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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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33/57

 四 ~  ……まさか、だよな。  ~ (4)

 また、いつもの元の生活に戻るんだろうね。

 普通に学校に行って。

            3



 まったく、まさかここまで深刻なんて考えてもみなかった。本当に人を襲うなんて。

 その日、僕を襲ったのは恐怖、怯え、疑心だったのかもしれない。

 見えない何かに取り憑かれたような、不穏な寒さは、睡魔すら追い払ってしまい、あまり寝つけなかった。

 それなのに朝を迎えると、睡魔は逆に活力を得てしまい、学校に行く間にも何度もアクビに襲われていた。

 脳裏では、「今日は休め」と自分を甘やかそうとする意識が手招きをしていたのだが、そうも言っていられない。

 朝の七時ごろである。

 ベッドから起きることを拒み、また睡魔に従おうと寝返りを打ったとき、スマホが鳴った。

 ーー 今日から学校に行くね。

 と、姫香から連絡があったのである。

 一瞬だけではあったが、睡魔は消え去り、僕は飛び上がったのである。

 信じたくはないのだが、そこで返信してしまった。

 ーー 無理をするな。

 と。

 ……不本意である、と思いたい……。

 身の危険があるのは自分のはずなのに、姫香を心配してしまうなんて、変な気分であった。



 睡魔と格闘しつつ、それでも学校に来ていた。やはり姫香のことは気になるが、席に着くなりそのまま突っ伏してしまった。

 姫香はまだ来ていない。それまで眠っておこうじゃないか。

 あれから姫香からメッセージはない。本当に来るだろうか。

 と不安になっていると、

「やけに、眠そうだな」

 と前の席に吉村が座り、茶化してきた。

「そう言えば、今田の奴もずっと休んでるな。お前、何か聞いているか?」

 無視するつもりでいたが、体がビクッと反応してしまう。

 知ってるさ。知ってるけど、「う~ん」と唸ってしまう。

 姫香が人を襲おうとしていた。とは話せるわけない。

 僕の不安を尻目に、吉村の嫌味が飛んできそうなとき、ふと目を開き、体を起こした。

「なぁ、お前、あそこの公園ってなんか変な話聞いたことないか?」

 昨日起きたことは、偶然であることは理解しているのだが、騒ぎが広がっていないことに疑問は残り、ついあの公園の名前を言って聞いてしまった。

「公園? なんだよ、それ。あそこってなんか苦手なんだよ。運動する奴しかダメ。みたいな」

 そこで吉村は頬を歪めた。それは、吸血鬼が関わっているからではなく、ジョギングコースを走る、運動が好きな人を指しての反応であった。

 吉村は運動が苦手であったから。

 やはり知らないらしい……。

「なんで、そんなことを聞くんだよ?」

「ん。いや、ちょっとね」

 突然、公園のことを聞かれ、不思議がる吉村であったが、目を逸らしてごまかした。

 話せるわけないからな。

 自分から話を振っておいて、どう切り返すか悩んでしまい、ふと教室を見渡した。

 HRが近づこうとしていたので、生徒の数は増えていた。

 もうすぐチャイムが鳴ろうとしていると、開かれた扉から姫香が入ってきた。

 姫香は近くにいた女子生徒に挨拶して、自分の席に着いた。

「おはよ」

 目が合った姫香が目を細めた。いつも見る淀みのない笑顔であった。

 ここは「おはよ」と普通に返事をしておいた。

 あいさつすると、なんか安心しちゃうんだよね。

 大丈夫だって。

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