四 ~ ……まさか、だよな。 ~ (6)
大丈夫だから。
無理をしているわけでもない。
5
我ながら、僕は義理堅いものだと賞賛したいものである。
姫香のバイト帰りに、今日も迎えに行ってしまうのだから。
いや、むしろ姫香の図太さを称えるべきなのか。
ーー 今日もよろしく。
と放課後に連絡を入れてくるのだから。
「おまたせ」
スマホのアプリで時間を潰しているなか、声をかけてきた姫香。
顔をあげると、姫香の悪びれないいつもの姿に、僕はげんなりしつつ、腰を上げた。
今日も、髪を縛っていた。やはりこの姿がスタイルらしい。
「今日は薬飲んだのかよ」
月明かりが見下ろすなか、ふと聞いた。
僕の心配をよそに、姫香はピースサインで答えた。
大丈夫か、と続けて聞こうとしたのだが…… なるほど、聞くだけ無駄だったらしい。
「でもさ、本当に私って発作が起きたのかな?」
「何言ってんだよ。だから、昨日、外に出たんじゃないのか?」
「そうなのかなぁ」
これも発作の後遺症とでもいうのだろうか。姫香は記憶を探るように、宙を眺めていた。
「大体さ、そんなに公園のそばを歩くのが危ないんなら、帰り道を変えればいいじゃないの?」
そろそろ公園のそばを通ろうとしたとき、ふと言ってみた。
ちょうど、そのときに車が奥から向かってくる。ヘッドライトが後ろから姫香を照らしていた。
「なんだろ。やっぱ、導かれるっていうか、あの公園のそばを通って、そこの空気を吸わないと、気持ちが落ち着かないっていうか」
不安げに胸を撫でる姫香。表情を伺うと、自分でも戸惑っているみたいに見えた。
「だったら、余計に危険だろ。ったく。んじゃ、道変えるぞ」
「え~っ」
そこで釈然とせず、唇を尖らす姫香の腕を掴む。やっぱりこのままでは危ない気がする。
「嘘っ。私を襲うの? えっ、高いわよ、私って」
「ふざけるなっ。今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ」
赤らんだ頬を撫でる姫香。この期におよんで、まだふざけている。
う~んとうなだれながらも、歩を進める。早くここを離れるとしよう。
しかし、姫香は足を踏ん張り、拒んだ。手を引かれて止まると、姫香は遠くを眺めていた。
その先にある公園を捉える強い眼差しに、つい手を放してしまう。
「ワガママ言ってる場合じゃないだろ。自分の体のことを考えろよ」
「わかってる…… けど、今だけは」
急に声を張り上げる姫香。突然の叫び声に驚き、体をビクつかせた。
眼差しは真剣そのものであった。
「ごめん。なんか、今日は特にそうなんだけど、なんか嫌な気がすんのよ」
「……嫌なことって?」
「わからない。けど、なんかさ」
「何かって、何さ?」
「……古川くんに襲われそう」
「ーーんなっ」
なんでだろう。
公園が気になってしまう。




