第二十三話 二度目の会議
「それじゃあマキナ。俺たちを連れてってくれ。」
「了解した。その魔族も、一緒に?」
「もちろんだ。」
俺は助けに呼んだマキナに、館へ転移してもらえるように頼んだ。
そして、一緒にメルリアを連れていくことに。
「…本当によろしいのですね?」
メルリアは俺にそう問いかける。
「心配はいらないさ。俺が皆を説得する。」
俺はそれだけを言って、マキナに転移の合図を送る。
…俺たちは、光に包み込まれてやがて館へと戻ってきたのだ。
「…なんとか戻ってこれたな。」
表情は冷静を装いつつも、心臓はバクバクしたままだ。
本当に、無事帰って来れてホッとした。
「よし、まずは皆に顔を合わせないとな。」
グリナさんと七香には少し顔を合わせづらい気持ちもあるが。
そんな事を思いつつ、館の出入口の扉を開ける。
「誰か来た?」
「もしかしてラクトたちかも!」
扉を開けるとソファの方から、声が聞こえる。そして1人の少女が激しい物音を立てながら走ってやってくる。
「えーと、迷惑かけて悪かったな。」
俺はそんな少女…カナデに声をかける。
「っ…!ラクトっ!」
「うおっ!?」
そんな俺の姿を見て、カナデは俺に駆け寄り飛びついてきた。
「心配したんだからぁ〜!」
カナデが今にも泣きそうな目で訴えかけてくる。
「ほ、本当に悪い。」
俺はそんなカナデの頭を撫でてなんとか落ち着かせようとする。
「ずいぶんと慌てているのですね。」
と、そんな俺たちの光景を見て、メルリアが俺の状況を的確に言ってきた。
「えっ…魔族?」
カナデがそんなメルリアの声に気づき、その姿を見ると一瞬にその種族を言い当てた。
「安心しろ。仲間みたいなものだ。…この後皆にも話したいんだが。」
「…分かったわ。皆こっちにいるよ。」
俺がそう言うと、カナデは落ち着いてから俺たちをソファにまで案内した。
「皆!ラクトが戻ってきたよ!」
カナデは皆の元へ走りよって大きな声でそう叫んだ。
そして、その後ろから俺たちは皆の前へとやって来る。
「っ!絡斗っ!」
そして、七香までもが俺の傍に駆け寄ってきた。
「大丈夫っ!?」
「七香…ほんと、悪かったな。俺があんなヘマをしなければ…」
「違うよ。絡斗は悪くないから。…でも、本当無事で良かった。」
…ちゃんと心配していてくれて俺も何だか嬉しく感じてくる。
そして、皆を見渡すとこの場にいたのは昨日、作戦会議をしたメンバーとカナデとフランだった。
「…ほんと心配したわよ。私の中の評価が無くなるところだったわよ。」
と、そんな俺に辛辣な言葉を浴びせてくるのは麗だった。
「いや、ほんとに皆には迷惑をかけたな。…と、皆に紹介したい人がいるんだ。」
俺はそう言って皆の視線を1人の人物に集中させる。
「…気づいている奴もいるだろうけど、彼女はメルリア。魔族だ。」
それを聞き、全員が驚きの表情を浮かべる。
「…まず、俺が無事に戻ってこられた理由も混ぜつつメルリアのことについて話すよ。」
そう前置きをし、俺が拐われてからここに戻ってくるまでの間に起きた出来事を皆に話していく。
「…なるほど。メルリアさん…のおかげで無事だったのか。」
エルはすぐに納得した。他の皆も、情報を整理しようと頭を悩ませている。
「…日向、これからどうするんだ?おそらく、『賢王』とやらはお前とメルリアが居なくなった時点でこちらに攻めてくるのでは無いのか?」
と、流石は幸崎先生だ。中々鋭い所を突いてくる。
「それなら考えがあります。…さっきも言ったようにアギの『異能』はメルリアが教えてくれた。それを考慮すれば対策は一番楽です。」
「なるほどな。」
「それで、おそらく館にやって来るのは『賢王』だけとは考えにくい。支配者同士が忌み嫌っていてもその上についている神が操っているだろうし。」
俺は、支配者を束ねている神の存在が未だに不明なのを妙に感じている。
「そして、攻めてくるとしたらおそらくこの後すぐの可能性もある。…他のクラスメイトは?」
俺は幸崎先生と南先生に尋ねる。
「各自部屋に待機させている。」
「…今回、初実戦をさせても良いですか?」
俺がそう言うと、先生2人は驚いた顔をする。
「もちろん死なないように、クラスメイトたちを5人くらいの束にして行動させましょう。5チーム程出来ると思うので、1チームが待機。残り4チームを幸崎先生と南先生が援護しつつ同行動をする。」
俺は作戦を皆に言っていく。
「最初の予定とは少し変わるかもだけど。とりあえずは、外へ戦闘しに行くメンバーは南先生を除いて残りは変わらず、麗、結乃、エル、グリナさん、俺が行くことにする。」
「なるほど…」
皆、俺の意見に反対はなさそうだった。
「それで、変更点だが、マキナは俺たちと一緒に外へ行く方にする。代わりにメルリアは館待機にして、アギの攻略を任せようと思う。良いか?」
「…ええ、分かりました。」
「でも生徒達が…」
「その点は、先生たちとメルリアかカナデたちを別行動…左右で担当を分けたりすれば行けるかと。」
と、俺は説明をする。
「なるほど。」
幸崎先生は納得したかのように頷いている。
「良ければ、すぐにでも行動したいのですけど。おそらく、明日まで待ってはくれません。」
「そうね。…クラスには私から説明をするわ。寧音も頼む。」
「分かったわ〜。」
そう言い、先生2人が部屋へと戻って行った。
「…ラクト。黒ヶ崎のことは言わないでいいのかい?」
と、エルが横から声をかけてくる。
「はっきり分かったわけじゃないしな。それに、今は下手な行動は取れないだろう。」
俺はそう思い、まだ言わなくても良いだろうと判断した。
「…それと、色々とあって忘れているかもしれないが…」
と、エルは前置きをしてから小声で話し始める。
「なんだ?」
「…最初に話していたフレイの事だ。」
「ああ…それか。」
「確か、ラクトの見立てだと、フレイってのは…」
「十中八九、生きてるだろうな。」
最初フレイヤさんと会った時に、兄のフレイがフレイヤさんを襲った支配者に殺されたというのを聞いた。
「だが、あまりにも不自然すぎるな。」
「どういうことだい?」
「今、支配者たちはフレイヤさんを狙っている。理由は分からないがな。」
「そうだね。フレイも狙ったことから、おそらく妖精の頂点に立つ者…またはフレイの血族狙いだろうね。」
「ああ。だけど、フレイヤさんの話によるとフレイは一瞬の内に殺されたということになる。」
俺はフレイヤさんから聞いた情報を思い出すように話す。
「一瞬の内ってのは?」
「兄の部屋に兄がいなくなる前、フレイヤさんは兄…フレイの姿を確認していたみたいだ。…フレイが反応しなくなるまでの時間はわずか10分程。」
「なるほど。」
「敵が襲ってきて、抵抗もなしに殺されるわけないだろ?抵抗した痕跡もなく、たった10分程で妖精王が死ぬわけない。…拐われたと考える方が妥当だ。」
俺はそう言うと、エルも理解したかのように頷いている。
「…置き手紙というのは?」
「おそらく偽物だろうな。」
「それで、拐った支配者に心当たりはあるのかい?」
「…いや、支配者3人とも接触はしたが、妖精王が抵抗もできずに拐われるとは考えにくい。…フレイの実力は分からないが。」
「…というと、支配者を束ねている神の仕業ということか。」
「俺はそう思っている。…その神のいる場所を探さなきゃな。」
この『アルフセカイ』にやって来ているのか。それとも神の住む『セカイ』に残っているのか。
「…かなり大変だな。」
「外に行くメンバーは、その神探しをするということかい?」
「それもあるな。あとは、支配者を見つけて倒しつつ居場所を聞ければベストだが。」
「…万が一、神の『セカイ』の方にいると言われたら、一度ラプラスたちの所に顔を出すか。」
と、エルが提案をする。確かに、人が増えれば心強い。
「そうだな。」
「…とりあえずは分かった。この後、もし攻めてきた場合ボクたちも返り討ちにするため外へ出ていくのだな?」
「そうだな。…黒ヶ崎先生の様子は?」
「何もないようだ。幸崎から話を聞いても、協力する素振りを見せていた。」
「なるほどな。」
「…あんたたち、いつまでコソコソ話してるの?もう終わった?」
と、俺たちの会話に割って入ってきたのは、七香だった。
「準備とか大丈夫なの?」
「ああ、問題ないな。」
「そ。それなら良いけど。」
と、七香はそれだけを言って他の皆のいる方へ歩いていった。
「…これが最後の戦いになるかもね。」
「…支配者3人が協力して一斉に攻めてくればな。」
俺たちは、来るべき襲撃に備えて心を落ち着かせているのであった。
「…何者かがこの館に近づいています。」
と、フレイヤさんの言葉を聞くまで。




