三 ~ 血を吸われることを考えれば…… ~ (5)
待ってくれてるんだよね、やっぱり。
3
姫香らに偶然会った日から、三日後の夜。
僕はあるコンビニの前にいた。
駅前には小さなバスロータリーがあり、時間では十時十分を回ったところ。この時間になると、バスもすでに終わっており、タクシーがロータリーに数台入っているだけで、閑散としていた。
そのため人通りも少ない。
ロータリーの奥はコンビニやスーパーなどが建ち並んでおり、まだ明かりが灯されているので、人通りもあった。
僕はコンビニの前の歩道で、ガードレールに腰を下ろし、後ろのロータリーをなんとなく眺めていた。
ちょうど、電車が到着したらしく、駅のホームが一段と明るくなった。
何人かの人が降りてくるだろうと考えていたときのことである。
「待った、古川くん」
僕を呼ぶ声がして、歩道の方へと振り向いた。
すると、歩道に嬉しそうに頬をを緩めた姫香がいた。
「バイト、終わったか?」
「うん。待っててくれてありがとね」
僕は今、姫香のバイトが終わり、帰るところを迎えに来ていたのである。
断っておくが、決して僕らがつき合って、こいつを待っていたわけではない。
これには深い事情があるのである。
今田姉妹に偶然出会い、二日が経っていた昨日のこと。
依然として学校で見る姫香は猫を被っている。
確かにあの姿だけを見ているのならば、二人が姉妹であるのは納得できる雰囲気を漂わせていた。
ただ、ふと姫香と目が合ったときに、あの不敵な笑みを見せられると、背筋が凍ることは続いている。
恐らく、姫香はわざとそうしているのである。だから憎らしい。
いつか吸血鬼だとバラしてやろうと恨みつつ、できるだけ距離を置いていた日の夜のことである。
また聡から連絡があったのは。
大親友という登録していることにイラつきながらも、通話に出た。
「よう。人間栄養ドリンク。もう姫ちゃんに血を吸われたか?」
第一声から癇に障る話し方をする聡。すぐさまスマホを捨てたくなるが、こいつの番号を削除していなかった。
これには自分にも非があり、「うるさい」と牽制するだけに留めた。
「なんだよ、いきなり連絡してきて」
「いやぁ、姫ちゃんに血を吸われた感想を聞いてみたいもんだと思ってさ、つい」
「だから、それは絶対にないっ」
「まぁ、そんなに遠慮するなよ。血を吸わせてあげれば、姫ちゃんは喜ぶぞ」
「ーー切るぞ」
まったく、人をバカにしているのか茶化しているのか。まあま、こいつも昔からこんな陽気な奴であったが、ここまで憎らしくなかったはずなのに。
「まぁ、待て待て。今日はちょっと、頼みがあったんだ」
「お前の頼みなんて聞くか」
深い理由?
そんなに考えないでいいのに。




