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占い

「先生はお正月、おみくじ引いた?」


「いいや、個人的に占いとかをあまり信じていないんだ。

未来視という意味では、本物がいて欲しい気持ちはもちろんあるのだけれどね。


まぁ、占いの元になった星を見る仕事とかはまだ納得いくんだけどね。」


先生は諸説あるけれど、と前置きしながら解説を始めた。


占いとは元々の起源を遡ればなんて事のない、ただの天気予報だ。

星や雲の様子から近々の天気を予想する。

気象の知識がある今なら、ある程度の予測は誰でも出来る。

ただ、当時は特殊技能だったって話らしい。


ただの天気予報とはいえ、実際にはかなり大切な情報だ。

農耕や狩りが主だった時代なら、雨がいつ降るか、それがどのぐらい降るかは命に関わるのだから。

現在でも空の情報から猛暑の予測をしたり、不漁不作の予測を立て対策をしたりしているが、それは科学的な知見が下地になっている。


「だから集団の命運を占うって方向性が強かったんだと思うよ。

それが科学的に解明されて行った結果、今日の極々個人的な未来をって方向に変わったんだろうね。」


気象や星から読み解く占星術師から、王や重鎮の相談を聞く方向へとシフトして行く。

しかしそうなると起きる問題が出てくるのは、自明。


「外れたら大問題になるのさ。


気象なんかは神様のせいにして誤魔化して来たけれど、王の気分なんかはどうにもならないからね。


外す訳には行かなくなった占い師達は、他の方法を取り始める。

簡単に言えば、前もって死ぬ気で情報を集めたのさ。」


ホットリーディングとコールドリーディング。

その二つを聞いた事はあるだろうか。


前者は事前に調べた情報。


例えば、初対面でこんな事を言われたとする。

「貴方のお祖父様は亡くなっています。」

しかしそれは戸籍を調べればわかる事で、SNSが発達している現在なら、もっと個人的な事すら調べ易くなっているだろう。


コールドリーディングはその場で推測や曖昧な言葉で信じさせていく手法。


先程に倣えば、

「貴方のお祖父様は亡くなっていませんね。」

そう言われた方は二通りの受け止め方がある。

「貴方のお祖父様は亡くなってはいない。」

つまり生きていると問われているのともう一つ。

「貴方のお祖父様は亡くなって、もう居ない。」

人間の状態が生死の二種類しかないのだから、絶対に当たる。


という訳である。


「死ぬ気で調べるのだから当たり易くもなるし、当人じゃないんだから冷静に客観的に見られる。

そういう意味では有用な相談相手なのかもしれないね。


その程度なら僕だって出来る。

ほら、両手を出してご覧。」


俺が両手を出すと、先生はそこに中華まんを二つ乗せた。

紙に包まれているので、中身は何か分からない。


「これは肉まんとあんまんなんだ。

君がどちらを選ぶか、僕は予想して来た。

こっちだと思う方の包み紙の底面にシールが貼られている。


当たったら、僕のリーディングが成功したと言っていいね。」


俺はあんまんを選び、底を見た。

するとそこにはシールが無く、肉まんの方を確認するとそちらに貼ってあった。


「……あれ、あんこ苦手なんじゃなかったっけ。」


「粒あんが苦手。

ここのコンビニのあんまんは胡麻あんだから平気だよ。」


「……あ、そう。

両方好きなら、半分こして両方味わおうか。」


「先生、天才。」


天才はポケットからカードを取り出して、包み紙の上から中華まんに押し当て綺麗に半分に切ってくれた。

それを食べながら浮かんだ疑問。


「そのカード、タロットってヤツじゃないの?

占いの道具でしょ?」


「あぁ、うん、そうだね、タロットは占いの道具だ。」


「使わないの?」


「前座がコケてしまったからね、真打も出番が無くなってしまったよ。

タロットはあまり信じていない方の占いなんだけどね、曖昧だし。

それなら顔相とか手相の方がまだ信用しているよ。


生きていく内に自然に刻まれた皺なんかで占うからさ。

ほら、よく笑う人とムスッとしている人では皺が出来る箇所が違いそうだろう?」


俗にいう笑い皺や、眉間の皺。

そこに刻まれた歴史が、その人を象徴する。

確かにそれならその人を知る材料になり得るだろう。


「それ、先生にも出来る?」


「そうだなぁ。

えーと、君ってハーフかい?

お父さんかお母さんが外国の人?」


「ううん、クウォーター?ってやつ。

おじいちゃんがアメリカ人。

お母さんがハーフ。


凄い!よくわかったね!」


「それは見た目で分かっただけで占いじゃないよ。

じゃあ、うわ、占ってしんぜよう。


君は将来、女の人に苦労するよ。」


「えぇ…なんで?嫌なんだけど。」


「絶対にする。」


そう言い切る先生。

しかし、初めての占いからコケた人なのだから大丈夫だろう。

きっと才能がないのだ。


そして21歳になった今、俺に彼女が出来た試しがない事もに先生の責任は無い…はず。

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