寝坊
ねぇ、正人。
私の夢はあなたの夢が叶うこと。
なんて言ったら笑う?
私は珍しく寝坊した。
あの、毎日聞こえている電車はもうとっくに行ってしまってて。
私は、彼の細い腕が愛おしそうに私のうなじや頬を触る感触で目が覚めた。
寝坊だって分かったら、起こしてくれても良かったのに。
なんて思ったけど。
さっきの幸せな気持ちを塗り替えたくなんかなかったから。
それに、今日はもう休もうかなって頭の隅で少し考えてる。
年休は減ってしまうけれど。
どうでもいいや、そんなこと。
なんて思ってしまって。
「正人、今日は会社休むね」
彼が私のそばにいて。
その腕に私は守られるようにして抱かれてて。
それを痛いくらいに感じて。
私はそうぼそっと呟く。
ベッドがきしっと鳴って、彼が私との隙間を1ミリだってなくそうってくらいに抱きしめる。
それだけなのに、私はまた胸の奥を掴まれたみたいに、キュッと甘い疼きが小さな電気のように私の体を優しく巡る。
この瞬間で、もう現実のことなんて忘れられるから。
どうか、醒めないで。
ずっとずっと。
このままでいたい。
「夏奈、キスしていい?」
彼がそういうことをする時に、夏奈と呼ぶいつもの癖。
その時の彼の顔はいつものように切羽詰まってて。
こんなにもひしひしと誰かに求められるって、なんて素敵だろう。
なんて嬉しいことだろう。
毎回そう思いながら、私は彼の首に腕を回す。
彼の唇が私にかぶさって。
彼の身体が私を覆う。
彼の唇が徐々に首筋へと移っていって。
一方の手で、彼は彼自身の体重を支えて。
もう一方の手で器用に、私の服を取り去ってしまう。
そして、私達はまた夢の世界へと落ちていく。
私は彼を肌で感じながら、またいつものように小さく甘い声を出すんだ。




