六 ~ 望むこと…… そんなのは。 ~ (1)
そんなに面識もない。
名前だって知らない……。
そんな人について行ってもいいのか?
第六章
1
何が目的なのかがまったくわからない。
そもそも「繋」であるならば、なぜ、姫香はこの人を襲ったのだろうか?
彼女に連れられ公園を出ると、そんなことを考えながら、その細い背中のあとをついて行った。
どこに行くのだろう。
沈黙が体を縛るが、逆らえなかった。
何も会話が生まれないまま、街明かりのなかを歩いていたが、浮かぶことは疑問ばかりである。
それを尋ねる勇気もない。
「あ、そういえば、私の名前、三原って言うの。よろしくね」
声をかけられたのは、疑問に押し潰されていたときである。
よろしくね、と言われても、返す言葉がない。
「あ、それとね、私は彼女に襲われてなんかいないわよ」
どこに向かっているのかわからないまま、歩いていた足が止まる。
「どうして? って顔ね」
僕の不安を見透かしたように話す三原に、下唇を舐めた。
「そんなに警戒しなくてもいいわよ。私なりの、ちょっとしたこだわりかな。そんなとこよ」
「ーーこだわり?」
ようやく声が出たのだが、軽くあしらわれ、そのまま会話は途切れてしまう。
それから五分ほど歩いたところである。
「ーーここよ」
それまで街の明かりが灯されていたのが、明かりが急に途絶え、暗闇が開かれる。
体を向けると、暗闇にぼんやりと影が浮かんでいた。
「ーー学校?」
開かれた暗闇には、学校らしき建物であった。いつしか敷地の正面に立っていた。
つい眉をひそめてしまう。なんて名前の学校だったか? そもそも、こんなところに学校ってあったのか?
固く閉ざされた正門脇に視線を移すが、校名が書かれていた看板はなくなっている。
「ここはもう廃校になっているから、見つかることはないでしょう」
「見つかるって?」
「ーーこっちよ」
どこか小出しにしていることに不思議がりながら、闇に紛れた校舎を眺めた。
廃校と言われると、暗闇にぼんやりと浮かび上がる校舎が、どこか命を持つ生物に見えてしまい、背筋が凍る。
ここに何があるって言うんだ?
「ねぇ、この前のあの可愛い子、あなたの彼女?」
不安が積もるなか、先に進む三原から、突飛ない問いが飛んできた。
なんだ、今のカウンターはっ。
もう何度も吉村らに茶化されていたので、多少の免疫はできていたのだが、面識のない人物から指摘されると、急に恥ずかしくなる。
「いや、あいつは、えっと……」
だからか、返事にあたふたしてしまう。
「フフッ。動揺してるんだ。いいな」
振り返り、頬を緩める三原。ただ僕を茶化したいだけなのかはわからない。
「私ね、彼女にフラれたのよ」
「ーーはぁっ?」
学校?
怪しいのにもほどがあるじゃないか。




