三 ~ 血を吸われることを考えれば…… ~ (3)
これは偶然?
それとも、必然なのかな?
どうなんだろう?
2
夜にコンビニに行ったのは、ただの思いつきであった。
テレビで新作のアイスを紹介していたのを観ていると、無性に食べたくなり、衝動に負けて体が動いていた。
家の近くにもコンビニはあるのだが、新作の商品を買うのなら、駅前まで足を伸ばす方が品揃えがいいと思い、遠い店舗へと向かった。
食欲に疲労は否めないのである。
目的のアイスを買うことができ、上機嫌で歩いていた。アイスのほかにも、スナック菓子をつい買ってしまった。これも疲労が欲しているのだろうか……。
ふと、帰り道で夜空を見上げると、月が姿を現しており、地上を淡く照らしていた。
閑静な住宅街を歩いていると、左側に公園が広がっており、そこだけ明かりが途切れていた。
公園は児童公園とは違い、ジョギングコースを伴った、いくつかのスペースが区別された広範囲の公園となっていた。
入口はまだ街灯もあるので明るいが、奥は漆黒の闇に包まれており、何があるのかは見えない。
今はジョギングをしている人はおらず、漆黒の闇が手招きをしているようで、眉をひそめた。
ふと足を止めてしまい、ずっと眺めてしまう。
「こんなに暗ければ、人が襲われてもわかんないな…… って、何考えてるんだ、僕は」
ダメだ。昼間の姫香の影響だろうか。とんでもない想像をしてしまう。
バカか、と戒め、額を何度も叩いた。
いや、あの発作が起きているときなら、やりかねないのか。あいつなら……。
「後ろから首筋をかぶられそうだな……」
「いいの? かぶっても」
顎に手を当てて想像していると、不意に背中から声をかけられた。
間違えるわけない。この声は姫香である。
なんでこんなところに、と恐れつつ、振り返った。すぐさま僕の顔は歪む。
目を細め、ピースサインを作る姫香に出くわせてしまい。
「……お前、なんでこんなところに?」
時間は夜の十時半を回ろうとしていた。ここは学校とは逆の方向でもある。そんなところに、制服姿で現れた姫香に、率直な疑問が浮かんだ。
ただ、普段と少し違い、髪を縛り、ポニーテールにしていた。いつもと違う姿にも、多少戸惑ってしまう。
まさか、本当に誰かを……。
「バイトだよ。ほら、駅前にスーパーあるでしょ。あそこのレジ」
姫香は駅のある方角を指差した。
だよな、そんなふざけたことはない。
真っ当な返事に安堵した。人を襲うなんて有り得ない。
「ってか、バイトとかもするのか」
「当たり前じゃん。言ったでしょ。薬が高いって。そのためにね」
肩をすぼめ、嘆くように呟いた。
「古川くんは?」
「ちょっと、そこのコンビニ」
手にしていたビニール袋を胸の辺りまで上げて揺らしてみた。
「姫、誰その子?」
ビニール袋の中身を気にしている姫香に、彼女の後ろから誰かが話しかけてきた。
視線を横に移すと、一人の女性が姿を現した。
女性はスラリとした細身で、白のワンピース。薄い黄色のカーデガンを着ていた。
背は姫香よりも頭一つ飛び抜けている長身であり、髪は黒く、腰の辺りまでのロングであった。
初めて見た女性に緊張していると、喰い入るように僕を見てくる。
目尻が吊り上がっていて鋭く、鼻筋も高い女性であった。
周りが暗いので、はっきりとはしていなかったが、きっと美人であるのは伝わってくる。
「あ、お姉ちゃん」
お姉ちゃん?
こんなところで会うことがあるとは思わなかった。
だから、ちょっと驚いてる。




