聞き、俺は気を引き締める。

「…おそらくアギの可能性が高い。他の支配者がどうしてるかも気になるな。」

「近くまでは来てるんじゃない?一斉とは言っても慎重に動くだろうし。」

と、竜那が言いながら準備を終えたと伝えてくる。竜佳も同様だ。


「皆、準備は出来たか?」

「もちろんよ。そもそも、まだ学校指定の戦闘服しかないもの。準備もするものはほとんどないわ。」

と、竜那が文句を言ってくる。

確かに、まだ自分たちの戦闘服は用意せずに、実戦に近い形でこの場所へとやってきた。

先生もその事を承知で、俺たちクラスの人数分、体操着より動きやすい戦闘向けの服を用意してくれていた。


「ここから帰ったらさっさと戦闘服を用意しないと。こんな格好、ダサくて嫌だわ。」

「あまり文句は言わない方が良いよ?それに、竜那はこの服でも可愛い…」

「う…うるさいわねっ。…そう言う竜佳も可愛いわ。」

と、いきなり2人だけの空間が広げられた。

「ここでもそのノリは忘れないのな…」

むしろその方が、気負いすぎないで丁度いいのかもしれない。

「…日向。クラスのグループ分けが終わったぞ。皆3階の広い廊下で待機中だ。」

と、俺たちの所へ幸崎先生が戻ってくる。

「南先生と黒ヶ崎先生は?」

「寧音…南先生は待機している生徒たちを見ている。黒ヶ崎先生はどこかへ行ってしまった。」

…怪しいな。


「分かりました。クラスの皆にはこれからの事を説明しましたか?」

「ああ、一応な。…驚いたよ。皆怯えるどころかやる気に満ち溢れていたよ。」

と、幸崎先生が言ってくる。

「それは良かったです。…早速敵襲が来たみたいです。攻撃側にまわっている俺たちはそろそろ館を出ていきます。何かあれば《コンタクト》を繋げてください。」

「ああ、分かった。…本当、ここに来てから驚くことばかりだ。」


俺はそれだけ言い残し、フレイヤさんたちの方へ戻ってくる。

「攻撃側になっている麗、結乃、エル、グリナさん、マキナはそろそろ出発するぞ。待機側になってる人たちは、決して無理はしないように。」

「分かってる。絡斗たちも気をつけてね。…必ずここで倒してみせるわ。」

と、七香が答えてくれる。


「…先生はなるべく生徒たちを1階に降ろさないようにしてください。できるだけ、担当している階の敵だけに集中させるように。」

「分かっている。」

1階に降りてきてしまえば、カナデやメルリアと言った他種族と接触してしまう。

この戦いの場で、他種族との接触はクラスメイトたちにとっては予想外となる。

一瞬の油断が命取りとなる戦いの場。そうなっては欲しくないのだ。


「…もちろん、カナデたちも2階より上には行かないでくれよ?皆を信じてあげるんだぞ。」

「分かってるわ。ラクトたちも気をつけて。」

そう言われ、俺たちは館を出る準備をする。


「よし、先に行動しよう。敵が来てからだと離脱は困難になる。」

俺は攻撃側のメンバーにそう伝え、早々にこの館を出ていった。




「…いよいよ、始まるのですね。ラクトさん、ご無事で。」






〜〜〜〜〜






「…ラクトさん、私たちはどこへ向かいますか?敵から私たちの拠点となる館の場所はバレてますが、私たちは敵の拠点を知らないですよ?」

と、俺たちは館の外へ出てある程度離れたところで、作戦会議という名目で木々の間に隠れている。


「…支配者を操っている神。それを探す。」

俺はこれからの目的をみんなに伝える。

すでに聞いているエルを除き、他のみんなはこれからの事について驚きを隠せない。…いや、マキナは大して驚いてはいなかった。


「そうは言っても、むしろそっちの方が難しくない?どの神なのかも分からないんだし。」

と、結乃が言ってくる。確かに、そう思うのも当然だ。


「心当たりがあったりするの?」

「…もちろんある。『帝の王』を覚えているか?」

「…確か、ガウエルって名乗ったやつよね?」

「そうだ。」

フレイヤさんの《ブラインド》を掻い潜って俺たちの居場所を見つけた、過激派『イクストセカイ』の支配者の1人だ。

「そいつがどうかしたの?」

「実は、拐われた時どこかへ連れていかれたんだけど、その移動中で話し声だけが記憶に残ってるんだよ。」

「…ずいぶんと都合のいい耳だね。」

確かに。そう言われても仕方がないとは思うのだが。

「それで何が聞こえたの?」

「はっきりとはしてないけども、ガウエルは今日この遺跡にやって来る。」

俺たちが潜んでいた場所は、本日2度目となる『アルフセカイ』の『核』が存在している遺跡の近くだった。


「…それで、なんでガウエルがやって来るって分かるわけ?絡斗を拐ったのは『賢王』のアギじゃなかった?」

と、俺の話がおかしいと麗が指摘してくる。

「確かにそうだ。…だから、この都合のいい耳のおかげでもある。」

俺がそう言うと、麗は改めて聞き直してくる。


「…何が聞こえたの?」



「…アギとガウエルの会話だ。アギの情報を頼りに、ガウエルがここの『核』を壊しに来る。」




それを聞き、全員が息を呑む。

「…仲が悪いはずの支配者同士が接触していた?奴らを束ねた神の前だから?」

エルがその不自然さに何か引っかかるものを探そうとしている。

「確かに。あの場に神が居たのなら不自然じゃない。…もし、いないのにも関わらず接触していたらかなり怪しいよな。」

「…それで、ガウエルはここの『核』を破壊しに来るの?」

「おそらく。奴らの目的はフレイヤさんだろうが、その次くらいの目的にこの『アルフセカイ』の消滅もあるだろう。じゃなきゃ、俺たちがアギと出くわしたのがおかしくなる。」

「確かにね。」

「…つまり、そのガウエルから神の居場所を聞き出すの?」

「そのつもりだ。もし出来なくても、ガウエルを倒す。館へ向かっている支配者が2人だけとなれば向こうも少しは楽になるだろう。」


そう思っていると、何やら足音が近づいてきた。


「来たのかな…」

俺は遺跡の方へ目をこらす。今は夕方くらいの時間帯。暗くはないが、日の光が眩しく足音の原因となる人物の顔がはっきりと見えない。


「…ここがアギが言っていた『核』の場所か。…嘘じゃねえみてえだな。」

と、先頭の大柄の人物が声を発する。その声は、


「…ガウエルで間違いないな。」

「…それじゃあ行く?」

「そうだな。」

俺たちは互いに合図を送る。


「…あなた。何人かはこの外で見張らせておくのも良いんじゃない?」

「そうだな。さすがはサーガよ。…お前ら5人はここで待機してろ!」

「はいっ!」

「よし…それじゃあさっさとぶっ壊して、あいつらに仕返しに行くとするか…」



「…《インフェルノ》!」



「ッ!?」

「なっ!?」


俺は真上から、ガウエルに目掛けて魔法を放つ。

その魔法の衝撃で煙が立ち込める。

そして、俺たちはガウエルたちと遺跡の間に着地する。


「なんだぁ!?…ぉ。」

ガウエルは煙をかき分け、その先にいる俺たちの事を見据えてくる。


「待っていた。」

俺はそうガウエルに言い放つ。


「…誰かと思えば…あの館にいた奴らか。」

「っ。…あの時の小僧ね。」

ガウエルの隣にいた女性が俺に敵意を向けてくる。


「やっぱり生きていたのね…」

麗がそんな女性…サーガを見て呟く。


「…サーガよ。まさか、お前を傷つけたのはこいつか?」

ガウエルが俺を見ながら言ってくる。

「ええ、そうよ。この小僧とそこの小娘よ。あと一人の小僧はこの場に居ないみたいだけど。」

と、俺と麗を指さしてくる。


「ずいぶんと俺の嫁が世話になったみてえだな。…覚悟は出来てるか?」

そう言って、禍々しい大剣を取り出し地面に突き立てた。


「できれば話し合いがしたいんだけどな。」

「ほう。話し合いか。この状況でおもしれえ事を言うやつだな。」

確かに、この場にいるのは俺たち6人に対して、ガウエル側は配下を合わせて40人ほど。この前襲ってきた人数よりも多くいる。

もちろんその配下の中には、俺やクラスメイトがぶっ倒した奴も含まれていた。


「…言ってみろ。聞くだけ聞いてやるよ。」

と、ガウエルは寛大なる姿勢を見せる。


「…お前らを操って、ここ『アルフセカイ』とフレイヤさんを襲わせた黒幕の神の居場所と名前を知りたい。」


俺がそう言うと、ガウエルは驚くでもなく高らかに笑った。


「おもしれえな。よくこっちの事情を調べているようだ。そこまで頭が回るなら、俺がどうするかも分かるだろ?」

「…教えるつもりはないということか?」

「…正解だ。」


瞬間、ガウエルは大剣を手にし、こちらに突っ込んできていた。


「…!《セイクリッド・フォール》!」

グリナさんがいち早く気づき、防御魔法を展開する。


「ちっ!」

ガウエルの叩きつけてくる一撃は、グリナさんの防壁により弾かれてしまう。

「中途半端には行きませんよ!やるからには全力です!」

グリナさんも戦う姿勢を向ける。


「そういうことだ、『帝の王』。…悪いが必ずお前らから情報を手に入れてやる。」



俺たちとガウエルたちとの最終決戦が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ