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ハコブネ物語
その昔、"僕"カイン・レヴァリエはアオンに憧れていた。
アオンとニアクの神話を元にした一冊の絵本。
そこに描かれたアオンは僕にとってのヒーローのようなものだった。
たった一人で魔女を討ち倒した誇り高い英雄。
そしてグレンデル封印と言う役目を持った初代ハコブネの巫子。
彼のようになりたくて、ハコブネの巫子と言う役目に憧れた。
そのために僕は努力を惜しまなかった。
憧れた、強く優しい英雄に。
憧れた彼のようになりたくて。
だけど、選ばれたのはノアだった。
憧れが自分の意思に変わる頃。
きっとそこから、全てが狂い始めた──。
暴力をふるわれた訳ではない。
陰口を聞いた訳ではない。
それでも子供のころは随分と生きづらかったことはよく覚えている。
ただ大人達はいったんだ。
──可哀想に。
──可哀想に、可哀想に。
あれだけ頑張っていたのに選ばれたのは妹。
──可哀想に、可哀想に。
憧れた英雄の役目にすら近づけない。
英雄に近いのは自分に一番近いあの子。
周りは僕を哀れみ、腫れ物のように扱った。
そこにいるのに、いないように。
まるで僕を忘れた様に。
あの子にハコブネが受け継がれられなければ、あの子がいなければ、"ボク"は孤独にならなかった。
グレンデルの封印を解く。
その小さな悪意が、ボクを孤独ではなく一人にかえてくれた──。




