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土元素の勇者

平凡な日常は、誰もが当たり前のように過ごしている。

退屈で変わり映えのしない日々も、何気ない一瞬がきっかけで、すべてが一変することもある。

予期せぬ光、見知らぬ世界、そして勇者としての運命が、一人の少年を待ち受けていた。

校舎の最上階、屋上。


佐藤雄一は冷たい手すりに両手を置き、遠くゆっくりと沈む夕陽を眺め、心の中でつぶやいた。


「いつになったら、こんなつまらない日々が終わるんだ……」


毎日機械のような生活が繰り返される。


起きて、登校し、授業を受け、下校する。


すべてが退屈で息が詰まりそうだ。


彼がそっとため息をついた時、背後から足音が響いた。


ほかの生徒も屋上で息抜きをしに来たようだ。


佐藤雄一は人と関わりたくなく、黙って振り返り階段を下り、自分のクラスである二年二組へと戻った。


静かに自席に着くと、間もなく耳障りなチャイムが鳴り響いた。


「チリリリリーー」


生徒たちは授業に関係のない物を片付け、国語の教科書を取り出した。


着物を着た中年の女教師が教材を抱えて教壇に上がると、委員長がすぐ「起立」と声を上げ、クラス全員が一斉に挨拶した。


「先生、こんにちは!」


先生は軽くうなずき、淡い口調で語り出す。



「座りなさい。この授業は……」


平穏な五十分はあっという間に過ぎ、下校のチャイムが再び鳴った。


国語の教師は本を抱えて教室を離れ、宿題を残していった。


教室は一瞬にしてにぎやかになり、生徒たちは三五人集まって談笑し合っている。


佐藤雄一はカバンから一冊の本を取り出した。


数日前に図書館で借りた本で、ずっと読む暇がなかった。


ふとした気まぐれで、何気なく最初のページを開いた。


次の瞬間、抗うことのできない見えない力が彼を捉え、そのまま本の紙面の中へ引きずり込まれた。


目を覚ました時、周囲は見慣れた教室ではなかった。


奇妙な異国の建物が目に入り、広く華やかな大広間には多くの人が立っていた。



高壇の上には摂政王が座り、ナマケモノのようにだらけた姿勢で、顔を上げようともしない。


傍らに立つ体格の立派な大魔導師が荘厳な声で宣言した。


「汝は三人目の勇者――土の勇者、防御系である。」


声が響くや否や、傍らに立つもう二人の勇者がすぐに大声で笑い出した。


「おやおや~土の勇者か。」


「弱すぎるだろ、防御しかできず、まともな攻撃もできないくせに。」


「魔物に遭ったらただ逃げるしかない。二匹も来たらお前、死ぬだけだな、ははは!」


夜の気配が迫る中、王は無表情のまま、心の中で冷ややかに笑った。


【全く役に立たぬゴミめ。】


ついに彼はゆっくりと顔を上げ、佐藤雄一を見て、無造作に手を振った。


「よし、勇者の召喚は全員終了。儀式はここまでとする。」


傍らの大魔導師がすぐに応える。

「はっ!」


彼は手を挙げて光の陣を収め、光の神からの力が次第に消え、召喚陣の光も完全に失われた。


その後、侍従たちが進み出て、勇者たちの宿舎を手配しようとした。


態度の横暴な二人の勇者はまっすぐ佐藤雄一の前に出て、軽蔑に満ちた表情を浮かべた。


「おい、そこの小僧。」


赤髪の少年は腕を組み、勢いを誇って自己紹介した。



「俺は火の勇者、天を焼き地を食らう強者、山崎鶴人だ。」


彼の隣のもう一人の少年は鼻で笑い、ゴミでも見るような目で雄一を見つめる。


「おい、ゴミめ。俺は竜の勇者、本上静樹だ。今後は利口に振る舞い、俺たちを見たら頭を下げて大人しくしろ。」


言い捨てると、二人は高慢な様子で侍従に従い、宿舎の方へ向かった。


佐藤雄一は頭を垂れ、心の中は暗く沈んでいた。


「異世界に来たのに……やっぱり俺はこんなに弱く、役立たずのゴミなのか……」


侍従は誰も彼を迎えに来ず、まるで存在しないかのように扱われていた。


その時、大広間の反対側から一人の少女が歩いてきた。


カイロ王国の第二王女――ケイアナ。


彼女はひとりうつむいて立つ佐藤雄一にすぐ目を留め、興味深げに近づいて問いかけた。


「あなたが最後の勇者なの? どうして落ち込んだ顔をしているの?」


佐藤雄一は胸が緊張し、きっと嘲笑われると覚悟した。


頭を垂れ、しわがれた声で話し出す。

「俺は土の勇者……一番役に立たないゴミです。」


思いがけず、ケイアナは彼を笑うどころか、理解に苦しむ表情を浮かべた。


「あなたも立派な勇者なのに、どうして自分をそんなふうに言うの?」


佐藤雄一は勢いよく顔を上げ、戸惑いに満ちた瞳で見つめる。


「なぜ……笑わないんですか?」


ケイアナは優しく微笑み、真剣で柔らかい口調で語った。


「笑う理由なんてないわ。

私は王国の王女、そしてあなたたちは私たちカイロ王国を救うために召喚された恩人なの。

この国は日々魔物の侵襲に苦しみ、国境は魔王の勢力に侵され続け、ずっと苦難の中に生きているの。」


彼女は一瞬言葉を切り、ふと思い出したように続けた。


「そうだ、あなたの宿舎はどこなの?」


佐藤雄一は茫然と首を振った。


「……陛下からは何も聞いていません。」


ケイアナはすぐに事情を悟った。


父である王は、この目立たない土の勇者に宿舎を用意する気などさらさらなかったのだ。


彼女はそっとため息をつき、雄一に言った。


「なら、私が連れて行ってあげる場所があるわ。」


二人は宮殿を出て、南東の方角へ歩いていった。



しばらくすると、瀟洒で立派な洋館が姿を現した。


ケイアナは振り返り、彼に穏やかに微笑む。


「ここが、これからあなたの住まいよ。安心して住んで。」


佐藤雄一は慌てて手を振る。


「王女殿下、いけません! 俺なんて目立たない勇者に、こんな豪華な場所は勿体ないです……」


ケイアナは静かに首を振り、拒むことのできない強い口調で言う。


「これは私が贈るものよ。

素直に受け取ればいいの。

王女の命令に、逆らうわけにはいかないでしょ?」


佐藤雄一は言葉を失い、ただ黙って頭を垂れるしかなかった。


「そういえば、あなたの名前をまだ知らないわ。」


ケイアナはそっと手を上げ、美しいピンクの長い髪を整えた。


佐藤雄一は彼女の横顔を見て心がほんのり動き、恭しく頭を下げる。


「お、お答えします……佐藤雄一です。」


ケイアナは軽くうなずき、柔らかい笑みを浮かべた。


「わかったわ。」

(1)

今話では、平凡な高校生・佐藤雄一が突然異世界へ転移し、土の勇者として召喚された物語を描きました。

他の勇者から軽んじられ、王からも冷めた目で見られた彼が、唯一優しく接してくれた二王女ケイアナに救われ、新たな住まいを得ることになります。


弱いと蔑まれる土の勇者の道は、これから厳しく困難な連続となるでしょう。

これから彼が自身の隠された力に目覚め、周囲の見方を変えていく姿を、次話もお楽しみに。

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