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帰還した王女

遠く離れた神州大陸とカイロ帝国は、運命の糸でそっと結ばれている。

東方へ修行に旅立った大王女ケリアは、長き旅を終え、ついに故郷の地へ帰ってきた。


勇者の降臨、王宮での冷遇、強さだけを見る偏見……この世界には暗い流れが渦巻いている。

東方の経験を携え帰還した王女の登場は、王宮の閑寂を打ち砕き、土の勇者・佐藤雄一の運命をも静かに変えていく。


広場での偶然の出会いが、新たな物語の幕を開ける。

カイロ帝国の城外、華麗に飾られた王家の馬車が城門の前に整然と停車していた。


門番の騎士は槍を構えて道を塞ぎ、厳しい声で喝した。


「来者は何者だ!」


車窓から白く美しい手が伸び、手の甲には「王女」を示す神聖な文字が浮かんだ。


騎士はそれを見て顔色を変え、慌てて頭を下げ礼を尽くした。


「王女殿下でいらっしゃったか! 神州大陸から遠路お戻り、お疲れ様です!」


畏怖の念を抱き、騎士はすぐに道を開けた。馬車はゆっくりと城内へ進み、車窓から出ていた手も静かに引っ込められた。


車内には、豪華な礼装を身にまとう王女が座していた。



ドレスには無数の宝石がちりばめられ、黒いロングマントを肩にかけ、漆黒の長髪がしなやかに垂れる。


衣の裾には光明神の聖紋が織り込まれている。


金色の瞳に整った顔立ち、細やかな輪郭には清らかで冷めた気品が宿っていた。


傍らの侍女が柔らかく報告する。



「王女殿下、まもなく入城いたします。」


王女は表情を崩さず、淡く返事をした。

「うん。」


その声は冷ややかで、緩やかな口調だ。


彼女は白い両手をそっと頬に添えた。


やがて馬車は王城の敷地内へと入った。



侍女が進み出て、王女を支えながら馬車から降ろした。


王女はこの西洋風の王宮を淡く見渡し、一言も発さない。



大理石の階段を上ると、両側の騎士たちは一斉に片膝をついた。


「王女殿下!」


階段は高く続き、王宮の大広間へと通じている。


大広間では、摂政王は相変わらずだらけた様子で、無頓着に爪を手入れしていた。



傍らの伝令官が高らかに告げる。



「王女殿下、ご到着――」


摂政王はそこでやっと顔を上げ、軽い口調で言った。



「娘よ、神州大陸から帰ってきたのか。

なぜ事前に父に知らせなかった。」


王女はその言葉に応じず、自らの席へ進み腰を下ろすと、口を開いた。



「父上、三人の勇者がこの国に降り立ったと聞きました。

彼らは今どこにいますか?」


摂政王は相変わらず無頓着に答えた。



「ほかの二人は、東側の邸宅に手配した。

があの土の勇者には、住まいなど与えていない。」


王女はわずかに眉をひそめた。


「なぜ土の勇者に住まいを用意しないのです?」


「用意だと?」王は鼻で笑った。



「あいつは弱くて情けなく、防御以外何の取り柄もない。

役に立つはずもない。

追い出さなかっただけでも、十分な慈悲だ。」


「そうだとしても、勇者をこれほど粗末に扱うべきではありません。」


王女は穏やかに言うと、「父上、これにて失礼いたします。」


軽く会釈すると、王女は王宮を後にした。


王宮の外には中央広場が広がり、真ん中には光明神の大理石像が立ち、周囲には歴代の光明導師の石像が並んでいる。



多くの民がここで祈りを捧げ、子供たちは広場を走り回って遊んでいた。


王女の後ろには三人の騎士と一人の侍女が従う。



民衆はその高貴な雰囲気と厳重な護衛を見て、近づくことを憚り、遠くから眺めるばかりだった。


一方――

佐藤雄一は身だしなみを整え、土の勇者専用の制服に着替えていた。


ケイアナは彼を見て目を輝かせ、絶賛した。


「とても似合ってる! すごくかっこいいわ、あなたの体型にぴったりなの!」


佐藤雄一は照れくさそうに頭を掻いた。



「あ、ありがとうございます、二王女殿下。その……何か任務はありますか?」


「今のところ任務はないわ。まずは街の雰囲気に慣れてね。」



ケイアナは笑顔で言った。



「そうだ、広場へ連れて行ってあげる。

あそこの光明神様の像は願い事が叶うと評判なのよ。」


彼女は佐藤雄一を連れ、広場へと向かった。



広場に入った途端、ケイアナは遠くに佇む王女を見つけた。


「お姉ちゃん! いつ戻ってきたの!」


嬉しそうに駆け寄る。


王女は淡く答えた。

「たった今、戻ったところだ。」


「今なの? どうして教えてくれなかったの、すごく会いたかったのに!」



ケイアナは姉の手を取り、振り返って佐藤雄一を指し示した。



「こちらは私の姉、ケリア。神州大陸から帰還したばかりなの。」


ケリアの視線が佐藤雄一に注がれ、冷ややかな声が響いた。



「お前が土の勇者か。

名は何という。」


「佐藤雄一と申します。

王女殿下、ご挨拶を申し上げます。」



彼は深く頭を下げ礼をした。


「住まいは手配されていないのか。

もし必要なら、私が用意しても構わない。」


「お気遣いありがとうございます。

二王女殿下が既に部屋を用意してくださいました。」


「そうか。」ケリアは静かに頷いた。


ケイアナは興味深く姉の腕を揺らした。



「お姉ちゃん、神州大陸でどんな人と出会ったの?」


ケリアは遠方を眺め、穏やかに語った。



「東方の地で、李淑婉という人物と知り合った。それ以外のことは、あまり問うな。」

(2)

神州より帰還した王女の登場で、王宮の情勢は静かに変わり始める。

土の勇者との邂逅をきっかけに、少年の運命も未知なる道へと歩み出す。

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