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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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19/57

 三 ~  血を吸われることを考えれば……  ~ (1)

 人殺しにはなりたくらいからね。

 やっぱり我慢してる。

           第三章



            1



 どこか話をはぐらかされた感じなのは否めなかった。

 だったら、お前が血を吸わせろと反論してみるが、「僕は無理」との一点張りに終始し、最後は「ちゃんと姫ちゃんと話したら」と一方的に話は切られた。

 まったく。自分からかけておいて切ってしまうとは身勝手な奴である。



 釈然としないまま時間はすぎてしまう。

 次の日、結局は聡のおかげで寝不足気味になっていた。これではアクビが止まらない。

 まぁ、聡の話をまったく鵜呑みにしていない、と言えば嘘になる。人を殺してしまうかも、と聞いてしまうと、気がかりになってしまう。

 そして、当の本人である姫香は、昨日のふざけた様子はなく、ほかの女子生徒と話して盛り上がっていた。

 周りと溶け込む姿は、ごく普通の女子高生であり、違和感なんてない。

「なぁ、今田、ちょっといいか?」

 少なからず、聡のことが影響していた。

 昼休み、パンやジュースを買いに賑わう売店で、同じようにパンを買っていた姫香に、つい僕は話しかけてしまった。

 突然話しかけられた姫香は、少し驚いた様子で微笑み、「何?」と首を傾げた。

 その落ち着いた仕草は、僕にしては猫を被っているとしか見えず、憎らしい。

 が、ここは平静を装い、姫香を屋上に誘った。姫香はちょっと戸惑いながらも「うん」と頷いてくれた。



「やっと、血をくれる気になってくれた?」

 屋上に出て、ほかに生徒がいないのを知ると、それまでの仮面を取った。すぐさま姫香はくるりと体を反転させて、すぐに迫ってきた。

「んなわけあるか、バカッ」

 即答である。そんなことのために呼んだんじゃない。

 それでも胸の辺りで手を組み、期待に満ちた眼差しを注ぐ姫香をあしらい、辺りを見渡した。

 閑散とした屋上。確かにほかの生徒はおらず、よく晴れた空にたたずむ、太陽だけが僕らを見下ろしていた。

 燦々と輝く太陽を憎らしく睨み、屋上の淵に設置されたフェンスに近づいて座った。

 まったく話に乗らない僕に苛立ちながらも、姫香も僕の隣に座り、先ほど買っていたパンを広げていた。

 いただきます。とパンを頬張る姫香。その姿を見ていると、本当に吸血鬼なのかと疑ってしまう。

「なぁ、発作のことを聞いたんだけど、あの薬ってそんなに大事なのか?」

「薬? あぁ、あれ。うん。あれがないと、私って人を襲うから」

 それは命にも関わるのかがずっと気がかりになっていたので、つい聞いてみた。

「やっぱり、特別な配合がされていてさ、高いんだよね。ホント、困る」

 高いって、ただのサプリだろ、とは言えなかった。

 姫香はまったく、と嘆きながらパンをさらに頬張る。

「おかげでさ、今日もバイト。親もさ、私の体のことを知っているなら、ちょっとは援助してくれたらいいのに。イヌくんだって、安くしてくれたら助かるのに、「商売だから」って安くしてくれないのよ。ホント、ケチッ」

「じゃぁ、あの薬を飲まない方法って本当にないのかよ」

 素朴な疑問であり、昨日の夜も聡にはぐらかされたことでもあった。

 何気に聞いただけであったが、姫香の動きが一瞬止まり、手を下ろすとまばたきをする。

 ふと空を見上げたとき、僕はしまった、と後悔に襲われる。

「ーーあるよ」

 吸血鬼だって。苦労しているんだから。

 いろいろとね……。

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