第三十六話「ルーテシア様の本気」
第三十六話「ルーテシア様の本気」
その圧倒的な戦闘力の前に、人間の力で敵うはずがない。ルーテシアの爪で剣は切り裂かれ、スバルの拳で鎧に風穴が空く。
積み重ねられた魔物の屍と瓦礫。ダンジョンの惨状を見た二人に、もはや容赦の文字はない。人間たちが恐れおののき逃げようとするその背中を深く抉る。
「……許さない……許さない……許さないっ!」
「どけ……どけって、言ってるでしょうっ!?」
対悪魔用の戦闘部隊のはずが、圧倒的戦闘能力の前に太刀打ちできないでいる。これも全てクルトの魔法が部隊を強化していたからだ。
「くそ……隊長……隊長はどうした!?」
副隊長は怒鳴るようにして兵士に報告を求める。
「まだ戻って来ません!」
「えぇい……仕方ない! お前ら、あれを飲め!」
「は……し、しかし……あれは……」
躊躇う兵士は顔を殴り飛ばされて壁に激突する。
「ここでやらないと命は無い。今ここで俺の手にかかるか、それとも悪魔どもを倒してから逝くか……誇り高き親衛隊なら、分かっているよな?」
「は……はい」
兵士は泣きそうな顔をしながら水色の液体が入った小瓶を取り出す。
「大丈夫だ、これができたらお前は英雄だぞ?」
「は……はいっ!」
そして、それを一気に飲み干した。そんな兵士が約十人。いつかの戦士と同じ作用を持つ薬によって、兵士たちは莫大な力を得た。
「さぁ、行け! 悪魔どもを駆逐しろ!」
「……ん? あれは……報告にあった強化人間か?」
ルーテシアは並ではない、魔力ともまた違った力を放つ人間たちを睨む。
「スバル……警戒して。あいつらは……何か違う」
「うん……知ってる」
言うや否や、スバルは駆け出し拳を振り上げる。
「でも、お姉ちゃんのために早くしないと!」
スバルの攻撃は片手で受け止められていた。スバルは追撃で蹴りを繰り出すも、逃れるのがやっとで大したダメージになっていない。
「そんな……この前よりも強い?」
「……なるほど、更に研究が進んでいた……と、そういう訳? ……悪魔を舐めるな、人間どもが!」
ルーテシアは魔法陣を展開し、ナイフを取り出すと自分の腕を切った。流れる血を魔法陣の中央に垂らして魔法が完成する。
「私の血を喰らい、蘇れ死者の兵士。召喚、ブラッディ・ナイツ!」
魔法陣から黒い甲冑を身に付けた兵士が十体現れる。この者たちはそれほど高い戦闘能力を有しているわけではない。しかし全員持っている黒い剣は再生不可能の傷を与える。魔界屈指の殺傷能力を持つ部隊だった。
「……ねぇ、地獄なんて飽きたでしょう? その身で受けた裁きの業火……奴らにお裾分けしなさい!」




