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男女比が偏っている世界で女性アイドルのマネージャーになる  作者: 普通


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8/10

仮マネージャーとして同行する

今日から仮マネージャーとしての生活が始まる。今日は朝から事務所でスケジュールの確認とマネージャーさんと麻衣さんの現場に同行することになっている。



オレは身支度を整えてから家を出る。





事務所に着くとそこにはマネージャーさんが既にいた。麻衣さんのマネージャーさんは20代前半ぐらい女性だった。


「よろしくお願いします」


「畏まらないでください。今日から吉川さんは仮マネージャーになるんですから、ほとんど対等ですよ」


「いや対等ではないです。オレは仮マネージャーですから…」


今までマネージャーとして彼女たちを支えてきた人と行ってしまえば仕事体験に来たような人間が一緒の立場なわけがない。




そんなオレの対応がマネージャーさんには固く映ったのか、リラックスをするように促された。


「もっと肩の力を抜いていいですよ。これから現場に行くと言っても、私がちゃんとサポートしますから」


「はい」


マネージャーさんとしてはずっとこの仕事をしているだろうから、緊張することもないと思うけど、オレとしては初めてだ。緊張するなと言われてもやっぱりそれは難しい。



彼女はまだ響いていないと思ったのか、言葉を続けた。


「仕事に対して真面目なのは良いところですが、ずっと気を張っていると倒れてしまいますから、適度に抜いて下さい」


「わかりました」




「でも、そこまで真面目に頑張ろうとしてくれているところは彼女たちに携わっている一人の人間として嬉しいです」


その後も少しマネージャーさんと話していると麻衣さんがやってきた。




「あ、ちょっと遅れちゃってすいません」


「全然遅れてないよ。ただ私と吉川さんが早かっただけだから」


それを聞くと麻衣さんは安堵した表情を浮かべた。


「よかったぁ…」



次に俺の目の前まで麻衣さんはきた。


「正行くん、おはよう」


「おはようございます、麻衣さん」


「も~そんな堅苦しい感じじゃなくていいよ。マネージャーとして働くからといって敬語とかもいらないからね」


「一応、マネージャーだから」


「いいんだよ。タレントの私が言っているんだからいいの」


結局、麻衣さんに押し通されてしまった。タレントに対して敬語を使わないマネージャーの方があんまりいないと思うけど、彼女がそれで良いというのならそれに従うべきだろう。










それからオレはマネージャーさんと麻衣さんと一緒に移動した。


今日の麻衣さんはアーティスト写真を取り直すために、スタジオに来ている。もちろん、スタジオとかにも初めて来たので自然と辺りを見渡してしまう。あんまりこういうことをしないのは分かっているつもりなんだが。



オレはアイドルに詳しいだけでアイドルの仕事に詳しいわけではない。だから、こんなにアーティスト写真を撮るものなんだと思った。


麻衣さんは色んな衣装に着替えては写真を撮ったり、ポーズを変えて見たりと何通りも試していた。


そんな中で一番良いと思ったものを一枚を選ぶ必要があるのだ。



「吉川さん」


「あ、はい」


「麻衣ちゃんはどう?」


「とっても似合っていると思いますよ」


「それなら言葉に出して伝えてあげた方がいいかも」


「でも、こういう時に言っていいんですか。僕はファンではなく、仮マネージャーとして来ているわけだし」


「確かにそうだけど、可愛いって思ったらその時に伝えてあげた方がいいよ。伝えないと相手には分からないし、不安に思っちゃうものなの」


「そういうものなんですね」


「うん。だから…」



マネージャーさんは「麻衣さんのところに行って来な」と言いながら、オレの背中を押した。



「麻衣さん」


「…正行くん」


「その衣装、とっても似合っていると思う。可愛いよ」


「そ、そう!?」


「うん。似合っているよ。麻衣さんの可愛さが倍増して見えるよ」


「そっか……じゃあ、この衣装で行こうかな」


さっきまで悩んでいた麻衣さんはどこかに行ってしまったのか、すぐに決まってしまった。



その後の撮影でもマネージャーから「麻衣ちゃんをずっと褒めて」と言われたので、撮影されている時も後ろから大きな声で麻衣さんのことを褒めた。



『今のカット、とても良いよ』


『今日の麻衣さんは可愛いよ』


『麻衣さんの全てが完璧で、世界で一番のアイドルだよ』


などなど、本当に色んなことを言った。






数分しないうちに麻衣さんが納得したポーズでの撮影も終わり、アーティスト写真が決まった。



麻衣さんが決めた、アーティスト写真を見た時に思ったことは一つ。



『天使も凌駕するアイドル』


言葉で言い表すのが難しいぐらいに可愛くて、美しい。どの写真ももちろん、すごくよかったし、どれを選んでも良いように感じたけど、麻衣さんにもこだわりがあり、それを通過したのがこの写真だった。


このアー写を見たら誰もが虜になってしまうんじゃないかと思うほどに素晴らしい写真。





そんなことを考えているところにマネージャーさんが近付いてきた。



「マネージャーの仕事の中にはタレントの相談にのったり、スケジュール管理も含まれているけど、一番大切なのはどんな時でもタレントに寄り添うこと。誰よりもタレントのことを考えて、行動することが大事」


確かにアイドルとマネージャーはお互いに信頼関係がないと上手いことやっていけない。


「だからさ…今回みたいに良いと思ったらちゃんと言葉にして言ってあげることも大事なの。だってそれのお陰でこのアー写の麻衣ちゃんは一番良い笑顔をしているでしょ。キミが麻衣ちゃんの一番輝いている姿を引き出したんだよ」


オレのお陰かは分からないけど、確かにこのアー写の麻衣さんはとても良い笑顔をしていた。



「…わかりました。良いと思ったらちゃんと言葉に出して言うようにします」



そしてオレの初めての仮マネージャーとしての役目は終わった。

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