二 ~ 吸血鬼? 吸血鬼って普通なのか? ~ (6)
吸血鬼、吸血鬼って、そんな話ばっかりじゃ、頭が混乱しそうだ。
6
「んなわけないじゃん。僕は人間だよ。それになんだよ。聡でいいよ、昔みたいに」
だよな、だよな。変なことを言っているのは僕だよな。
「でも、強いて言うなら、姫ちゃんみたいな吸血鬼を見守るような存在だね、僕らは」
はて……。
もうお手上げである。実際、両手を二人に制して止めた。
「あれ? なんだ、姫ちゃん、こいつにちゃんと事情を話してないの?」
「うん。だって、私のこと拒んでばっかりで、話も聞いてくれないんだもん」
「当たり前だろっ。「血を吸わせろ」っていきなり言われて、はいそうですか、って言えるかっ」
「わかった、わかった。じゃ、僕が説明してあげるよ」
説明?
「まぁ、亮平が想像してる通りの吸血鬼だよ、姫ちゃんはね。血を吸わないといけない体なの。極端な話、死んじゃうかも」
「だから、血がほしいの。私は」
「で、実は吸血鬼は家族全員がそうってわけじゃないんだ。世代によって、生まれないときもある。まぁ、隔世遺伝っていうか。世代を越えて生まれることになっているんだよ。簡単に言えば、親が吸血鬼だっら、その子供は吸血鬼にはならない。なぜか、二世代続けて吸血鬼は生まれないんだ。早くて祖父母がそうなら、その孫がなるってね」
……はい?
「んでね、なかには何世代も吸血鬼が生まれないことがあるんだ。まぁ、僕の家系はそうだね。僕の場合は、ひい爺ちゃんの爺ちゃんは吸血鬼だったらしいけどね。それで、今の世代に吸血鬼がいない、でも吸血鬼の血が流れる者を、“吸血血筋”って言うんだ。う~ん。ややこしいねぇ」
そこで聡は一拍置き、お茶を一口飲んだ。
「んで、問題はここからかな。吸血鬼になった子はやっぱり、人の血がほしくなっちゃうんだよね。で、どうしてもそれができない人に対しての対策として、この薬があるんだ」
そこで姫香がさっき受け取っていたビンを揺らして見せた。
「まぁ、素直に血を吸わせてくれる人がいるといいんだけどね」
挑発的に話す聡。姫香はうん、うんと力強く頷く。
「薬ってそれは何が成分なんだよ」
「だから、言ってるじゃない。ヘビのーー」
「あぁ、もういい。そんなの飲んで平気なのか?」
もう自主規制は聞きたくなく、強くかぶりを振った。
「そんなに気になっているなら、血を吸わせてあげなよ。そうすれば、薬に頼ることはないんだから。まぁ、人助けだと思ってさ」
聡の指を立てた提案に、姫香はうん、うん、と力強く頷いている。
「嫌だね。それだけは絶対に嫌だ。そもそも、なんで僕をこんなところに連れて来たのさ」
「それは私のことを信じてほしかったから。私以外の人から話を聞けば、信じてもらえると思って」
まだ冗談だと僕は考えている。だからこそ、急に神妙な面持ちになってうつむく姫香に驚いてしまう。これでは強く反論できなくなり、僕も黙ってうつむいてしまう。
本当なのか?
しばらく沈黙が流れてしまった。
居心地が悪い息苦しさに、下唇を噛んでしまう。
「そんなに難しく考えないで、吸われたらいいじゃん。簡単に言えば、“人間栄養ドリンク”みたいな?」
声を出したのは聡である。
「バカかっ。じゃぁ、お前が代わりに吸われたらいいじゃん」
「いやいや、僕は無理だよ。だって、姫ちゃんはお前を選んだんだからさ」
「だから、知るかっ」
やはり、怒鳴るしかなかった。
吸血血筋?
人間栄養ドリンク?
なんだそれはっ。




