早川久美子 9
写真の切れ端のようだが、何の意味があるのか、見当がつかなかった。私の疑問を感じ取ったように明日香は、「私にも何だか全然わからない」と言った。
こんな謎解き、私には絶対無理。
「どうして私に」
写真と明日香を交互に見比べながら私は聞いた。どう考えても相談する相手を間違えている。
「ママは、信頼できる人に見せて、と言ったの」
明日香が私の目を見ていた。
「だから久美子に相談したの。まだ誰にも話していない」
心の奥で、青白い炎が小さく音を立てて燃え上がった。なんとかしないと、と思った。しかし私の知識ではどうにもならない。高校一年生も半分を過ぎたがそれほど人脈があるわけでもない。こういうことを相談できそうな顔が一つ、真っ先に思い浮かんで頬が熱くなったが、それを横に置いて野球部の部員や先輩のマネージャー、父や、その会社の社員の方々を思い浮かべた。
「誰に相談するか、私が決めていいの?」
結局、心から信頼できるか、という点では今のところ候補者は一人だった。
明日香は、頷いて「久美子を信頼している」と言った。
放課後、私は明日香の手を引いて「相談相手」に向かった。私の視線の先には、自分の机に浅く腰をかけている豪毅の姿があった。豪毅は、その隣の席に座っている柳沢邦雄君と話をしていた。この二人はいつも一緒にいる。
柳沢君のことはよく知らないが、すごい切れ者だろうと思う。文化祭の出し物を、ただの喫茶店から男女混合メイドカフェにして、男女を入れ替えるアイデアを出したのは柳沢君だった。
おかげで男女共に幅広く仕事が分担されたし、まさかあれほどみんなが乗り気になるとは想像以上だった。人気投票でも上級生の中に食い込んで全校三位になって、文化祭実行委員が泣いて喜んでいた。今は、豪毅と一緒にクイズ研究会の再興を目指しているということだった。
中学校の時は陸上部に所属していた豪毅が文科系に興味があったのは意外だったし、お世辞にもスポーツマンには見えない柳沢君といつも一緒にいるのも意外だ。
柳沢君は、性格も見た目も、何から何まで豪毅と違う。いつも冷静で、分析するとか値踏みするとか、そんな目で人を見る。豪毅と違って大柄で横幅が広い。豪毅と同じなのは、色が白いところくらいだが、運動をしていないから、という理由が豪毅と違っていた。
今も、私と明日香が近づくと豪毅よりも先に気がついて口を閉じ、じっとこちらを見ている。「信頼できるのか」と問われたら、あまり自信がない。 豪毅が遅れて私たちに気がつき、少し意外そうに「よ」と声をかけてきた。
私は、柳沢君の視線に落ち着かないものを感じながら、「あの、少しいいかな」と豪毅に声をかけた。
「俺に?それとも邦雄と俺の二人に?」




