第23話 敗北
残り少ない魔力量では魔術を2、3発撃てばもう使えない。
そして折れた剣の代わりを生成し、動くようになった身体で握りしめ。これだけは落とさぬように、手放さぬようにと思って最後の身体強化と共に持ち上げた。
既に死に体で立っているのがやっとなガーゼ、表面上と重要器官を補っただけのクロード。これならば互角だが、クロードには仲間がいる。
戦力差は完全に翻され、ガーゼに勝ち目はない。
「クロード、お前だけ絶対に殺す」
血塗れの身体で衣服のポケットから何か赤色の物体を取り出し、地面に放り投げる。
魔力を帯びたその物体は眩い光を放ったと思えば爆発を引き起こした。
「ガサ入れが来た時、俺達は証拠と一緒にこの洞窟を破壊することに決めている」
何処に仕込んでいたのか、同じような爆発が誘爆されて洞窟そのものが崩れ始める。
今もなお聞こえてくる爆発音に耳を塞ぎ、洞窟自体の崩壊が近づ来つつあることを悟った。
「ガキ共が逃げた時点で俺達は牢獄行きだ、だったら好きに殺してもいいなあ」
見つかる前に証拠を全て破壊する、それが奴らのやり口。
だが証拠となる者達が外に出てしまった時点で洞窟を破壊して逃げる以外の選択肢はなくなった。
洞窟の破壊は遅かれ早かれあった事、それがクロードてシャルラを巻き込んでの事なだけ。そして全てが破壊され、生き埋めになるまでの時間は残り少ない。
どう転ぼうとガーゼに助かる道はない、怪我の治療が行われない限り彼は死亡するのでここで生き埋めになったとしても死ぬことに変わりはない。それについても彼自身が受け入れている。
だからこそクロードを道連れにしようと、最大の好敵手といえる彼を殺したいと戦闘狂は思った。
崩壊が始まった洞窟から逃げ出すにガーゼは障害であり、何としてでも阻止してくるだろう。
「これで最後だ、お前を殺して俺達は生きる」
洞窟の完全破壊まで残り数分。
その時間以内にガーゼを殺し、脱出をしなければならない。
「一緒に死ねよ」
クロードに向かって跳躍し、懐に入りこんで剣を振るうガーゼの剣を受け止めて力の限り押し切る。斬撃をずらし、空いた顔面へと肘を叩き込んで蹴り飛ばす。
衝撃で地面を転がるガーゼはすぐさま起き上がり、獣のように飛びかかってくる姿に、
「……力を貸してくれ」
クロードは聞こえるかどうか分からない程小さな声でそう言った、
意地を張り過ぎた事を恥ずかしがっているのか、それとも恥ずかしくなったのか、シャルラには背中しか見えなかったが。
「うん!」
本当の意味でクロードに必要とされた。
居るだけの何もしないものではない。ただそこにいて見ているだけではない。守られるばかりで何もできないのではない。
彼の口から共に戦ってくれと願われた。
「大気のマナよ、私が命ずる、炎となりて敵を穿て『ファイヤーボール』」
シャルラの詠唱によって火の玉は凄まじい速度と威力を持って放たれた。
間一髪の所で避けたガーゼだが、壁に当たった魔法が貫いて行くのを目にして警戒する。
「いつのまに強くなった?」
「それは知らない、でもこれで足手まといにはならないでしょ?」
何が嬉しいのか笑うシャルラの髪がクロードの掠れた視界では白く見えた気がした。
「頼りにするか、いいのか?」
もう一度戦闘態勢に入りつつあるガーゼへ剣を向け、遠回しに「背中を任せる」と伝えた。
「聞くより先に任せなさい!」
連続で放たれる火炎はガーゼに襲いかかる。
なんとか避けようと回避するが、その先には剣を振るったクロードの姿。無理にでも捻って直撃を避けたがクロードの影に隠れて見えなかった火炎放射が衣服共々焼き焦がす。
燃え上がった身体のまま地面を転がって後退するガーゼに追い討ちを仕掛け、正面から斬りかかる。
「終わりだ!」
そう言って剣を振り下ろしたとき、
洞窟の崩壊が促進された。
崩れ落ちる床が闇に包まれた底の見えない地下へと落下して行く。
クロードの足元にもヒビが入り、ガーゼへ剣を突き立てる事を諦めて未だ崩れていない場所まで飛んだ。
だが地面に倒れ動かなかったガーゼは崩れる地面と共に落ちて行く。
崩れ落ち、抜けた床から覗くのは塗りつぶされたような深淵。落ちたら必ず死ぬとまで思わせる高さ。ここから落ちたのなら確実にガーゼは生きていない、あの怪我も相まって死ぬだろう。
「今すぐ脱出する」
崩れ始める床を駆け抜けてシャルラの手を掴んで走った。
崩れ落ちる床の合間を縫うように走り抜け、なんとか脱出を試みるものの。
完全に崩壊した地面と落ちる天井に阻まれて落下。




