第三十二話「上手なのはどちらか」
第三十二話「上手なのはどちらか」
アルたちは森の中を見当違いの方向へ飛び回る。
「……これでしばらく時間は……何じゃ?」
森の中腹に入った頃、人間たちの隊列が精密に揃う。その動きは軍隊にも近い。そしてアルの誘導を無視しダンジョンの方向へと前進して行く。
その直後、下から大量の弓矢が放たれた。シャドウは必死に回避を試みるも数本当たり、近くの木へ墜落する。
「のう、大丈夫か!? シャドウ!?」
シャドウは虫の息も同然だった。そこに矢の一斉照射が迫る。
「……くっ!」
アルはシャドウを引きずるようにして飛び立つ。しかし幻惑魔法をかけながらの飛行は大したスピードが出せず、矢の射程外に出ることができない。
「……しゃ……シャドウ?」
矢の雨が止んだ時、シャドウがアルに覆い被さるようにしてこと切れていた。
「……すまぬ、すまぬ」
森を突破した人間たちの装備が月に照らされて銀色に輝く。これまでステラたちが相手にしてきた人間たちとは格が違う。王国親衛隊の部隊だった。
「幻惑魔法、解除確認。敵の捜索を続行しますか?」
「いや、そっちは後回しだ。これからダンジョンを潰す」
王国親衛隊隊長のクルトは軍団を見渡した。その数は100人。加えて親衛隊に所属する者は腕が立つ者ばかり。数字以上の戦力が期待されるだろう。
そして見逃せないのは隊長クルトの頭脳だった。幻惑魔法がかけられることを読み、それを好機と見てずっと待機していたのだ。
「しかし隊長……なぜこのダンジョンにこれほどの戦力を?」
「報告を聞いていなかったのか? このダンジョンはこの地域で数少ないほぼ無事な所だ。相当の手練れがいるだろう」
「……はっ! 失言、お許しください」
「……構わない。さて、始めようか」
クルトは首から下げているペンダントを一度愛おしそうに撫で、剣を抜いた。
「全軍、突撃!」




