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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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22/57

 三 ~  血を吸われることを考えれば……  ~ (4)

 どうも、語弊がある。

 いや、誤解。間違いである。

 言われてみれば、どことなく姫香に雰囲気は似ていた。

「同じクラスの古川くん」

「どうも」

「こんばんは」

 姫香に紹介され、反射的に頭を下げると、優しい声が返ってきた。

 なんだろう。上品という言葉が似合う声に聞こえた。

「ーー友達?」

 首を傾げて聞いてくるお姉さんに、僕はたじろいでしまう。

 こいつに襲われそうになりました、とは決して言えないのだから。

「それとも彼氏?」

「いえ、それはーー」

「ううん。まだ、そこまではなってない」

 即答するつもりであった。正直、こいつと恋人関係は絶対に有り得ないのだから。

 しかし、その声に被さるように姫香が遮る。慌てて僕は手をブンブンと、強く振った。

「おま、何、勝手なことを言ってんだよ」

「ーーえっ、だってそうじゃん。ほら、あの教室で私を押し倒してーー」

「それは、お前だろっ」

「それに保健室に私を連れて優し~く」

 姫香は自分の体を抱きしめるように腕をギュッと抱き、恥ずかしがるように首を振る。

「ーー保健室?」

 姫香の語弊のある説明に、お姉さんの眉が歪み、訝しげに僕を睨んでくる。

「おま、お前はなんで人に誤解を招くような言い方をするんだよっ。違いますから。絶対にそんなことはないですから」

 ふざけて体をクネクネとする姫香を一括し、完全に危ない男として睨んでいるお姉さんに、両手を見せて制した。

 まったく、本当に学校でのこいつとはまったく違う。どうやら、こっちが本性なのか? それとも二重人格?

 吸血鬼で二重人格? それはないか……。

「じゃぁ、せめて「繋」になってよ」

「繋? この子が?」

「またそれか。だから断るっ」

 繋と聞いても平然とするお姉さん。やはり吸血鬼では驚かないのか。

「ふ~ん。この子が候補の子なの?」

「ーーそ。まだ全然、乗ってくれないんだけどね。ワガママで」

「ーーどっちがだっ」

 一体、どれだけ同じ言い争いをしなければいけないんだ。まったく疲れる。

「ごめんね。妹が迷惑かけちゃって」

「あ、いえ、そんな」

 なんだ、この真っ当な反応は。笑って謝ってくるお姉さんに僕は恐縮です、と手を振って苦笑した。

 いやいやいや。これが常識ある人の礼儀であるはずだ。それこそ、本当にこの二人は姉妹かと疑いたくなる。

「さ、姫、帰るよ。あんた、どうせ薬まだ飲んでないんでしょ」

「ここで古川くんが血を吸わせてくれたら、楽なんだけどな」

 と、媚びるように見てくる姫香から顔を背けた。もう返事すらする気にならない。

「ほら、行くよ。結構、この公園、変な感じだからね。あんたもバイト帰り危ないんだし。それにこんなところで発作が起きても大変なんだし」

 あれ。そんなにこの公園、何かあるか?

 ふと、もう一度公園の内部を眺めてみた。

 街灯のない内部は確かに人目はなく、物騒なのは理解できそうだ。

「じゃぁ、また明日ね、古川くん」

「あなたも気をつけてね」

「あ、はい。どうも」

 反応がまったく違う、と呆気に取られながらも、会釈をして、僕らは別れた。

 この公園には何かあるらしいが、発作の起きた姫香の方が危険じゃないか、と遠離る二人に毒づきながらその場を離れた。

 本当に姉妹なのか?

 いやいやいや。それにしては、雰囲気が違いすぎるだろ。

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