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女性はやさしく微笑んだ。
握りしめられた手は暖かくて、懐かしくて、涙がでそうだった。
「それにね、あなたはもう知っているはずですわ。
小さくても、強い意思は大きな力になるの。
思い出して、鍵はあなたの心の中にある……」
女性は愛しそうにきゅっと手を握りしめると、名残惜しそうにその手をほどき、立ち上がる。
「ほら、そろそろ時間ですわ。あなたはまだやるべき事があるのでしょう」
白い世界は突然ノアを中心として闇が広がる。
闇はどんどん広がり、光を覆い尽くさんとしていた。
「ま、待って!私……っまだ貴方と──!」
──ノア、いきなさい。
──あなたは、あなたの意思で戦いなさい
──
目を覚ますと、自分は赤い血溜まりの海に倒れていた。
冷たい床に倒れた感触。
刺された傷口の痛み。
その全てが少しずつ鮮明になり、あの出来事が夢だとノアに気づかせる。
恐らく気絶していたのは数秒。
だがその数秒はとても長いものに感じられた。
握られたナイフはマフラーに戻っており、力の入らない手だけが力なくそれを握りしめていた。
「まったく、末恐ろしい妹だよ。あの一瞬で身体を反らして急所を外すなんてさ」
コツンとグレンデルは靴をならしてノアの前に立ち、ノアの身体、傷を見下ろした。
傷は胸元から反れた腕付近に生々しくつけられており、そこからじわりじわりと出血していた。




