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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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34/57

 四 ~  ……まさか、だよな。  ~ (5)

 まったく……。自分の気持ちがよく分からない……。

            4



 憎らしいほどに太陽が揚々と空に瞬いている。風の匂いもどこか蒸し暑かった。

「それで、もう体は大丈夫なのかよ」

 屋上のフェンスに凭れて座ると、太陽を眺めながら聞いた。眩しさについ手をかざした。

「うん。もう大丈夫」

 横で姫香は嬉しそうに答え、売店で買っていたカフェオレを口にしたあと、腕を空に大きく伸ばした。

「意外だった。私のこと心配してくれるんだ」

 まったく、その通りである。どこで僕の気持ちは変わったのか……。

「何を考えてんだろうな。まったく、自分でも変だよ。……それより、もう発作は治まったのか?」

「うん。見ての通りね」

 姫香は両手を広げてみせた。

「でもさ、そんなに心配してくれるんなら、血をちょ~だい。それが私にとっての一番の薬なんだからさ。ね?」

 口元のホクロに指を当てて、八重歯を見せる姫香にげんなりした。

 まったく…… もう以前の姿に戻っている。

 頭を抱えたくなりそうだ。

「ね、どう? 昨日の私の姿を見たら、かわいそうで仕方がないでしょ。ほら、か弱い恋人を助けると思ってさ」

「誰が恋人だよっ」

 思わず声を上げた。最近、周知の仲みたいな空気が流れているが、決してそんなことはない。

 決してないっ。

「何言ってんの。もうみんな知ってるよ。それにみんな言ってるよ。私はあなたが何か無茶をさせたから、体を壊したんだって。もう、本当に乱暴なんだから」

 また体をクネクネと揺らす姫香。もう反論する気にもなれない。

 ダメだ。堪えていたが、頭を支えないといけない。

「まぁ、まぁ。そんなに残念がらずに。あなたがそんな冷たい人じゃないってことは私が一番わかってるから。ね」

「……お前が元凶だろうが。バカ」

「もう。そんな責めないでって。そんなに責めたら、私、倒れちゃうじゃない」

「ふんっ。倒れとけっ」

 相変わらずふざけて口を尖らせる姫香。まったく反省の色はない。

 それどころか、鼻歌を歌うみたいに声を弾ませている。

「そんな。また発作が起きたらどうするのよ」

「知るかっ。薬でも飲んどけ」

「もう、冷たいんだから。そんなこと言うんだったら、今日のバイト帰り、人を襲うわよ」

 ーーはい?

「……今日って、もういいのかよ?」

「うん。大丈夫だって。そうでもしないと、薬がねぇ」

 ふざける姫香。もう心配の必要はないらしいが、薬と言われると、心が騒いでしまうため、怒鳴れなかった。

「……無理するなよ」

「ーーうん」

 そのとき見せた笑顔は、それまでより頬が緩んでいたが、安堵しているようにも見えた。

「またお迎えよろしくね」

 ……はぁ……。返事をするのも嫌になる。まったく……。

 元に戻るのが早い。

 心配するのは無駄なのか……。

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