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神社

いつも俺達が会っている公園は、厳密には公園ではない。

木がありベンチが用意され、中央部にはボートも乗ることの出来る池があり、休日はカップルや家族連れがそれに乗っている姿を見ることが出来る。


かなり広く、芝生でキャッチボールをする親子が居ても、ここは公園として造られた場所ではないのだ。


では何かと言われると、護国神社内にある境内の一部。


昔はここらに公共施設を集めようと開発したのか、周りには図書館と科学館、そして美術館がある。


公園を離れて少し歩くと寂れかけた繁華街に続き、もう少し歩くと大きな駅がある。


そんなところだった。


「護国神社ってさ、神様を祀る為に作られたんじゃなくって、英霊を祀る為に作られた神社なんだよ。」


「ふぅん。」


英霊、つまり公務殉職者や戦争で亡くなった人達を鎮める目的で建立された神社だ。


神様が元々そこにいたり、御神体があるという他の神社とは成立から違う。


国のために働いた人達を死後に祀るので、御利益としては長寿、厄除けとされていることが多いとか。


「えいれいって何。」


もちろん当時小学生の俺がそんなことを知る由もなく、率直な疑問を先生へ向けた。

先生はなるべく子供にもわかりやすく説明しようとしてくれてはいたが、それが余計な誤解が生まれる一因だったと思う。


「英霊はね…えーと、例えば…そう。


この国を守るために戦争へ行った兵隊さんが亡くなったりさ…あとはみんなを守る警察や消防士さん。

えーと、とにかく、誰かを守るために働く人が人が亡くなったとするだろう?」


「うん。」


「そういう国や沢山の人を守ったり、助けたりした人は神様になるんだって。


その人たちを祀るのがここなんだ。


あそこの拝殿…木の扉の中にその人たちが使っていた刀が納められてたりするらしいよ。」


「そっか。

じゃあさ、グレンカイジャーもここにいるの?」


「…グ、グレンカイジャー?」


「うん、グレンカイジャー。」


グレンカイジャーは当時日曜日の朝に放送されていたヒーローの特撮番組だった。

そういう番組は卒業しかけていたが、なんとなく惰性で見たのだが、そのヒーローは最終回で死んだ。

それは子供の俺には衝撃的な終わり方で、それ以降あまり見なくなったのは、それがヒーロー番組離れに繋がっていたのかもしれない。


グレンカイジャーは日本侵略を目論む秘密結社をやっつけるという、古来からよくある分かりやすいストーリーだ。


今なら日本に固執するな、世界を目指せよ。

と言いたくもなるが、当時はギリギリまだサンタクロースを信じているような、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧な子供だったので、当然日本を守った自分のヒーローも英霊に入ると思ったのだった。


「…ちょっと待ってね…?調べてみるから。

…ははぁん、なるほど…特撮ね…。


…うーん、そうだね。

グレンカイジャーも居ると思うよ。」


「じゃああの扉の中にグレンブレードがあるんだ!

すげー。」


「グレンブレード…?


あぁ!グレンカイジャーの武器か!

どうだろうね、あるかもしれないね。」


「すげー!見てみたい。」


のらりくらりとかわされて、当たり前だが関係者でも何でもない俺たちが拝殿の中を覗くなんて事はなかった。


しかしその何ヶ月か後に、一人で公園に居る際に、本物の住職を見つけた俺は、グレンカイジャーのグレンブレードを見せて欲しいとお願いした事があった。


そうすると何故かウキウキで拝殿を開けてくれた住職が、奥に飾られているグレンブレードを見せてくれたのをよく覚えている。


今になって不思議に思う。


流石に拝殿に入っては居ないので、遠目で見ただけなのだが、架空の、しかも1年しか放送されていないヒーローの剣が何故か確かにそこにあった。


普通はある訳がないし、護国神社とグレンカイジャーを繋げた事は俺と先生しか知らない。

なので先生が住職にお願いしたのではないだろう。


勢いで覗いた子供ががっかりしない様に。


当時の記憶が蘇り真相を知りたくなった俺は、その神社の事をネットで少し調べてみた。


すると地方新聞のアーカイブに記事が残っており、意外にも公式が関わっている事が分かった。


先生はあの後、律儀に問い合わせていたらしい。


熱心な子供がいる。

護国神社と英霊を祀る所なのだから、グレンカイジャーも祀るべきではないだろうか。

そんな飛んだ説得した結果、何故か寛大な公式が受け入れて、実際に撮影に使われたグレンブレードを奉納したらしい。


その立役者となり、取材を受けた先生は、その地方記事にしっかりと写っていた。


そして、おそらく記者から注文されたであろう、グレンカイジャーの決めポーズを取らされて苦笑いしていた。


調べながらしどろもどろ答えていた事から、決して詳しくなかったはずのグレンカイジャー。

そこまでするのだからきっとそうだと、新聞記者には特撮マニアと思われて、決めポーズを強要されたのだろう。


しかし、やはりよく知らなかった先生のポーズはよく見ると左右逆だったので、特撮マニアからはニワカだと言われ、少しだけ叩かれていたコメントも同時に見つけてしまった。

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