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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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36/57

 四 ~  ……まさか、だよな。  ~ (7)

 公園を避けようとしているのに、なんで行くんだ?

            6



 まったく、こいつの口からは冗談しかこぼれないのか、と頭痛が起こりそうだ。

 一瞬でも姫香を助けたいと願った良心を返せと訴えたい。

 まぁ、結局は従ってしまう僕も甘くてバカだということになるのだが……。

「わかってる。今日を最後にするからさ」

 と、姫香の訴えに負け、公園のなかを歩いていた。

 そこでも冗談を言うのは、怯えているからなのか、公園に入ってからはずっと僕の腕をギュッと掴んでいた。

 不本意ではあるが、動揺から心が騒いでしまっていた。鼓動がバレないように願うだけだ。

「にしても、意外だよね。もっと、人が多いと思ってた」

「それは確かに」

 公園に入り、しばらく歩いていたが、人とすれ違うことはあまりなかった。

 ブランコなどの遊具で遊んでいる子供がいないのは時間的に納得できるが、ジョギングや散歩をしている者の姿も少なかった。

 広い敷地はジョギングとして、最適に見えたが、本格的に走る者にすれば、物足りないののか、逆にコースは厳しいのだろうか。

 ふと振り返り、広大な公園にしては、本末転倒だと思えた。どこかもったいない。

 実際、今もすれ違ったのは一人だけであった。

「……なんか、変な雰囲気だね。ちょっと怖いかも……」

「だから言ったろ。道を変えた方がよかったのに」

「だって、知りたいじゃない。なんで、こんなところで発作が起きたのかって」

「だから、危ないんじゃないかよ」

 本当に反省なぞ微塵もしていない。

 どこか、地獄の入口付近を歩いている気がしているのを、逆に楽しんでいるみたいな気配にげんなりしていると、この前、姫香が女の人を襲っていた広場へと出た。

「へぇ~。ここって、月明かりがあっても、意外と暗いもんなんだね。これだったら」

 ホクロに手を当てて、何かよからぬことを考えている素振りに、溜め息がこぼれそうだ。

 血を狙っているのは明白である。

「余計なことを考えるなよ。いい加減、誰かにバレるぞ」

「だよね。だったら、誰かに見られる前に、古川くんを襲わないとね」

 瞬間、姫香は口角を上げ、八重歯を見せた。

 あれ? 気のせいか、八重歯がいつもより鋭く長く見えてしまうのは。

 腕を掴んでいた手に、より力がこめられた。

 思わず体を仰け反らし、手を振り払おうとすると、姫香はパッと手を放した。

「なんてね。冗談、冗談」

「止めろ。今のお前は冗談に聞こえない」

「そう? じゃぁ、本当に吸っちゃおっかな」

 血の気が引きそうな悪魔的な笑みを睨んだときであった。

 姫香の頬が急に張りつめ、青ざめていく。

 それは本当に悪魔でも見たみたいに。

「お前は邪魔」

 刹那、目の前が漆黒に染まり、意識が飛んだ。

 意識が……。

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