第三十三話「逆転の一手はここしかない」
第三十三話「逆転の一手はここしかない」
ルーテシアとスバルは森を駆けていた。
「くそ……まさか、誰もいないなんて……っ!」
完全に見抜かれていた。そう考えるのが自然だろう。プライドが高いルーテシアにとって、出し抜かれるというのはかなり堪える屈辱だった。
「ルー、早く行けばきょーげきになるって!」
「挟撃のことかしら? 確かに……そうね!」
しかし、今のルーテシアを突き動かす感情は本当に屈辱からの怒りだけなのだろうか。その表情は焦り一色で、まるで誰かを助けようと必死になっているようにも見える。
「間に合って……」
ダンジョン内では一方的な戦いが繰り広げられていた。魔物ごときでは対悪魔も想定されている王国親衛隊に歯が立つはずがない。既にダンジョン内の五割は占拠されたと言ってもいい。
「……銀色の鎧……あのエンブレム……間違いない、王国親衛隊。どうしてこんな辺境の地に……ううん、そんなことは後回し」
ステラは映像から目を離す。仕掛けた罠は魔法がベースになっている。魔法への抵抗力を持つ親衛隊相手では役に立つはずがない。もはやどこに敵が行っても打つ手無し。ただし、いくつかの点を除いて。
「……行こうか、スラミー」
最深部で一緒に魔物たちへ指示を出していたスラミーを連れ、ステラは次の策に出る。
「逆転の一手は……ここしかない。皆が成功するまで、耐えるんだから」
一方で、クルト率いる親衛隊は容赦なく進軍していた。
「報告します! このダンジョンの規模から推定して約七割を占拠したかと思われます!」
「そうか、だが気を抜くな。まだ何かあるはずだ」
「はっ! そのように伝えます!」
「……余りにも防御が手薄だ。罠も稚拙……何かを狙っているのか、それともこちらの戦力が想定外だったのか」
クルトがそう呟いた時だった。うっすらとだが、ダンジョンの壁に黄色い線を発見する。その線は天井や床まで縦横無尽にびっしりと張り巡らされていた。
「……まさか!? 全軍、退け!」
クルトは部隊に向かって叫びながら走り出す。次の瞬間、うっすらとした線に沿って亀裂が走り崩壊を始める。いかに魔法への抵抗力があっても、逆らいようのない物理重量の前に為す術などない。親衛隊はあっという間に飲み込まれていった。




