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方舟物語  作者: 狛ノ上緒都
方舟物語・第二十章
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2


「……あの、ここは結局どこなのでしょう」


ノアは諦め、辺りをぐるりと見回す。

確か自分は薄暗い灰色の古城で、グレンデルと戦っていたはずなのだ。


それが今やグレンデルの姿はおろか、場所すらも知らぬ場所に変わっていた。


「ここはあなたの夢の中ですわ。あなた、あの子に刺されてしまったではありませんか」


「私は、死んだのですか」


ノアは直前に自分の身に起こったことを思いだし、震える声でそう言った。

自分が死んだのなら、目の前に彼女がいることも納得がいく。


「それはわたくしにもわかりません。

わたくしは所詮あなたの記憶の再現ですもの」


女性は立ち上がって、陽気そうにくるくると回って見せた。

目の前の女性は足はきちんと有り、不思議な夢だとノアに呟かせる。


「結局、ハコブネの能力もわからず。使命も全うできず。

何のために戦っていたのか……。

死んでしまったのならこのまま貴方と──」


「許しませんわよ」


穏やかに振る舞っていた女性はぴりりと怒気を含んだ声音で、ノアをしかりつけるかのようにずい、と顔を寄せた。


「生きている者が、死者と暮らそうなどと考えるものではありません。あなたは生きなくてはならないの」


女性はノアの手を握りしめる。その手は確かに暖かかった。


「生きて、生きて、生きて。

それから、あぁ良い人生だったなぁって思って、こちらにいらっしゃい。

その後に、お話をいっぱい聞かせて欲しいですわ」



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