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転生したら美少女になっていたアラフィフ窓際オッサンリーマンが男子禁制ギルドを作ってハーレム気分のまま救世主になる!  作者: 黒井圭
第2章~キャリオ(1)ペピン周辺~

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(42)オレは意識を失う

 2体のザリオはそれぞれラドルガとヤルタの頭を得てパワーアップ。

 より強力な魔物に進化した。


 ヤルタザリオは闇魔法の力を備えた魔法タイプの騎士。

 ラドルガザリオは炎を纏ったパワータイプの騎士。

 

 それぞれ全く特性が異なる上に、外見も変化している。

 

 ヤルタの方はマント状のものがいつの間にか背中から垂れているし、ラドルガの方は体全体がマッチョ体形になり背丈も伸びたように見える。

 

 何より存在感が圧倒的に違うのだ。

 

 首がついただけでここまで劇的に変わるものなのか。


 そもそもラドルガの野郎はオレが頭部を縦に両断したはずなのに、どうしてくっついているんだ?

 シャイア教徒のヤツらが首を回収した後に補修でもしたというのか?

 

 確かに顔の真ん中に醜い継ぎ目がある。

 お前はブラックジャックか、と言いたくなるほど目立つ。


 右の角も折ってやったはずなのに何故か普通にある。

 まさか角までくっつけたのか、あるいは再生したのか。

 

 一方、ヤルタの方は斬り落としたばかりの新鮮な首を据えたためか、無駄に元気でヤルタの饒舌が止まらない。

 死ぬ前におかしくなっていたテンションそのままで生き返ったように見える。

 

 ヤルタザリオの周囲に濃い紫の霧のようなものが発生しているのも気になる。

 常時何かの魔法効果が発動しているのではないかと疑いたくなる。


 このとんでもない化け物を2体同時に相手をするのは、いかなオレたちでも分が悪すぎる。


 相手の力がわからないうちは突っ込んで接近戦に持ち込むのは危険なので(そもそもラドルガの方には接近すら出来ないが)、間接攻撃か魔法攻撃主体にせざるを得ないのだが……。

 

 マリュウの円月輪もロビィの矢も鎧に弾かれて全くダメージを与えられない。

 頭部を狙っても剣で防がれてしまう。

 

 ジュリアの風刃剣も同様。

 

 魔法については各自余力との相談になるので、とりあえず様子見といった所か。

 

 オレは試しに氷付けにして足止めしようとしたのだが、ラドルガの熱で氷が固まる前に溶けてしまった。 

 溶けた水分もあっという間に蒸発するため、無駄にマグを消費しただけの骨折り損。

 

 しかもそれを見たヤルタがラドルガの近くに移動したため、ヤルタにも氷魔法が効かない状態に。

 ていうかヤルタは熱くないのか? ずるいだろ、それ!


「フハハハハ! どうした冒険者ども。手も足も出ないではないか」


 うるせーよ。マジうぜえ。

 首斬られたんなら大人しく死んどけジジイ。

 

「フムゥ~ン。だんだん体が馴染んで来たぞ。そろそろ本気を出してみるとするか」


 なに!?

 まさか今までのがウォーミングアップだとでも言うのか?


「バアァァァッ!」


 いきなり視界を奪われた。

 なんだよバァァァって。 

 また闇魔法か!?

 

 だが今これはヤバイ。格段にヤバイぞ!

 

「みんな無事かッ!?」

「一旦引きましょう。このままでは全滅よッ!」


 オレの声に続いてリズが指示を出したが、引くといってもどこへ?

 まるっきり何も見えないのにか?


「とにかく距離を取れ! 離れるんだッ!」


 それだけ言って、オレも超足で距離を取る。

 時間的には一瞬だが、相当離れたはずだ。

 

 そう、確かに離れたはず――なのだが、何かがおかしい。

 

 ラドルガの炎の熱さがまだ間近に感じられる。

 そして仲間の気配もそこここにある。

 

 どうなってるんだ?


 やがて、見えない目に光が差し込んできて徐々に視界が回復する。

 リズの光魔法だ。


「フン。小賢しいな、エリザベス・フォン・メイガス。だがいつまで続くかな」


 ヤルタが全く意に介さないようにしているのがムカつく。

 そして再び闇に包まれる。

 連発すんなクソがッ! 

 

「リズ様ッ!」

「わかってるわ。でもこのままじゃ埒が明かない」


 マリュウがリズのマグ消費量を心配するのは当然だ。

 

 だが、誰かが闇を討ち払ってくれないとあっという間に全滅もある。

 例えイタチごっこになったとしても背に腹は代えられないのだ。


 それにしてもこの違和感は何だ?

 

 超足!

 

 今度はさっきよりも長めに移動したはずだが、相変わらずすぐ近くに敵と味方の気配がある。

 というか、ほとんど移動してないように感じられる。

 一体どうなってるんだ!?


「ピンピン! どこだ?」

「ここです、師匠!」


 右後方にいるらしい。


「ジュリア!」

「ここよ!」


 ピンピンのすぐ近く、やはりオレの右後方だ。

 やはりおかしい。


「フハハハハ! 踊れ踊れ! 楽しいぞ」


 ヤルタの声は左前方だ。

 ラドルガはおそらくそのすぐ右。熱がその辺からきている。


 徐々に視界が戻って来る。ありがとう、リズ。

 

 だが、戻ったばかりの視界に真っ赤な地獄が姿を見せた。

 ラドルガが炎を吐いたのだ。

 

 ヴォアアアアアアアッ。

 

 吐きながら頭を左から右へ動かし、ラドルガの正面が120度角の範囲で炎の海となった。

 

 オレの他、ジュリアとピンピンがその範囲内にいたので即座にその場を離れる。

 そして、放水で炎を消す。

 

 ラドルガ本体から離れた炎であればオレの水魔法でも消せるようだ。

 となると問題はラドルガの全身を包んでいるあの炎をどうするか、だな。

 

 いや待て。

 やはりその前にヤルタの魔法が邪魔だ。

 こう何度も視界を奪われてはまともに行動できん。

 

 今はまだ2体がそれぞれ好き勝手にやっているからいいものの、連携が取れて来たら即死コースも有り得る。

 

「ロビィ、なんかおかしいんだが、原因はわかるか?」

「おそらく闇魔法です。あの男から一定距離以上は離れる事ができないようです」


 なに!? そんな魔法があるのか?

 まさか、ヤツの体の周囲にあるアレがそうなのか?

 

 超足!

 

 ヤルタの逆方向へ思い切り走る――が、途中で進まなくなった。

 体は走っているが、場所が移動しない。

 何を言っているかわからないと思うが、オレにだってこの状況が呑み込めない。

 

 強いて言うなら、足元が空回りしている感じだ。

 接地感はあるのに、ぬるっと滑ってその場から進めない的な。

 

 ヤルタから離れる方向以外には普通に動ける。

 

 つまり、ヤツを中心にした円形の領域に囚われてしまった状態と言える。


「マリュウさん、ヤツの闇魔法何とかならないのか?」

「申し訳ありません、この魔法は私ではどうにもできません」

「フハハハハ! 当たり前だ。この私が長年かけて習得した上位魔法だぞ! 今度はこれだぁー!」


 言うなり影縛りが来た。畜生!

 今度は周囲にいた全員に効果が発動しているらしい。 

 いちいちやる事がいやらしいんだよ、ヤルタの野郎。

 

 しかし、これはマズイぞ……。

 

 案の定、間髪入れず三度目の盲目魔法が襲う。

 何も見えず、身動きも出来ない……。

 

 ゾクリと背筋に悪寒が奔る。

 背中やこめかみを冷や汗が落ちてくる。

 

「リズ!」

「今やってるわ!」


 だが、リズが光魔法で対処できるのは盲目効果の解除の方であって、影縛りはどうにもならない。


「ロビィ!」


 返事がないが、何か音が聞こえた。

 せめて目だけでも見えてくれれば……。

 

 ヴォアアアアアアアッ。

 

 ウソだろ、このタイミングで止めてくれ!

 

 氷壁(アイスウォール)!

 

 ラドルガのいたはずの方向に魔法を発動させる。

 ブレス攻撃の炎はラドルガの纏っている炎よりも温度が低いようだし、時間稼ぎにはなるはず。

 ジュリアとピンピンもこれで直撃を回避するくらいの役には立つだろう。

 

 炎の熱気が堰き止められているのが感覚的にわかった。

 よし!

 

 だが、次の瞬間――氷が砕ける音と共に再び熱気が襲ってきた。

 

 ラドルガが剣で氷の壁を砕いて突進して来たのだ。

 

「アスカ!」


 ロビィの声だ。

 だが、身動きが取れない。

 一体どうしろと?

 くそッ! 熱いッ!


 光――目が見えるようになってきた。

 が、それは見たくない光景だった。

 

 今まさにラドルガがオレに向かって剣を振り下ろそうとしている。

 

 キュイン!

 

 次の瞬間、ラドルガの右肩を矢が貫通する。

 貫通した後には大きな穴が開き、そこから血が噴き出す。

 

「グァァッ! なんだと!?」


 衝撃で剣を落としたラドルガ自身が一番驚いている。


 今まで、どんな攻撃も弾き返していた鎧を貫通した? 

 ロビィの矢……ああ! アレか!

 グリードの剛毛を貫いたあの技に違いない。

 

「悪即斬!」


 遠くでシンの声が聞こえたかと思うと、ヤルタの魔法が解けた。

 

 すぐ動けるようになったのでまずは状況把握だ。

 

 ヤルタは首筋を斬られて血を流していた。

 シンの攻撃がヒットしたらしい。惜しい!

 

 見ると、シンは結構離れた場所にいたのでもしかすると影縛りの範囲外だったのかもしれない。

 あの距離ならこの離れられない円形領域の外のはずだ。

 つくづくラッキーボーイだな、シン。

 だが、心の底から感謝する!

 

 ジュリアもピンピンも無事だ。

 リズをマリュウが庇うような形で立っている。

 

 そのマリュウは背中を斬られていた。

 

 ヤルタの剣だ!

 あの野郎、絶対に許さんぞ!

 

 リズがこちらに目で大丈夫と合図を寄こす。

 すぐに治癒を始めている様子なので、安心した。

 

 だが、リズのマグ残量は大丈夫なのか?

 だいぶ消費してしまったように思えるが……。

 

「ロビィ!」


 さっきの礼をしようとロビィの姿を探すと、シンとは逆の方向の円形範囲境界上に跪いていた。

 

 超足!

 

 ロビィの所へ瞬時に移動して抱きかかえる。


「大丈夫か、ロビィ」

「……はい。大丈夫です……はぁっ、はぁっ」


 全然大丈夫じゃなさそうじゃないか!

 ロビィは息が上がった状態で目も赤かった。

 

 何か無理をしたのか?

 オレがさせてしまったのか?

 

 だが、悩んだり考えたりしている余裕はない!


 凍結(フリーズ)!

 

 さっきラドルガがオレに突進してきた分、ヤルタとの距離が空いていた。

 なので、ヤルタをまず止める!

 

「ジュリア! ピンピン!」


 これだけで察してくれた2人がヤルタに飛びかかって行く。

 

 リズはまだマリュウの治療中なので、ラドルガはオレが相手をしなければならない。

 

「ロビィ、ここで少し休んでて」

「はい……アスカの活躍を見学させてもらいます」


 少し呼吸が整ってきたらしいので、オレも安心する。

 待ってろ、ロビィ。すぐ戻る。

 

 超足!

 ラドルガへ一直線。

 

 こうなったらイチかバチかだ。

 イメージしろ、イメージだ。

 イメージすれば何でも出来る(猪木じゃないぞ)。

 

 業火聖衣(ヘルファイアクロス)!

 

 全身を魔法の炎で包み込む。

 いや、火を体に纏ってアウターのように着こなすんだ(無理矢理感)。

 オレは熱くない熱くない絶対に熱くないぞ畜生!

 炎は友達、炎は友達……。


「ノヤローッ!!」


 自分がどうなってるのか全然わからないまま、超足状態で突っ込んでラドルガへ剣を振り下ろす。

 

 ブォォォッ!

 

 風切り音が炎の音になっている。

 

 バキッ!

 

 もう一度右の角を叩き折ってやった。

 いや、本当は首を落とそうとしたのだが、ラドルガが直前にこちらに気付いて回避したのだ。

 

「なんだお前はッ! 何をしたッ!?」


 ラドルガが驚愕している。

 醜い顔が更に歪んで醜くなる。

 

 今のところ問題ない――ないはずだ。

 よしんばあったとしてもそれがどうした!

 もう開き直るしかない。


 ラドルガは再び剣を拾おうとするが、右肩が上がらず拾えない。


 剣を諦めるとラドルガは素手のまま襲いかかって来た。

 だが右腕はやはり思うように動かないらしい。

 心なしか炎の勢いも弱まってきているように見えた。


 鎧の継ぎ目になっている右脇に深々と剣を突き立てる。

 

「ガァァァァァッ!」


 ラドルガが痛みに吼える。 

 もう終わりだ。

 

 ザシュッ!

 

 首を斬り落とす。

 剣もなく右手も不自由なラドルガには防ぎようがなかった。

 

 ラドルガの首を失った魔物だが、ザリオとしてはそれが正常形態。

 うっかり油断する所だった。

 

 落ちた首に再び左手を伸ばそうとした所で、勢いよくシュート!

 

「シン!」


 こちらへ近づこうにも熱くて近寄れなかったシンの元へラドルガの首を蹴り飛ばしたのだ。


「悪即斬!」


 ドシュッと音がして空中で一瞬首が停止する。

 数秒後にそのまま自由落下。


「シン、徹底的に破壊しろ」

「わかりましたッ!」


 シンが居合のポーズから剣を素早く左右に振ると、落下していたラドルガの首が無残な肉塊に分断されて崩れた。

 

「お見事」

「ありがとうございますッ」


 おっと、いつまでも他所見をしている場合じゃない。

 オレの相手は目の前のザリオだった。


 だが、炎の消えたザリオなど、ただ鈍重で硬いだけの魔物に過ぎない。

 むしろ今はオレの炎が熱くてたまらないのではないか。

 

 その証拠に後退りしているじゃないか。

 なんだ、ザリオ自身はお熱いのが嫌いなのね。

 

 じゃあ、もうこれは解除――からの凍結(フリーズ)!

 

「あ……」


 一瞬クラっと来てよろけてしまった。

 だが、ザリオは凍結完了している。

 熱した直後に凍らせたものは脆いんだぞ。


「後は任せて!」


 リズの声がしたかと思うと凍ったザリオが一瞬で粉々に粉砕された。

 ものすごい連続技だ。

 リズ、あんな技も隠し持ってたのか……底知れないなぁ。


「アスカ!」


 リズがそのまま傍に来て体を支えてくれた。


「アスカさん!」


 マリュウもすぐに手を貸してくれた。

 ああ、もう治癒完了したんだ。良かった……。

 

 やばい、なんかだんだん意識が遠のいて行く感じが……。

 

「アスカ!」

「師匠!」


 ジュリアとピンピンの声が聞こえた。

 2人はヤルタと戦ってるはずだ。

 こっちはいいから、相手に集中するんだ……。


 ふと魔鉱石の指輪を見ると、真っ白に変わり果てていた。

 ああ、使いきっちゃったか……。

 

 途端に体から力が抜けていく。


「ヤルタを……」


 頼むと言おうとした所までは記憶にあるのだが、そこから先は覚えていない。 

読んでいただきどうもありがとうございます。

久々に短いです。

書いてるうちにプロットと全然違う流れになってしまいました。

この後どうするんだろうか?(笑)

引き続き応援よろしくお願いします

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