第27話 戦闘開始
自身の浅はかさと相手の強さを見誤ったことに舌打ちをしながらクロードは後退する。二本の大剣を手に持ったまま、男はクロード達へ視線をやって腰を落とした。
「使徒を殺すのは少々骨が折れそうだ」
逆立った赤髪に背丈ほどある大剣2つを苦もなく持ち上げて、強烈な殺気を放つ。
「来ない方が正解か」
相手の実力は剣を合わせた時点で察しがついた、本来ならば見るだけで理解しなければならないがクロードはその域に到達しておらず、相手の強さを図ること術も知らない。
そのため実際に剣を合わせてでしか理解できない。
「どうするの?」
「殺されない程度に牽制して逃げる」
シャルラに魔法の合図を送り、クロードも剣に仕込んだ付与を発動させる。
「……起動」
煌びやかな相性などない不格好な剣に光が宿り、剣自体の硬度と鋭利さを概念で補強する。概念付与の中でも初歩の初歩、そして剣を形作った魔道具ーー魔剣には必須な付与である。当然相手の大剣にも付与されていることを考慮して圧倒的に不利だと冷や汗を拭った。
「そんな魔剣があったのか」
クロードが魔剣を起動させると驚いた表情を浮かべた後、物珍しそうに視線を向けてくる。
「あんたのよりは貧相…………その剣に記された術式はいくつある?」
クロードが刻み込んだ術式は2つ、硬質化と鋭利化。
それは魔剣を作るときに必ず記す物だ。
だが相手の剣の側面から見える術式の数は五つを超えている。
外側に刻まれた術式は補助に使われる物で、本命の術式は内側に保存される。
よって外側にある補助術式が多ければ多いほど、中身にある本命は強く強大。
「俺は錬金術師ではないからな、主に聞いてくれ」
技量で負けているクロードに武器の性能でも負けているとなれば、勝ち筋は限られてくる。相手の虚をつくか死に物狂いの自爆。もしくはチームワークでリンチ。
どれを取っても無理だと内心投げ出したいがそうもいかないのが現実だ。
「その主とお話ししたいんだが通してくれるか?」
「この先には居ないが通すわけにはいかない。俺は主から誰1人として通すなと命を受けている」
何度言っても聞かないだろう返答を無駄だと切り捨てて次へ向かう。
「その先にはいかないから逃してくれないか?」
逃してくれるのなら初めから飛びかかったりはしない。
この台詞は時間稼ぎ、背後にいるシャルラへ詠唱を合図して放つ先は相手の地面。爆発と巻き上がる石で視界を奪い作戦に切り替える。
「この場所は二度と日にあたってはならないと主は言った。同じ惨劇を繰り返してはならぬと」
それが理由だと言わんばかりに地面を踏み込む男にクロードは作った笑顔で話しかける。
「お前の名前を教えてくれないか?」
これから死にゆく者にせめてもの情けだと口を動かすが。それと同時に地面を強く蹴り、神速を持って距離を積めて首に剣を走らせる。
「エド」
首に迫る剣を見て微動だにしないクロードを、戦うことを諦めたのだと決め付けて殺しにかかったが、彼の反応が違うと気づいたときにはもう遅かった。
「そうかエドか……」
何かを諦めたクロードは右手を突き出して、
「……死んでくれ」
クロードがそう呟くと魔力が鎖となって四方からエドに絡みつく。
魔力の塊が鎖となりてエドを押さえつけて地面に叩きつけると動きを拘束する。
(束縛術!)
束縛術とは対象を特定の位置に縛り付ける物で、それは罪人の裁判で使われる魔道具の一種。だがそれはあくまで魔道具の話。そんな魔法は存在しない。
そしてその魔道具も術式の関係上巨大になり、見ればすぐにわかる。
位置と情報、そして名前。
それら全てを記録して縛り付ける魔道具。
縛り付けると言えど完全に封じ込める物ではなく、身体が重くなるだけ。それにその位置から移動してしまえば効果は消える。
実戦で使うなどという事は聞いたこともない。
それに魔道具でしか再現不可能だと、錬金術師に使える騎士として知っていた。
「束縛術、五点鎖結」
右手に持った魔石と自身の魔力。そして魔道具は制作者の術式を刻み込んだ物だ。よって制作者ならばその術式を脳で理解している、
魔術師は術式を魔術に変える。
そして術式は身体そのもの。
「シャルラ!」
「了解!」
束縛から逃れようと身体を動かすエドに火柱が放たれる。




