五 ~ そんなこと、聞いていないぞっ。 ~ (6)
どうしても、そうだよね。
やっぱり、気になるんだ。
6
姫香から久しぶりに野菜ジュースを貰って一週間が経っていた。
安堵というわけではないないが、野菜ジュースを飲むことで、平静さを取り戻し、頭痛も治まっていた。
時間が経つと、かなり穏やかになっていたが、ふとしたとき、右腕を眺めてしまうときがあった。
まさか、吸われたがっている?
そんなことはない、とかぶりを振り、滲む不安を否定した。
それでも浮かんでしまうことがある。
ーー あなたと一緒よ。
あの女性の言葉。その真意は掴めず、ずっと悩んでいた。
なんであんなことを言ったのか。何かを警告しようとしていたのか。
確かめようにも、誰なのか分からない。
「……公園に行けば……」
何度か頭をよぎっていたが、躊躇してしまう。
やはりあの公園には何かがあるのかもしれない。
あの狩り場に。
ーー 今日もよろしく。
今日は姫香のバイトの日であり、いつもみたく彼女からのメッセージが送られてきた。
最近は公園を避けていたので、今日もそばを通らないだろうと思っていたとき、手が止まってしまう。
行ってみるか?
心は迷っていた。
感情が揺れるなか、ふと姫香の顔が浮かぶと、騒ごうとしていた心が落ち着いていく。
悔しいが、姫香の言葉は気持ちを宥めてくれた。
うん。止めておこう、と。
日も暮れ、約束の時間が迫ろうとしていた。
いつもみたく、コンビニの前に行こうとしていると、ふと顔を上げた。
今日は満月だったらしく、淡い光が瞬いていた。
姫香との待ち合わせに遅れてしまえば、陰湿な嫌味を注がれるのは予測できる。もしかすれば、罰として血を求められるかもしれない。
それだけは、絶対に嫌である。
それなのに、体はコンビニとは桁外れの方角に体を向けていた。
公園の方角に。
白状すると、初めてではないのです。これまでに何度か公園には黙って立ち寄っていた。
わかってはいる。思いつきで向かっても、彼女に会える保証なんてないことを。
これまで何度もそうであったから。
それでもどうしてだろうか。なぜか、会える気がしてしまった。
それなのに僕は怯えているのか、ずっと息苦しかった。それは、忘れかけていた頭痛すらも呼び起こしていた。
公園に着いてしまったことを後悔しながら、広場に出たとき、目を疑った。
そこに彼女が立っていたことに。
彼女も僕を見つけたらしく、不敵に笑った。
何かを企んでいそうであっても、僕はどこかで安堵してしまう。
彼女に会えたことに。
「やっぱり、来ちゃったんだね」
呆れた様子で呟く彼女は、薄手のカーディガンを着ていた。
今すぐ背を向け、帰るべきだ。
分かっている。何度も頭のなかで冷静な自分が警告している。
それなのに……。
「この前、言っていたことはなんなんですか?」
感情とは裏腹に、声が漏れてしまう。
警戒心を露わにし、彼女を睨みながら近づいた。彼女は僕の敵意をものともせず、背中で腕を組み、体の正面を僕に見せた。
「あなた、「繋」なんでしょ?」
力強く芝生を蹴っていた足が止まる。
「……なんで、それを?」
つい反応して目を剥いてしまった。逆にこれが返事になってしまっていた。
「ここにあなたが来たってことは、この前、押さえていた女の子がやっぱり、吸血鬼ってことみたいね」
ーーなっ……。
彼女の指摘に、息が詰まる。どこか姫香が吸血鬼だと知られることに、危機感を抱いてしまう。
「……私も「繋」だからよ」
「ーーな、そんなっ」
クソッ。「繋」と聞いて、驚かない自分が悔しい。でも、じゃぁ、なんで?
「繋」を姫香が襲ったと? なんで?
「驚いているようね。自分以外の「繋」が現れたのが、そんなに怖い?」
「……まさか」
強がって否定するが、それ以上は続かない。
「フフッ。目つきが変わってるわよ。あなたも関わらないでって言っておいたのに」
「んなことを言っても、もう僕は……」
「いいわ。私の目的、教えてあげるわ」
どうしてそこにいるの?




