第28話 不信感
爆発の轟音と巻き上がる煙に目を伏せながらシャルラを担いで走り出す。
爆発の瞬間にエドが片手で剣を振おうとした光景を目にし、完全な直撃ではないことを予期して距離を取る。最初の攻撃もこうして防がれたのなら今回も生きている。そう思って視線を後ろにやりながら地面を蹴った。
「シャルラもう一発いけるか?」
「もちろん」
肩に担がれたシャルラは未だ土煙で隠れているエドの仮想位置へ再び魔法を放つ。
正面が無理なら不意打ちでしか戦えない。それをよく知るクロードだからこそこの作戦をとった。だが成功率はそれほど高くなく、博打のようなものだったか逃げる時間くらいは確保できると、岩陰に目を向けた時、
クロードの目の前を大剣が通り抜けて壁に突き刺さる。
後一歩進んでいれば貫かれて死んでいた。
脇目を振らずに逃げ押せていたのならばおそらく、
「魔術師だったか」
土煙の中から酷い火傷を負いながらもエドは立っていた。
直撃は免れたようで、致命傷にはなっていなかったが、防ぎきれなかった熱量が衣服と皮膚の少しを焼いていた。
「生きてんのかよ」
燃える衣服を破り捨て、筋肉質な肉体が跳躍の構えに入っていた。
全身の肉体に身体強化の魔法が合わさり、人間の域を遥かに超えた速度でクロードへ投げた剣を回収するために飛びかかる。
片手に残っている剣を突き出して迫るエドに、抱えているシャルラを放り投げて剣を防御のために強く構える。
弾丸のように迫り来るエドの剣に付与を起動した魔剣で斬撃を耐えきるが、衝撃のせいで地面を転がる。
なんとか体勢を立て直そうと手をついて立ち上がると、壁に突き刺さった剣を引き抜いて二刀流の構えをに入っている敵に舌打ちをした。
扉の前に突き刺さっている剣は二本残っている。
もしも相手が四刀流の使い手なのなら、実力の半分しか出していない。相手は本気では無いというのにクロードは後手に回っている。
先程使った束縛術はもう二度と通用しない。
「まさか魔術師だったとな、ただの子供が剣を持っているだけならもう首を跳ねている頃だ」
身体強化魔術は魔法の上位互換だ。
そう言っても魔術は時間と共に命を削り、魔力が尽きれば発動できないデメリットがあるが。性能面では上を行っているはずなのだ。
この状況でクロードが押し負けているという事は、これから先剣で渡り合う事はできないと表してもいる。
その上魔術の事が相手にバレてしまっている時点で、詠唱を伴わない魔法としての不意打ちはできない。相手が魔術を使うと知っている事で出せる手札が減ってしまった。
「魔術を使う人間か、……貴様は後何年生きる?」
「何言ってんだ」
何も動じないと心掛けていたクロードだが、同情に近い目を向けられて聞き返してしまった。
「魔術は魔族の技だ。寿命の多い魔族が使う命を削って起こす事象」
「クロード!」
今まで転がっていたシャルラが立ち上がり、それは本当なのかという目で彼を見ていた。
その技は命を削る物で、死ぬ可能性があるとは本当なのかと。そんな事は一言も言ってないだろうと目で訴えていた。
「聞くな!」
「神の真似事を人の身で行う代償にしては安い物だが、人間の寿命でそれをするのはリスクが多すぎる」
「貴様は後何年で死ぬ?いや、今死んでもおかしくないのだろう?」
魔術の使いすぎは死に至る。
そんな事はクロードが一番最初に許容した物だ。仕方がないと区切りをつけた。そうするしか彼に戦う手段はなかった。
それは彼が、ハクだった頃に使徒であるティアと触れる時間が多かった為に、魔法制御器官が使徒の力に耐えきれず崩壊したとシオンは仮定した。
使徒の力を制御できなかったティアが無意識にハクに与えた影響、魔法制御器官は魂の一部。
「そんなもん最初から知ってる、それを知った上でこうして使ってる」
「そうか、哀れむ必要はないな」
「当たり前だ、死ぬのが怖くて自爆ができるか」
いつもと同じように魔術で剣を作り出し付与の印を刻み込む。
「そういう事だシャルラ!ここで止まる方が俺への侮辱だ」
「それで良いの?」
「だったら俺が死ぬ前にこの戦いを終わらせろ」
それで何かが解決するとは思っていない。
クロードは確実に今回の件が深い溝を生んだと分かっている。
それでもこの力を使い続ける事に後悔はない。
だから今だけはシャルラを丸め込んで、止められる事だけは避けたかった。
「分かった……、じゃあ」
シャルラが袋をクロードに投げつけて、それを受け取れと目配せして掴み取ると。中に入ってたのは魔石。彼女が取っているとは思ってもなくて驚くが、
「綺麗なやつは集めてたけど、あなたが死ぬ方が嫌」
「全部使っても文句は言うなよ」
「死んだら倍以上文句言うから」




