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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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35/57

 四 ~  ……まさか、だよな。  ~ (6)

 大丈夫だから。

 無理をしているわけでもない。

            5



 我ながら、僕は義理堅いものだと賞賛したいものである。

 姫香のバイト帰りに、今日も迎えに行ってしまうのだから。

 いや、むしろ姫香の図太さを称えるべきなのか。

 ーー 今日もよろしく。

 と放課後に連絡を入れてくるのだから。

「おまたせ」

 スマホのアプリで時間を潰しているなか、声をかけてきた姫香。

 顔をあげると、姫香の悪びれないいつもの姿に、僕はげんなりしつつ、腰を上げた。

 今日も、髪を縛っていた。やはりこの姿がスタイルらしい。

「今日は薬飲んだのかよ」

 月明かりが見下ろすなか、ふと聞いた。

 僕の心配をよそに、姫香はピースサインで答えた。

 大丈夫か、と続けて聞こうとしたのだが…… なるほど、聞くだけ無駄だったらしい。

「でもさ、本当に私って発作が起きたのかな?」

「何言ってんだよ。だから、昨日、外に出たんじゃないのか?」

「そうなのかなぁ」

 これも発作の後遺症とでもいうのだろうか。姫香は記憶を探るように、宙を眺めていた。

「大体さ、そんなに公園のそばを歩くのが危ないんなら、帰り道を変えればいいじゃないの?」

 そろそろ公園のそばを通ろうとしたとき、ふと言ってみた。

 ちょうど、そのときに車が奥から向かってくる。ヘッドライトが後ろから姫香を照らしていた。

「なんだろ。やっぱ、導かれるっていうか、あの公園のそばを通って、そこの空気を吸わないと、気持ちが落ち着かないっていうか」

 不安げに胸を撫でる姫香。表情を伺うと、自分でも戸惑っているみたいに見えた。

「だったら、余計に危険だろ。ったく。んじゃ、道変えるぞ」

「え~っ」

 そこで釈然とせず、唇を尖らす姫香の腕を掴む。やっぱりこのままでは危ない気がする。

「嘘っ。私を襲うの? えっ、高いわよ、私って」

「ふざけるなっ。今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ」

 赤らんだ頬を撫でる姫香。この期におよんで、まだふざけている。

 う~んとうなだれながらも、歩を進める。早くここを離れるとしよう。

 しかし、姫香は足を踏ん張り、拒んだ。手を引かれて止まると、姫香は遠くを眺めていた。

 その先にある公園を捉える強い眼差しに、つい手を放してしまう。

「ワガママ言ってる場合じゃないだろ。自分の体のことを考えろよ」

「わかってる…… けど、今だけは」

 急に声を張り上げる姫香。突然の叫び声に驚き、体をビクつかせた。

 眼差しは真剣そのものであった。

「ごめん。なんか、今日は特にそうなんだけど、なんか嫌な気がすんのよ」

「……嫌なことって?」

「わからない。けど、なんかさ」

「何かって、何さ?」

「……古川くんに襲われそう」

「ーーんなっ」

 なんでだろう。

 公園が気になってしまう。

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