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(41)オレは尋問する-後編-

「やりすぎですアスカ。半分死にかけています」


 ロビィが冷静に告げると、しゃがみこんでヤルタに治癒魔法をかける。

 よく見ると少し笑っているようにも見える。

 

「ごめん、ちょっと失敗した」

「大丈夫です。死んでいません」


 だよね。大丈夫だよね、うん。


「ちょっとアスカ! 人質を殺しちゃダメよ!」

「そうですよ師匠。何をやっているんですか」

「あなた、もう少し常識があると思っていたのだけれど……とんだ誤算だわ」


 批判の三連発、甘んじて受け止めます。


「やはりリズ様が尋問をするべきです」

「今更やめて、マリュウ」

「それじゃ、私が代わりにやるわ」


 唐突にジュリアが尋問役に立候補する。


「ジュリアじゃ無理よ」

「どうしてよピンピン。私にだって出来るわ」

「ジュリアがやる位なら私がやっても一緒よ」

「そんな事ないわ」

「あるわよ」

「だからどうして!?」

「それくらい察してよ。私に言わせないで」


 うん、ピンピン。オレにもわかるよ。

 ジュリアは肉体派だから頭脳労働はちょっとね……。


「もういいわ。私がやります」


 リズが心底面倒臭そうに宣言した所でこの話はここまで。



 そこから先はリズが尋問を進める事になった。

 だいたい今までの流れは把握しているはずなので、任せる事に異論はない。


 そもそもロビィもオレも不適格の烙印を押されてしまったのだから、文句を言える筋合いではない。


 オレはロビィに目配せして、そっと尋問の現場から距離を取るよう促す。


「どうしたのですか」


 3m程離れた所で、囁くように疑問を口にするロビィ。

 うーん、この距離じゃ全然マリュウに聞こえちゃうなぁ。

 

「マリュウさんの遠耳を防ぐ方法ってないの?」

「少しの間だけならあります」

「ホントに!?」

「しっ! 声が大きいです」

「ごめん。つい……」


 だが、さすがロビィ。

 そんな方法があるならもっと早くに教えて欲しかった。

 あ、でもそんなに使う機会はなかったか、


「じゃ、今ちょっとお願いできるかな」

「わかりました。少し待っていてください」


 いきなり両肩を掴まれて正面を向かされると、ロビィの顔が急接近してきた。

 

 え、なに? なにするの?

 

 ロビィが目の前ですっと伸びあがるようにすると、額にキス――された。

 しかも3秒ほどそのまま。

 

 唇が離れると、両肩を掴んでいた手も離れ、俯いたロビィがぶつぶつ呟き始める。

 あの目が赤くなった時と同じような感じだ。

 

 やがてロビィが顔を上げる。

 目は碧眼のまま。

 特に異常は認められない。

 

(大丈夫です)

「えっ!?」

(声に出してはいけません)


 なに? どういう事?

 頭の中にロビィの声が直接聞こえて来ているのか?

 

 どうやるんだよ?


(もう既に聞こえています)

(え、これで?)

(はい)

(考えてる事、全部筒抜けになってるって事?)

(いいえ、言語化されていない思念や感情は読みとれません)

(なるほど、じゃあ頭の中で会話する感じでいいのかな)

(はい)

(ニュータイプってヤツだな)

(なんですか、それは)

(なんでもない。こっちの話)

(あまり長くは出来ません。話があるなら早くしてください)

(わかった。ヤルタに聞こうとして失敗したから直接聞くんだけど、さっきヤルタを捕まえていた時に何を話してたの?)

(その事ですか。アスカはよく見ていますね)

(お世辞はいいから、話の中身を教えてよ)

(人質になるのと死ぬのとどちらがいいか、と聞いたのです)

(それでヤルタは何て?)

(どちらも拒否する、と)

(で、ロビィは引き下がったの?)

(まさか。それでは死になさいと言いました)

(容赦ないね)

(そうしたら、しゃべるから殺すなと言いました。人間はすぐに自らの言葉を翻します)

(まぁそういう人もいるよね)

(多くがそうです)

(それはいいから。ヤルタの話を)

(ミト村を襲わせたのはお前たちかと聞いたら、そうだと答えました)

(やっぱり)

(ミト村の事をどこまで知っているか聞いたら、よく知らないと答えました)

(それは森の民との繋がりのこと?)

(そうです。本当に知らないようでした)

(そうなんだ……でもどうして村を?)

(死体の運搬を目撃されてから、何かと監視されて邪魔だったそうです)

(そんな……)

(そして今回の一件の首謀者はユミロフです)

(まぁそうだろうね)

(ですが、元を辿ればシャイア教国、現教皇のゴルバドフです)

(教皇……ゴルバドフ?)

(あの男自身はそこまでは認識していなかったようですが)

(え、それならどうしてそれがわかったの)

(勘です)

(そんな……)

(その勘が当たっているかどうか、これから確認していかなければなりません)

(森の民のところへ戻ってって事?)

(はい、そうです)

(聞いたのはそれだけ?)

(聞いたのはそれだけです)

(他に話した事はあるの?)

(……あります)

(森の民に関する情報、シャイア教の指揮命令系統や上層部に関する話は絶対に口外しないように、と)

(え、なんで?)

(森の民の情報をぺらぺらと話されては困ります)

(そっちはわかるけど、もうひとつの方は?)

(アスカたちを守るためです)

(オレたちを守ることとその情報がどうして関係あるの?)

(今回の件はあの男とユミロフ、そこまでで手打ちにするのです)

(だから全然わかんないよ)

(アスカはシャイア教国と戦争をする覚悟はありますか?)

(戦争? いきなりそんな大袈裟な……)

(大袈裟などではありません。この問題を突き詰めればいずれそういう事になります)

(でも戦争って国と国とがやるものでしょ。オレ個人がどうこうしようったってそんな事にはならないんじゃ……)

(少なくとも、森の民とシャイア教国は戦争になる可能性があります。それにアスカたちを巻き込みたくありません)

(ロビィ……)

(また再会した暁には色々と情報交換も出来るでしょう。それまではシャイア教の事は出来るだけ放っておいてください)

(だからヤルタがオレたちに情報を与えないよう釘を刺した、って事?)

(そんなところです)


「ねぇ、2人で見つめ合って何してるの?」

「うわっ!」


 いきなりジュリアが声をかけてきたのでびっくりした。

 いつの間に隣に来てたんだ?


「なんでもないよ、うん」

「アスカがそういう時って大抵何かある時じゃない。ロビィも白状しないさよ!」

「見つめ合っていただけです」

「えっ!?」


 ジュリアの目が大きく見開かれ、口がポカーンとなって可愛い。

 それにしてもロビィ、やってくれたな。


「そうなんだよジュリア。ちょっとオレたち訳ありでね」


 調子に乗ってオレまでのっかろうとしたら、我に返ったジュリアに思いっきり睨まれた。


 ドスッ!

 

 脇腹にパンチされた。

 痛いよ、ジュリア。

 

 ドスッ、ドスッ!

 

「ちょ、ちょっとジュリア!」

「フン!」


 ドスドスドスッ!

 

 連打やめれ!

 地味に効いてくるし……。


 ジュリアにパンチを入れられながら、3人で尋問現場へ戻る。

 いつの間にかロビィとのニュータイプ会話は出来なくなっていた。

 時間制限があるような話だったから、もう効果が切れたのだろう。

 


 せっかくロビィがヤルタに釘を刺しておいたのに、尋問会場では今まさにリズがその話に斬り込もうとしている所だった。


「最初にここへ来た時、私たちを待っていたような言い方をしたわね。どういう事なの?」

「お前たちの事は聞いていたからだ。他に理由などない」

「誰に聞いていたの」

「斥候に出ていた者からだ」

「ラザロフとバルナーロではなくて?」

「いや、その2人からも報告は受けていた。だがその時点ではお前たちがどう出るか予測が付かなかったのだ」

「もっと前から知っていたんじゃない。ユミロフから聞いていたはずよ」

「……冒険者としか聞いておらん」

「それじゃ私たちの素性をいつ、どうやって知ったの? あなた達にそんな時間があったかしら」


 リズの追い込みが半端ないぞ。

 逃げ道用意してやらないと何するかわからんから気を付けてくれよ。


 答えられないヤルタを尻目に、リズが続ける。


「あなた達は最初から私達が来るのを知っていた。私達が誰なのかも知っていた。そして全て準備して待ち構えていた。そうでしょう?」

「…………だったら何だと言うのだ」


 あ、開き直った。


「一体何のためにこんな手の込んだ事をしたの?」

「知れた事を。死んでもらうために決まっている」

「私達を殺して何になるって言うの?」

「……死霊を生み出すためには媒体となる死体が必要なのだ」


 やや投げやりな口調になりながらヤルタが話し始めた。


「死体が必要だったから、わざわざ私達をこんな所まで誘き寄せて殺すつもりだったという事?」

「死体の運搬には時間と手間がかかるのだ。何より人目を憚る必要がある。それなら最初から人里離れた場所で調達した方が早い」

「それでこのカカ山を実験場所に選んだの?」

「そうだ。この山は普段は人が滅多に入らない。噂を流して欲に駆られた人間を招き入れるのも容易かった」

「魔鉱石の噂、あれもあなたたちが流したのね」

「私が直接やったわけではない」

「それならあなたのお仲間がやったのね」

「…………」


 チラリとヤルタがこちらを見た気がした。

 オレじゃなくてロビィを、かもしれないが。


「ラドルガの事はもちろん聞いていたのよね?」

「そうだ。お前たちが倒したそうだな」

「それでも私達と事を構える予定は変えなかったわけね。その自信はどこから来るのかしら」

「フン、病み上がりのラドルガを1体倒したくらいでいい気になるな」

「病み上がり? ラドルガが最近まで眠っていた事を言っているの?」

「あれは我々が無理矢理起こしたのだ。計画に協力させるためにな。そうでなければ後1年か2年は眠っていたはずだ」

「まだ回復途中だったというわけね。道理で」


 リズがマリュウとアイコンタクトをした。

 そう言えば戦う前に2人ともラドルガを相当警戒してたっけ。


「ラドルガが病み上がり? あれで?」


 ジュリアがうんざりした口調で言うと、ピンピンと顔を見合わせてうげっという表情を作る。


「確かに、あのラドルガはあまり魔法を使ってきませんでした。魔法力(まほうちから)が回復していなかったのかもしれません」

「え? 魔法使ってたじゃん。炎バンバン出してたろ」

「いえ、本来ならあんなものでは済まなかったと思います」


 げぇっ、そうなんだ。

 じゃあラッキーって事だよな?

 誰だか知らないけど3年前にラドルガを懲らしめてくれた人、ありがとう!


 意外とそれがシェンヤオって人だったのかもしれないなぁ。


「それで、私達を媒体にして死霊を生み出して、それをどうするつもりだったの」

「何も。あくまで実験だ。媒体となる人間が強力であれば生まれる死霊も強力なものになるはずだった」

「まさか、生み出した死霊の使い道は考えていなかったというの」

「まぁ、どの程度の力があるか試しに町や村のひとつでも襲わせてみたかもしれんな」


 その瞬間、ロビィがすっと前に出てヤルタに近付こうとしたので慌てて両手で抱きかかえて止める。

 ジュリアとピンピンもすぐに来て力を貸してくれた。


「そっ、その女をこっちへ近づけるな! そっちの黒髪の女もだ! そいつらは狂ってる!」


 ヤルタがその様子を見て取り乱した。

 ま、そりゃそうだろうな。


 ただ、狂ってるのはお前の方だが。


 一旦落ち着きかけたヤルタだったが、ある一箇所を見詰めたまま急に動かなくなった。

 

 ヤルタの視線の先を探すと、野兎のような動物が1匹いた。

 確かバニーニとか言うんじゃなかったっけ。

 

 体を起こして前足をぷらんと胸の前に垂らした可愛らしいポーズだ。

 耳がピンと立っていて、目が……あれ? 目が白い!

 アルビノ? じゃないよな。


「ロビィ、あの動物……」


 ロビィに声をかけようとしたら、既にロビィもそっちを見ていた。

 眉間にシワが寄ってるぞ。

 どうしたロビィ。


「うわあああああああああッ!!!!」


 突然ヤルタが発狂した。

 いや、発狂したとしか言い様がいほど急に我を忘れたように暴れ、叫び、正体を失ってしまった。

 

 リズとマリュウが慌てて抑え込もうとするが、常人離れした力を発揮して思うようにいかない。

 ジュリアとピンピン、4人がかりでどうにか抑え込むが、それでもまだ絶叫しながら暴れている。

 

 どうしたんだ、急に?


 すると突然辺りが闇に包まれ、視界が奪われる。

 あ、これってドルクを倒す時にマリュウが使ったヤツじゃないのか?


「マリュウ! ヤルタはどこ?」

「わかりません。まずは視界を確保しないと!」

「ちょっと待ってて!」


 え、なに?

 ヤルタって4人で抑えてたんじゃなかったの?


「ジュリア!」

「ピンピン、どこ?」

「ここよ、すぐ隣。あいつは?」

「わからない、いないわ!」


 やはりヤルタが逃げたのか!?

 あのヤロー。


「ロビィ!?」

「すみません。目が慣れるまで少し時間がかかります」


 え、ロビィは慣れれば見えるようになるの?


 するとリズたちのいた辺りで光が放射状に広がった。

 光魔法の効果なのか、闇が打ち消されていく。


「マリュウ!」

「はい! すぐに追います!」

「4時の方向!」


 ロビィがいち早くヤルタを見つけて方角を知らせる。


 よし、オレも超足で……。


 しかしその直後、ヤルタの姿を隠すかのように2つの影が現れた。


「ザリオ!」


 マリュウの声が聞こえる。

 

 またヤルタの野郎が召喚しやがったのか?

 でも、そんな簡単に召喚って出来るものなの? 媒体は?

 

「すみません! やられましたッ!」


 シンの声が響いた。

 すかさずピンピンが反応する。


「どういう事?」

「人質が殺されましたッ! あの男の仕業だと思います!」


 なんだと!?

 この短い間にヤルタがオレたちの元から逃げ出して人質のシャイア教徒を殺した?


 まさか、その死体を媒体にしてザリオを召喚したのか!?


「なんて事……」


 リズの嫌悪に満ちた声。

 しかし立ち止まっている場合ではない。

 

 ヤルタを逃がす訳にはいかないのだ。


「リズ様、私がザリオの相手をします」

「お願い、マリュウ」


 マリュウが向かって左のザリオに挑む。

 リズは回り込んでその奥のヤルタを追うようだ。

 

「ピンピン!」

「わかってる! 師匠お願いします!」


 ジュリアがピンピンを連れて右のザリオに向かって行く。

 で、オレにヤルタを追えと?

 

「アスカ、援護します」


 言うなり矢を放つロビィ。

 矢は一直線にヤルタの背中に向かって飛ぶ。

 

 矢を追うようにオレもリズと並んでヤルタに向かって駆ける。

 

 よし、命中だ。


 ――――えっ!?

 

 ヤルタの背中を貫通してそのまま虚空へ矢が消えて行く。

 どういう事だ!?

 

「幻影の闇魔法よ! 本物は別の場所だわ」

「別ってどこ?」


 一旦立ち止まって周囲を見回す。

 ヤルタは……ヤルタはどこだ!? どこにいるッ!!

 

 いた!


「7時の方向だ!」

「1時の方向よ!」


 えっ!?

 リズと発見した方向が違うだって?


 まさか、どっちもまた幻影なのか……。

 

「ロビィ! ヤツはどこにいるんだッ!?」


 思わずロビィに助けを求める。


 返事はなく、ロビィの方を見るとまた俯いて何か呟いている風だ。


「リズ様、ヤツの気配がどこにもありません!」

「なんですって!?」


 マリュウの地獄耳にも引っかからないだと?

 そんな馬鹿なッ!


 みんなが恐慌に陥りかけたその時、ロビィの声が響いた。

 

「ザリオの後ろです! 魔法で隠れています!」


 赤い目のロビィがザリオの方を指差していた。


「え! うそ!?」

「どこですか、ロビーナさん!」


 ジュリアとピンピンも混乱している。

 見えないのではこちらからどうしようもないのだ。


 ロビーナが弓を放つ。


「ぐぁッ!」


 突然ヤルタの姿が現れた。

 ジュリアとピンピンが相手をしているザリオの後方5mほどの地点だ。

 

 左肩に突き立っているロビィの矢を右手で掴んで引き抜くヤルタ。


「ぐぬぅッ! 森の民め、許さんぞ!」


 ヤルタの足元に何かがあった。

 布のようなもので包んでいるが、バスケットボール……いやもう少し大きい。

 

 おもむろにそれを掴んで放り投げるヤルタ。

 火事場のクソ力なのか?

 

 それ事態見た目に危険性を感じなかったのと、投げた方向がザリオの方だったので誰も反応せず、行方を見守る形になってしまった。

 

 ザリオが剣を持っていない左手でそれを掴むと、本来なら首から上がある位置へそれを持って行った。


「えっ?」

「なに?」

「まさか……」


 誰もが一瞬にして悟った。

 それがザリオの頭になるのだと。


「一旦引きます!」


 マリュウの声に、ジュリアとピンピンがザリオから少し距離を取る。

 が、マリュウの相対しているザリオはお構いなしにマリュウを追撃する。


「マリュウ!」

「リズ様、こちらは危険です!」


 リズがマリュウの方へ駆け寄ろうとするのをマリュウが制する。


「グォオオオオ。貴様ら……許さんぞ……」


 ザリオがしゃべった?

 いや、この声は――まさかッ!?


「ラドルガよッ!」


 ピンピンの怒気を孕んだ声で全員が1体のザリオに釘付けになる。

 

 ザリオの体の上にラドルガの頭が乗っていた――。

 

「どうしてラドルガがッ!?」


 ジュリアの疑問も尤もだ。


「フハハハハ! 昨夜のうちに回収しておいたのだ。このザリオはただのラドルガよりも格段に強いぞ!」


 ヤルタが勝ち誇ったように叫ぶ。

 目が完全にイッてる。

 

 逃げる直前からヘンなスイッチが入ってしまったとしか思えない。

 

「ぐはぁッ……」


 そのヤルタの胸に2本の矢が深々と突き刺さる。

 

 咳き込むようにゴボッと血の塊を吐き出した後、ゆっくりとスローモーションのように仰向けに倒れるヤルタ。

 その顔は目を口を大きく開き、歓喜の色を称えていた。

 

 マリュウを攻めていたザリオが、急に向きを変えるとヤルタの方へ歩み寄り、剣を振るった。

 

「なっ!?」

「ウソだろ……」


 リズと2人で絶句。

 

 ザリオがヤルタの首を斬り落とし、自らの首に据えたのだった。


「フハハハハ! 我ここに甦らん!! ひとりも生かして帰さんぞ!」


 ヤルタが……いや、ヤルタの首を持つザリオが高笑いをする。


「気を付けてください! 首のあるザリオは第2等級に匹敵すると言われています!」

「ウソッ! 第2等級って言ったらオルトより強いじゃない!」


 マリュウの説明に、ジュリアが怒ったように叫ぶ。

 

 オルトより強い?

 キュベラスよりはどうなんだ?


「人間どもにオレ様の本気を見せてくれる」


 ラドルガの頭がそう言うと、ザリオの全身から炎が噴き上がる。

 

 熱いッ!


 ここまで熱気が押し寄せてくる。

 ジュリアとピンピンが弾かれたように、大きく後ろへステップバックしていた。

 

 あまりの熱さに近づけないのだ。

 

 昨日倒したラドルガが病み上がりという意味が嫌と言うほどわかった――。

読んでいただきどうもありがとうございます。

尋問からのバトル遷移。

この後クライマックスになります。

もうすぐロビィと別れるのがとても寂しいです。

引き続き応援よろしくお願いします

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