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異世界最強の翻訳家  作者: 高田大輝
第一章 召喚と王国捜索
26/38

一章 閑話 classmate side story 1

pv数が千を突破しました!

ありがとうございます!

これからも頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!



ちなみに、今回は前回よりも短いです。





 王城の外に位置する庭の一角。庭園の草が置かれていないこの一角は、少人数で訓練するならば最適と言える場所だ。


「はぁあああああ!!!」


 気合の籠った声と共に、翔の力の籠った木剣が振り下ろされる。


 振り下ろされた木剣は、攻撃を察知していたルディアンには当たらない。身を少し捻ることで剣は躱され、逆に振り下ろした剣の勢いを利用され、地面に倒される。


「何度も言ってるが、攻撃する時に声出しちゃダメだろう。今みたいに相手にばれるぞ」

「ですよね。でも声出したほうが力入るって聞いたことありません?」

「威力を上げるのは構わないが、それ利用されてちゃその意味もないだろう」


 翔は苦笑いを浮かべながらそう言い訳するが、ルディアンの真っ当な意見に一刀両断される。


 スポーツなどでは声を上げることはないのだが、何故か剣を持つと声を出してしまう。所謂、癖というやつだった。


 それをルディアンも知っているので、地道に直していくように注意して一度、休憩を挟むことにした。


 侍女から水を受け取り、流した汗の水分を補給する。


「そう言えば翔。お前の能力は“叡智”だったよな?」

「ええ、そうですけど」


 何の前触れもない質問に、飲みかけていた水を飲み込んでから答える。


「“叡智”ってのは確か、一度見た魔法の解析ができる能力だよな?」

「そうですね。俺はそのように理解していますけど……。それが何か?」

「いや、何で魔法に特化しているスキル持ちなのに、剣術を学んでいるのか気になってな」


 自身から望んで剣術を学びに来たのだから、何も言わずにそれを受け入れていたが、よくよく考えてみれば適性に合わない技術を身に着けたところで行ける高みはたかが知れてしまう。


 翔が召喚者であり、その意思の尊重が義務付けられているからこそ、本当に良いのか? 程度の問い掛けで終わらせたが、これが軍に志願してきた者ならば、全力で転属を薦めただろう。


 翔はルディアンの質問を受けて、うーん、と顎に手を当て考える素振りを見せる。


 すぐにその理由が思いついたのか、翔は顎から手を離し答える。


「俺が向こうの世界にいた頃にですね。あるゲームにハマっていたんですよ」

「ゲームと言うのは、スポーツとかそう言う類の物と考えていいのか?」


 ルディアンは、この数週間でこちらの世界と翔達の世界の価値観であったり、ものの違いなどを身に染みて知っていた。だからこその質問だ。ここで躓けば、この後の話などは全く入ってこない。


 ルディアンの危惧したとおり、翔の言ったゲームとはパソコンで行うゲームのことだった。


 ルディアンの為に手短にゲームの説明をする。それを聞いたルディアンは、技術的な開発を行っている人達に聞かせたら大興奮だろうな、と翔の説明を理解した上で発言した。


 前提を話し終えたので、ようやく本題に入る。


「このゲームは、所謂ファンタジー系――この世界を模した世界を題材とした世界で、俺は日菜と一緒にそこそこ有名なプレイヤーだったんですよ」


 そのゲームは、未だ物語でしか生まれていないフルダイブ型VRゲームに最も近いとされるゲーム会社が配信しているゲームで、その人気は半端ではない。


 本会社が日本にあり、サーバーが日本にしか無いと言う昨今のゲーム界からすれば少し歪な会社だが、その内容はとても素晴らしいものだ。


 グラフィックやゲーム性、キャラメイクの多様性やマップの広大さ、その他自由度など、その他のゲームとは一線を画すようなものだ。中でも、操作性が少し変わっており、これがこのゲームの特徴とも言えた。


 種類で言うと、『マニュアル』と『カスタム』に分かれている。


 『マニュアル』と言うのが、従来の操作方法だ。例えば、『W』なら前進、『S』なら後退、と言った具合の、一般的なもの。


 ゲーム初心者でも問題ないように操作できるように、簡単にしてある。


 では『カスタム』は? というと、これの操作が限りなく難しい。


 基本的な操作は『マニュアル』と変わらないが、本来攻撃などに使用するキーが撤廃され、アバターの一挙手一投足をキーに当てはめることができる。


 例えば、右手を上げる、と言う動作を『U』に、右足を前に、と言う動作を『J』にと言った具合に、かなり細かな操作が可能となっている。


 殆どのプレイヤーが『マニュアル』を選ぶのだが、一部の玄人やゲーマーは『カスタム』を選ぶ。


 理由は単純明快。


 『カスタム』の場合、ゲームの敵キャラやこちらの攻撃の辺り判定が、限りなく現実に近づくからだ。例えば、右手を上げると言う動作をしたときに、本来ならそこにあったはずの右手の辺り判定はなくなり、そこへの攻撃はアバターに当たらない。


 こう言った細かな操作性が、人気になった一因だろう。


 この操作法のお陰で『マニュアル』と『カスタム』でサーバーを分ける必要が出て来てしまったのだが、それは賛否両論だった。


 結局、『カスタム』は操作が難しいと言う声が上がり、配信から二年後に『カスタム』専用のキーボードが出ることとなった。


 そのキーボード発売から一年後に『マニュアル』の操作が廃止され、サーバーを一つに統一したことで更にゲームが快適になった。


 翔は、そのゲーム配信時から遊んでいたいわば古参プレイヤーで、日菜子と二人、堅実なプレイスタイルで当時から有名だった。


 初期から面白半分で『カスタム』操作だった翔達は、新しいキーボードに直ぐ馴染み、統一されたサーバーでは“プレイヤーが選ぶ有名人”上位百名に入選するほどの実力を誇っていた。二人パーティーだったという珍しさも入選に大きく係わっていただろう。


 だが、そんな二人を圧倒する二人パーティーの翔達と同じくらいの古参プレイヤーがいた。


 片方は、超回避型の剣士だ。敵の攻撃を嘲笑うかのように回避し、ダメージを稼ぐスタイル。


 その速さ故に、上位百名に与えられた公式の称号では、『最速の剣士』。どこぞのアニメ主人公を彷彿とさせる称号だが、どのプレイヤーも認めざるを得ない二つ名だった。


 もう片方は、剣士の近接戦を支援する魔術師だ。基本的には剣士を支援する魔法しか使わないが、極稀に攻撃系の魔法を使う。“魔術師が攻撃魔法を使う瞬間を目の当りにしたら、その日は運が尽きたからログアウトしろ”、なんて言われるほどだ。


 一人一人でも相当な実力があるのは確かだが、更に凄いのはその連携だ。


 まるで互いの画面を見ながらゲームをしているのではないかと言わんばかりに、息の合った連携。常に強化系の魔法が途切れないようするのは当然ながら、剣士が絶対に危機的状況には陥らない。


 回避系なので、紙装甲。当然ながら、一撃貰えば即死。だが、その即死が起こらない。それは単純なプレイヤースキルも去ることながら、後方で見ている魔術師の援護が素晴らしいのだ。


 敵の行動を全て見通すかのような罠の置き方や、ヘイトを逸らさせるような小技など、剣士を邪魔しない程度に、だが敵には百の効果を発揮するように調整された、完璧な連携。


 そんな二人に、少なくとも翔は憧れを抱いていた。


 だから、ゲームと似た状況になったこの世界で、その二人に近づけるような戦闘スタイルでやっていこう! と話し合ったのだ。


 日菜子は前に出て戦えるような性格でもなければ、魔法適性も水に光と、攻撃に仕えないわけではないが、どちらかと言えば援護に優れている。


 だから、翔は剣士で魔法を使う、一般のゲームでは強職業に分類されやすい魔法剣士になることを決めたのだ。


「――だから俺は、剣を学んでいるのです。尤も、遊びの感覚があったのは最初だけで、今はそんな簡単なものじゃないって、わかっているつもりです」

「なるほどな。よく分かった。もし何度でも生き返ることのできるゲームと同じ感覚で今の訓練していたら、自分の首を斬らなきゃいけなくなっていたかもな」


 翔が剣を学ぶ理由を聞き終えた、ルディアンは冗談風にそう言って笑った。


 ルディアンが言った可能性は、翔を殴っていたかもしれないということだろう。ルディアンは騎士団長という立場にいる。それは、騎士団における最高権力を持つと同時に、騎士団員の命を守る立場にある。


 もしゲームと同じ感覚で戦争をしようとしているなら、それは止めねばならない。命は一つ。それを分からずに訓練に参加していたならば、ルディアンは全力でその意識を改革させる。例え、相手を殴り、嫌われたとしても、だ。


 召喚者を殴れば、それ相応の罰が下される。


 英雄と讃えられる、今や国民の精神的柱支柱となり始めている召喚者を殴るのだから、契約云々以前にルディアンは極刑だ。


 冗談のように言っているが、その眼がマジだったのを、翔は見ていた。よく思い直した過去の自分、と少しだけ自分が行った意識改革に感謝しつつ、休憩を終えた。


「そう言えば、隼人はまだ部屋に籠っているのか?」

「恐らく……。今日もまだ見ていませんから」

「ったく。葵と対峙した時からおかしいと思っていたが、まさかここまで長引くとはな……」


 互いに位置に着く前の雑談のような流れで、ルディアンはアオイが王城を出ていった日以来姿を見せない隼人のことを尋ねた。


 隼人の性格が昔からあのようなものではなかったと聞いてはいたし、あの一週間で少なからずアオイとの戦闘時に見せたようなおかしな性格はしていなかったと、ルディアンは思っている。


 別の世界はあるなんてことはルディアンも知らなかったし、そのことが心配で誰にも打ち明けられずに一週間溜まり続けたのが爆発した、となれば、ルディアンのような隼人の心を真に理解してあげられない人間が介入しても回復は見込めないだろう。


「お前達も、まだ話せていないのか?」

「はい。部屋まで行っても、隼人から直接『帰れ』と一言だけ……」


 隼人がアオイとの戦闘以降ずっと部屋に引き籠っており、クラスメイトの誰ともまともな会話をしていない。一応、侍女であるセクリスが毎食部屋位運び、世話はしているので問題ないと言えばそうなのだが、やはり心配ではある。


 なので、何度か接触を試みたのだが、隼人は頑として話そうとしなかった。


 ただ侍女には心を開いているようで、こっそり隼人のことを教えて貰っているが、今はまだこれといった問題はないらしい。


「結局は、隼人の侍女頼み、か」

「そうなってしまいますね。ですが、隼人が引き籠っている以上、戦える俺達が頑張らないといけません。指導、よろしくお願いします」


 隼人のことで、思案顔を浮かべていた翔は、スッと切り替えるとルディアンに木剣を構える。


 切り替えの早さは目を見張るものがあるが、それ以外は点で素人だ。


 ルディアンは、ならば今日は厳しめに行くぞ? と悪戯な笑みを浮かべ、翔との訓練を再開した。






 その後、夕食の時間を過ぎても食堂に姿を見せない翔を心配し日菜子が捜索に行き、見つけた時はまだ訓練を続けていた。


 しかも、ルディアンはもうそろそろやめておこう? と言っているのに、もう少し! もう少しだけ! と我が儘を言っていた。


 既にその場にいた二人を呼びに来たであろう侍女さんは、何か悟ったような目をしていた。


 結局、日菜子がそこに割って入り、本来の目的“翔を見つけ、食堂に連れてくる”を忘れ、翔の姉妹を引き合いに出したり、アオイを引き合いに出したりと、取り敢えず長い間、翔にたっぷりと説教した。


 その絵面は、幼馴染が怒っていると言うより、息子を叱る母親のような図だった。





次回から二章になります。

二章投稿前に、一章の大改稿を行い、その内容は、二章第一話の後書きと活動報告にて報告します。



二章第一話は1/1投稿予定ですが、間に合わなかった場合は土曜日の1/5投稿になります。


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