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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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21/57

 三 ~  血を吸われることを考えれば……  ~ (3)

 これは偶然?

 それとも、必然なのかな?

 どうなんだろう?

            2



 夜にコンビニに行ったのは、ただの思いつきであった。

 テレビで新作のアイスを紹介していたのを観ていると、無性に食べたくなり、衝動に負けて体が動いていた。

 家の近くにもコンビニはあるのだが、新作の商品を買うのなら、駅前まで足を伸ばす方が品揃えがいいと思い、遠い店舗へと向かった。

 食欲に疲労は否めないのである。

 目的のアイスを買うことができ、上機嫌で歩いていた。アイスのほかにも、スナック菓子をつい買ってしまった。これも疲労が欲しているのだろうか……。

 ふと、帰り道で夜空を見上げると、月が姿を現しており、地上を淡く照らしていた。

 閑静な住宅街を歩いていると、左側に公園が広がっており、そこだけ明かりが途切れていた。

 公園は児童公園とは違い、ジョギングコースを伴った、いくつかのスペースが区別された広範囲の公園となっていた。

 入口はまだ街灯もあるので明るいが、奥は漆黒の闇に包まれており、何があるのかは見えない。

 今はジョギングをしている人はおらず、漆黒の闇が手招きをしているようで、眉をひそめた。

 ふと足を止めてしまい、ずっと眺めてしまう。

「こんなに暗ければ、人が襲われてもわかんないな…… って、何考えてるんだ、僕は」

 ダメだ。昼間の姫香の影響だろうか。とんでもない想像をしてしまう。

 バカか、と戒め、額を何度も叩いた。

 いや、あの発作が起きているときなら、やりかねないのか。あいつなら……。

「後ろから首筋をかぶられそうだな……」

「いいの? かぶっても」

 顎に手を当てて想像していると、不意に背中から声をかけられた。

 間違えるわけない。この声は姫香である。

 なんでこんなところに、と恐れつつ、振り返った。すぐさま僕の顔は歪む。

 目を細め、ピースサインを作る姫香に出くわせてしまい。

「……お前、なんでこんなところに?」

 時間は夜の十時半を回ろうとしていた。ここは学校とは逆の方向でもある。そんなところに、制服姿で現れた姫香に、率直な疑問が浮かんだ。

 ただ、普段と少し違い、髪を縛り、ポニーテールにしていた。いつもと違う姿にも、多少戸惑ってしまう。

 まさか、本当に誰かを……。

「バイトだよ。ほら、駅前にスーパーあるでしょ。あそこのレジ」

 姫香は駅のある方角を指差した。

 だよな、そんなふざけたことはない。

 真っ当な返事に安堵した。人を襲うなんて有り得ない。

「ってか、バイトとかもするのか」

「当たり前じゃん。言ったでしょ。薬が高いって。そのためにね」

 肩をすぼめ、嘆くように呟いた。

「古川くんは?」

「ちょっと、そこのコンビニ」

 手にしていたビニール袋を胸の辺りまで上げて揺らしてみた。

「姫、誰その子?」

 ビニール袋の中身を気にしている姫香に、彼女の後ろから誰かが話しかけてきた。

 視線を横に移すと、一人の女性が姿を現した。

 女性はスラリとした細身で、白のワンピース。薄い黄色のカーデガンを着ていた。

 背は姫香よりも頭一つ飛び抜けている長身であり、髪は黒く、腰の辺りまでのロングであった。

 初めて見た女性に緊張していると、喰い入るように僕を見てくる。

 目尻が吊り上がっていて鋭く、鼻筋も高い女性であった。

 周りが暗いので、はっきりとはしていなかったが、きっと美人であるのは伝わってくる。

「あ、お姉ちゃん」

 お姉ちゃん?

 こんなところで会うことがあるとは思わなかった。

 だから、ちょっと驚いてる。

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