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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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17/57

 二 ~  吸血鬼? 吸血鬼って普通なのか?  ~ (7)

 吸血鬼のイメージ。

 それは誰もがほぼ同じかもしれない。

             7



 吸血鬼? 吸血血筋?

 なんだ、それ。いきなり聞かされても、信じるわけないじゃないか。

 湧き上がる疑問があるなかでも、ふとした瞬間に一気に冷めてしまうこともあった。

 それは黙ってしまった姫香の横顔。ふざけていたなかで垣間見た姿は嘘をついているようではなく、僕の心をざわつかせてしまう。

 だからなのか、時間が経っても気持ちは整理できず、モヤモヤしたまま、夜を迎えていた。

 自分の部屋のベッドに寝そべり、意味もなく白い天井を眺めていたときである。スマホが鳴ったのは。

 誰からだ、と手にしたとき、僕は訝しげに眉をひそめる。

 聡(大親友)

 と表示されていた。

 思いがけない名前に、咄嗟に体を起こした。

 どういうことだ? あいつに番号を教えた覚えはないぞ。

 恐怖に襲われながらも、けたたましく鳴り続けるスマホに観念して、出てみた。

「よう、亮平。電話は早く出ろよ。でないと、待ってる方はつらいんだからさ」

 僕の心配をよそに、陽気な声が鼓膜を響かせた。間違いなく聡の声である。

「当たり前だろっ。お前だから出なかったんだよ。それに、なんでお前が僕の番号を知っているんだ? 教えた覚えはないぞ」

 嫌味と怒りを混ぜて、ぞんざいに答えた。

「いや~。ほら、お前姫ちゃんと話してるとき、ちょっと黙っていたことがあっただろ。そのときにちょっと借りたんだよ」

 確かにしばらく黙っていた。でも、あんな短時間でどうやって……。

「……ってか、ロックはどうやって」

「う~ん。それはいろいろとさ。まぁ、企業秘密ってことで」

 なんなんだ、こいつは。

 なぜか、驚きや恐怖は通り越してしまい、呆れて声も出なかった。

「まぁ、まぁ、そう喜ぶなって」

 なんなんだ、こいつは。吸血鬼とやらは、自分勝手な奴しかいないのか、と疑いたくなる。

「と、まぁ、冗談はここまでにして、と」

「冗談って、僕は何も言っていないぞ」

「はい、はい。でな。知りたいのは何がきっかけで姫ちゃんがお前に吸血鬼だって教えたのかなって思ったんだ」

 すると、聡は神妙な口調に変わった。つられて僕も息を飲んでしまう。

 話すべきなのだろうか……。

「……きっかけって、そんなものは」

 姫香に襲われたのだ。思い出したくもないが、迷いつつも、ついそのことを喋ってしまった。

 今でも、あのふざけた顔がすぐに浮かんでしまう。

「……なるほどね」

 ただ、聡の反応は違っていた。予想としては、笑われると覚悟していたのに、黙って何かを考えているように感じた。

「やっぱ、発作が出ちゃったんだな」

「発作って、なんだよ」

「お前、吸血鬼は誰にでも襲いかかるとでも思ってるのか?」

「そりゃ、吸血鬼のイメージはそうだろ。誰だってそうだろ。映画や、小説ならそうだし、実際僕は襲われたぞ」

 嘆いていると、聡の溜め息が聞こえた。

「何も、吸血鬼みんながそうじゃないさ。大半の吸血鬼は我慢してんのさ。人の血を吸うことをね。まぁ、それ以外は普通の人間と同じなんだし、当たり前だけどね。んでさ、それでも血が吸いたくて仕方がない衝動に駆られることもあるんだよ。たまにね。で、その気持ちを鎮めるのに薬を飲んでるんだよ」

「薬ってあの渡していたやつ?」

「そう、あれ。それで、薬を飲まない時間が長くなると、衝動に歯止めができなくなって、それで発作が起きちゃうんだね。まぁ、それも時間が経てば治まるだろうけど、お前は運悪くそこに居合わせちゃったんだね」

「……運悪くってなんだよ」

「ま、ごまかさずちゃんと話したってことは、お前なら大丈夫って思ったんじゃないか。吸血鬼だってバレても」

 なんだよ、それは。あの顔にそんな節はなかったぞ。そもそも、そんな薬一つで……。

「ってか、なんだよ、あの薬。あれは自主規制の塊じゃないか」

「自主規制? なんだ、それ?」

 っと、それは僕の主観か。 

 吸血鬼にだって、いろいろとあるんだよ。

 いろいろと、ね。

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