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常世神話譚 ー夜姫と最高神の千年恋譚ー   作者: 福山蓮
【第一部 星を見上げる少女】
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【第6話】 須佐男 神殿ツアー2

 須佐男が一目散に駆け抜けて到着したのは――


 ◆鍛冶の宮


 巨大な炉の熱。火花の閃光。

 火の神たちが新たな武器を打ち鍛えている。


 須佐男は勢いのまま、豪快に扉を蹴り開けた。


 ガガァァァンン!!


「ちゃおーーーー!!」


 鍛冶神A「おいスサノオ!何して……」


 視線が夜姫へ吸い寄せられた。


「……その可愛い子は誰だ!」


 須佐男は腕の中の夜姫を高々と掲げ、


「新入りの夜姫ちゃ〜ん!へへっ、

 オレの未来の嫁!」


 夜姫「ヨ……嫁ぇぇえっ?」


 どっと沸く鍛冶神たち。


「おお、あの天照様の“対”か!」

「スサノオ、ついに落ち着くのか?

 いや無理だな!」

「こんな可愛いの、お前にゃ勿体ねぇ!」


 鍛冶神、作業放棄。

 笑顔全開。にへらにへら。


「ご挨拶が遅れてすみません。

 夜の神、夜姫です…

 よろしくお願いします」


 夜姫は出来る限り丁寧な頭を下げる。


鍛治神B「礼儀正しいな! しかも可愛い。 可愛すぎるぞ」

鍛治神C「夜姫ちゃん! 何か作って欲しい物はあるか?」

鍛治神D「馬鹿!武器はまだ早いだろ。 いや、造るなら俺が造りてぇ」

鍛治神E「俺が!」

鍛治神F「ワシが!」

鍛治神G「やめろ、俺だ」

鍛治神H「おれのが巧みだ!」


 夜姫(……熱い……心か身体か分からない……)


「はいはい、ストップー。 

 夜の神の夜姫ちゃんに献上したいヤツはぁ! まず俺様を通せよー!」


「お前の対じゃないだろ! 勝手に仕切るな!」

「須佐男は黙ってろ!」


 須佐男はなぜか誇らしげに胸を張る。


「落ち着け!鍛治神ども!

 これからオレと夜姫ちゃんは運命共同体だ!

 そこんとこ、よーく覚えとけ?!」


 (運命共同体なの?)


 鍛治神たちのブーイングが飛び交う…


「はい、次ーーーーー!!」


 夜姫はまたいつの間にか、須佐男の腕の中。


 夜姫「えっ!?えええ!? ちょ、待っ……!」


 気づけばまた全力疾走。


 ✦ ✦ ✦


 ◆天の酒場


 扉を開ければ、朝から飲み交わす神々。


 酒神A

「お〜須佐男。

 ん?その腕の幼女は……

 お前、ついにそこまで——」


 須佐男「あー?へへ…俺やるだろ?」


 なぜ照れる。


 夜姫(お酒の匂い……つよ……)


 須佐男「未来のオレの嫁だぜ!」


 夜姫は引きつった笑みを貼りつけ、


「夜の神…夜姫です。

 ど、どうも……はじめまして

 お世話になります」


 ――にこり。


 酒神オール撃沈。


 酒神A「ひゃぁぁぁあ!夜姫ちゃん推せる!」

 酒神B「天照様の“対”、すげぇ可愛い……!」

 酒神C「お目目きらきらだぁ…ヒック」

 酒神D「お酒は何が好き?…ヒック」

 酒神E「その銀の髪を一房使って酒を作ったらどうだろ…へへ」


 場は一瞬で夜姫ファンクラブと化した。


 夜姫「そ、それはちょっと…はは」


 須佐男「お前ら、

 夜姫ちゃんを崇めたい時は俺様に跪けよー! ナハハハハハ!

 謁見5分につき酒瓶1本!」

 酒神A「意義ありだぞ!」

 酒神B「須佐男はマネージャーか?」

 酒神C「酒で勝負だ!」


 夜姫(……神ってこんな感じなの……?)


 酒神D

「ずるいぞ…、俺もひと触りだけ、ヒック」


 須佐男は豪快に笑い、当たり前の様に夜姫を抱き上げる。


「俺様とやり合おうなんて一万年早え!

 さ、次いくぜ〜〜!!!」


 ✦ ✦ ✦


 ◆色欲の宮(開けるな)


 バァァァァァン!!!


 須佐男

「たぁのもぉーーー!!

 って、…あ

 やべ、間違えた……」


 妖艶な神たちの視線が一斉に須佐男へ注がれる。


 色欲神たち

「まぁ……須佐男スサノオ

 今日も色気が溢れてますわ……

 さぁ、早くこちらへ……」


 群がる群がる。

 恐ろしい。

 悪意のない欲ほど恐ろしいものはない。


「や、やめろや…。

 おまえら、落ち着け…」


 須佐男でさえたじろぐ勢い……

 色欲神、最強。


 色欲神A「うふふふふ、恥じらう須佐男様も唆りますわ…

  いえ、滾ります…」


「や!やめろ。

 いや、ほら宮間違えただけだって!

 お前らに用はねぇんだ…」


色欲神B

「まぁ、なら尚更、今日は運命ですね…うふふ」


 色欲神たちは、両手を広げ須佐男をロックオンしている。


 夜姫は初めての恐怖に足を震わせた。


 そして悟る。


(天照様、来なくてよかった……)


 須佐男

「ま、まぁ待て!

 オレは、今夜姫ちゃんと——

 ハハ…押されるより押したおしたい派。

 ……ひゃ!ちょ、触んな。

 あ…そんなとこ。

 あぁっ…!あ…、ああ〜〜〜!

 や、やめてぇ〜〜!!」


 色欲神たち、お構いなし。

 須佐男の姿はもう、色欲神に埋もれて見えない。


 夜姫は両手で宮の扉を押し返す。


(逃げなきゃ……今のうちに)


 バンッ


 扉を押し戻した色欲神が

 可愛らしく指を振る。


「開けちゃ…ダメよ」


 とたん、目の色が変わる。


 視線が、夜姫を捉えた。

 

「……あ」


 世界が、凍る。


 夜姫は息を呑み、

 思わず目を閉じた。


 そのとき――


 ――ドンッ。


 黒い影が、夜姫の前に降り立つ。


 夜さえ焦がす、太陽。

 低く、冷たい声。


須佐男スサノオ……」


 空気が、一変した。


 夜姫は震えながら顔を上げる。


「……アマテラス……様……」



===================

作者より

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