第24話 本当の旅立ち
顔にかかる水滴に目を覚まし、クロードは身体を勢いよく起こした。
「うわ!びっくりした……」
クロードの目の前には焚き火を囲んで座り込んでいるシャルラの姿とそれ以外全てが闇に包まれた洞窟の最深部だった。
「……ここは何処だ?」
硬い鉱物出てきた地面に手を当てて膝をついて立ち上がる。怪我のほとんどはシャルラの治癒魔法によって感知されていたため痛みは感じなかった。
「覚えてないの?」
何が棒のようなもので火の中をかき混ぜるシャルラは不思議そうに視線を戻す。あたかも当たり前のように火を前にして座っている彼女の姿に、クロードは困惑に近い物を抱きながら反対側に腰掛けた。
「あなたが凄い空飛ぶ魔法を使ったおかげで生きてるんでしょ」
「空飛ぶ魔法?」
「ほら……なんだっけ。グラ……ぐあ?」
目を瞑り、なんとか思い出そうとするシャルラだったが、どうにも思い出せそうもなく諦めて話を切り替えようと手を叩いた。
「とにかく宙に浮いたおかげで助かったの、その後すぐに倒れちゃったから苦労したけどね」
クロードの顔へ指を刺していたずらに笑みを浮かべたが、火の加減出てきた影と俯いて下を向いていたせいで届く事はなかった。
「……悪いな」
「実際はこうして生きてるし、逃げ出せてはいるから許す」
ゆらゆらと揺れる炎はシャルラとクロードの居る空間だけを薄らと照らしていた。
それ以外は闇に包まれており、何処に何があるかすら見えず生物の気配もない。
「こうなった以上は最後まで付き合ってもらうから」
膝を抱えて前のめりになる彼女の顔へと自然と視線が吸われ、照らされる白い髪と幼いながらも整った顔立ちをしている少女に見惚れてていた。
返事が返ってこない事を不服と思ったのか頬を膨らませようとするシャルラに当たり前だと返す。
「……分かってる、命令だからな」
「約束は守らないくせに」
皮肉げにわざわざクロードの横に座り直すシャルラに、居心地の悪さを感じながらも絞り出したような声で返事を返す。
「そうだったな」
パチパチと音を立てる炎によって照らされ、視力が回復している事でシャルラの髪の色が白い事に気づき少しばかり驚いたがすぐに落ち着きを見せて図太くため息をついた。
クロードが見る3人目の使徒。それがこんな所にいたとは思いもしなかったが事実なのだから仕方がない。
「お前の髪の毛って白だったんだな」
「そうだけど」
それが何かという顔をして聞き返すシャルラに、言葉が詰まりながらも聞き出した。
「生まれつき?」
「うん」
「そうか」
使徒は貴重な戦力として国に重宝されるとクロードは聴いており、中には無理やり捕らえてまで確保に走る国もいるとティアの事例を知っているからこそ理解できる。
どんな手を使ってでも使徒を手に入れる事を優先している国家もあると、その手段は選ばないことも知っている。
それがもしかしたら人身売買を通じて獲得する事だとしても不思議はない。
白い髪をした人間を捕らえるように依頼し、高値で買い取れば良い。その考えが過ぎってからシャルラが捕まった理由を推測だが察する事ができた。
「いいでしょう?」
羨んだのかと勘違いして自慢してくるシャルラに、クロードは彼女を必ず送り届けることの意味を再確認していた。
使徒だと分かった時点で彼女に普通の生活が送れるはずはない。
どこか安全な土地に、それもシオンのような使徒を守れる力を持った者に預けるのが最善なのではないかと、思考を張り巡らせる。
「これはそうといつまでもこんな所に居る訳にもいかないので」
シャルラの宣言によって思考は中断して彼女へ顔を向ける。
「私を家まで送り届ける一環として一緒に脱出しよう、いいね?」
ーー今だけは専念しよう
ーーシャルラとここから出る事に専念しよう。だから答えを出すのは後にしてくれないか。
それがたとえ巡ってくる問題だとしても、逃げられる物でなくとも。
今だけは苦しみたくないと【クロード=インティウム】はシャルラの手を取って今を生きる事にした。
まともなヒロインが登場したので良かったです




