126/167
3
「皆さん!何かに捕まって──」
そう皆に伝えようとするも、最悪の事態がノア達を襲う。
馬車を支えていた車輪が壊れ、とうとう馬車はバランスを崩してしまった。
馬車は横転し、そのまま勢い良く転がり落ちてしまう。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
「わ、わぁっ!!」
ノアの悲鳴が響き渡り、御者台に乗っていたレイルが馬車から投げ出されてしまった。
そのままごろごろと馬車は回転を止めることはなく、崖を転がり落ちてしまう。
「っあ、アルカナロッド!!」
レイルは崖を転げ落ちつつも、なんとかアルカナロッドを取り出す。
片腕だけで宙ぶらりんになりつつ、レイルはノアだけでも助けようと手を伸ばす。
「く、紫ちゃん!」
「レイルさん!」
だが伸ばした手は空を切り、その手を掴むことはできなかった。
その一瞬が何十秒と長く感じられノアの目には絶望しきったレイルの顔がよく映った。
「紫ちゃん!」
レイルは転がり行く馬車に向けて叫ぶ。
「シロちゃん!クロスケ!」
馬車はどんどん小さくなり、霧の向こうに隠れてしまった。
「皆……!」
レイルの声だけが小さく響く。
がしゃんと山の下で馬車が壊れた音がするだけで、レイルの声に答える者は誰一人としていなかった──。




